研究課題/領域番号 |
22K07964
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
青木 敬則 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (40749496)
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研究分担者 |
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
山本 英一郎 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60567915)
新沼 猛 札幌医科大学, 医学部, 講師 (60708113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 早期大腸がん / SAA1 / 腫瘍微小環境 / マクロファージ / 腫瘍関連好中球 / 大腸がん / 微小環境 / 浸潤 |
研究開始時の研究の概要 |
早期大腸がんにおける低分化成分の存在は、リンパ節転移と密接に関連することが知られているが、分化度を規定する分子機構は明らかではない。応募者は、早期低分化腺がん症例のトランスクリプトーム解析を行い、SAA1 (serum amyloid A1)の高発現を同定した。本研究では、大腸がんにおけるSAA1の分子機能を解明し、新規診断・治療法の開発につなげることを目指す。そのために、①大腸がん細胞におけるSAA1の機能、相互作用分子、下流シグナルを明らかにする。②SAA1シグナルの臨床病理学的な重要性を検証し、バイオマーカーや治療標的としての有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
早期大腸がん臨床例を対象にSAA1発現パターンを免疫組織染色で解析した。その結果、SAA1は低分化成分を含む浸潤先進部において有意に高発現していた。またSAA1発現陽性の浸潤先進部では、マクロファージマーカーであるCD80陽性細胞およびCD163陽性細胞の集積が認められた。さらに、SAA1陽性の浸潤先進部ではMMP9陽性細胞の集積や、好中球の集積も認められた。 大腸がんにおけるSAA1の機能を解析するため、大腸がん細胞株を用いてSAA1のノックダウン実験を行った。SAA1ノックダウンは大腸がん細胞の増殖に影響を与えなかったが、大腸がん細胞の遊走能および浸潤能を低下させた。逆にSAA1の過剰発現は大腸がん細胞の遊走能・浸潤能を促進することが、Boydenチャンバーアッセイおよびコラーゲンゲル浸潤アッセイから確認された。 大腸がんとマクロファージの共培養系による解析を行った。急性単球性白血病細胞株であるTHP-1を分化誘導することでマクロファージ様細胞を得た。これを各種の大腸がん細胞株と間接共培養した結果、マクロファージのIL1B発現が誘導されるとともに、大腸がん細胞のSAA1発現が誘導された。大腸がん細胞のSAA1発現誘導は、抗IL-1β抗体により阻害されたことから、マクロファージ由来のIL-1βが大腸がん細胞のSAA1発現を誘導することが示された。 次に大腸がんと好中球の共培養系による解析を行った。前骨髄性白血病細胞株HL-60を分化誘導することで好中球様細胞を得た。大腸がん細胞株との間接共培養実験から好中球が大腸がん細胞の遊走・浸潤を促進することが明らかとなった。さらに大腸がん細胞、好中球、マクロファージの共培養実験から、マクロファージ由来のIL-1βががん細胞のSAA1発現を誘導し、SAA1が好中球浸潤およびMMP9発現を誘導することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体におけるSAA1の発現解析を行い、SAA1が早期大腸がんの浸潤先進部において、低分化成分、マクロファージ集簇、好中球集簇、MMP9発現と相関することを明らかにすることができた。大腸がん細胞におけるSAA1の機能解析を行い、SAA1が遊走・浸潤を促進することを明らかにした。マクロファージと大腸がん細胞の相互作用がSAA1発現を誘導し、大腸がん浸潤を促進することを示す結果を得ることができた。さらに大腸がん細胞由来のSAA1が腫瘍関連好中球の集簇を促進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
大腸がん細胞・マクロファージ・好中球の共培養実験系を用いて、マクロファージがSAA1発現を誘導するメカニズムや、SAA1が好中球浸潤を促進するメカニズムをさらに明らかにする。またマイクロアレイデータから、大腸がん細胞におけるSAA1の分子機能をさらに明らかにする。また、臨床検体の収集・解析を継続し、浸潤先進部におけるSAA1および関連遺伝子発現を詳細に検討する。
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