研究課題/領域番号 |
22K07976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤井 裕美子 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30722334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肝内胆管がん / 脂質ホスファターゼ |
研究開始時の研究の概要 |
肝内胆管がんは発症率が世界的に増加傾向にあるが、未だ有効な化学療法が少なく予後不良のがんである。研究代表者はこれまでに、肝内胆管がん組織において脂質ホスファターゼSHIP2が多くの細胞の核に局在していることを見出した。SHIP2は細胞質や細胞膜での機能が知られるが、核内における機能については不明である。本研究では、肝内胆管上皮細胞におけるSHIP2の核内機能とその発がんとの関わりを明らかにすることを目指し、肝内胆管がんに対する新たな薬剤治療法の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
これまでに、不死化した非腫瘍性のヒト肝内胆管細胞株においてSHIP2を欠損すると、DNA障害マーカーであるリン酸化ヒストンH2AX陽性細胞が増加することを示していた。そこで、SHIP2欠損細胞にDNA二本鎖切断を誘導するエトポシドを一時的に処理して細胞にDNA障害を人為的に蓄積し、その状態からDNAが修復される過程をリン酸化ヒストンH2AX陽性細胞数の観察およびDNAコメットアッセイにより経時的に評価した。その結果、SHIP2の欠損によりDNA障害からの回復が有意に遅延することが明らかになった。DNA障害修復に関わる代表的なシグナル経路であるATM/ATR経路とSHIP2の関与を検討したところ、SHIP2がエトポシドおよびDNA複製阻害を誘導するハイドロキシウレアの処理依存的にATM/ATRによりセリンリン酸化を受けることが示唆された。そこで、ATM/ATRのリン酸化標的となり得る複数のセリンをそれぞれアラニンに置換した各種のSHIP2リン酸化耐性型変異体の発現コンストラクトを作製し、DNA障害依存的なSHIP2タンパク質内のリン酸化標的部位の特定を試みたところ、エトポシド処理依存的にリン酸化を受けるSHIP2中のセリンの同定に成功した。今後、このリン酸化が担う病態生理学的な役割を中心に肝内胆管細胞内におけるSHIP2のDNA修復機構への関与を明らかにすることで、この経路を利用した薬剤治療法の開発につながる可能性が考えられ、近年罹患率が増加傾向にある予後不良のがんの一つである肝内胆管がんに対する新規治療法の確立が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、細胞の核内におけるSHIP2の働きを明らかにすることを目的に検討を重ねた結果、SHIP2がDNA修復機構に関わる重要な機能を持つ可能性を新たに見出すことができ、その成果を2件の学会で発表した。一方、これまでに、研究計画段階では予想していなかったSHIP2自身のリン酸化を介したDNA修復調節機構の存在が示唆された。そこで、当初の計画から研究推進方策を変更し、このリン酸化が持つ病態生理学的意義に着目して研究を進めることで、本研究の最終的な目標である肝内胆管がんの新規治療法開発につながる分子機構の解明を目指すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定したSHIP2内のDNA障害依存的なリン酸化部位が、複数のタンパク質との結合に重要なドメイン近傍に存在していたため、このリン酸化の有無による結合標的タンパク質との結合能変化を、野生型SHIP2およびリン酸化耐性型SHIP2変異体を用いた共免疫沈降産物の比較により明らかにすることを目指す。比較に際しては質量分析法を用いて候補分子を特定した後、特異的抗体を用いて実際の結合能の変化を検討する。結合能変化が確認された場合には、その分子のDNA修復機構への関与を、過剰発現・ノックアウト実験などにより確認し、SHIP2を介した調節機構の解明を目指す。
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