研究課題/領域番号 |
22K07985
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西川 潤 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00379950)
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研究分担者 |
末廣 寛 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40290978)
小林 由紀 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80759457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 大腸癌 / 歯周病菌 / 遠紫外線 / 殺菌 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸癌の予防を目的として、F. nucleatumに対する有効な治療法を検討する。遠紫外線照射装置を用い、F. nucleatumの殺菌効果を定性的、定量的に検討する。F. nucleatumは歯周ポケットにバイオフィルムを形成して感染しており、抗生物質による治療に抵抗性である。バイオフィルム形成後の菌に遠紫外線を照射し、バイオフィルムの破壊や内部のF. nucleatumの殺菌効果を検討する。殺菌機序の解明をするため、細菌や培養細胞に遠紫外線を照射し、形態や遺伝子発現の変化を検討する。大腸癌予防につながる治療器の開発を念頭にF. nucleatumを効率に殺菌する方法を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
ウシオ電機が開発したピーク波長が222nmの遠紫外線照射装置はエキシマランプと特殊なフィルターの組み合わせによりできている。人体に有害な240nm以上の紫外線はカットされているため、DNA傷害を起こさず安全性が高い。この遠深紫外線が歯周病菌を殺菌するだけでなく、歯周病菌と菌体外物質の複合体からなるバイオフィルムを破壊することを明らかにした。歯周病菌のFusobacterium nucleatumとPorphyromonas gingivalisを液体培地で培養することによって、バイオフィルムを形成させた。その上で遠紫外線を照射することによって、通常の紫外線では認めない、バイオフィルムの破壊が確認された。バイオフォルムの量はクリスタルバイオレット染色で評価可能であり、著明に減少した。このバイオフィルムの減少は共焦点レーザー顕微鏡による3次元画像でバイオフィルムの厚さの減少によって、確認された。また、走査型電子顕微鏡においても遠紫外線照射後の細菌は細胞表面に変化が生じていることが明らかになった。殺菌機序としては、DNA傷害の指標である、ピリミジン2量体の形成が少ないことが明らかとなり、通常の紫外線が誘導するDNA傷害とはことなった機序が考えられる。Syto9/PI染色でも、通常の紫外線を照射した菌ではPIの取り込みは認めないのに対して、遠紫外線を照射した菌については明らかなPIの取り込みが認められた。PIは細胞膜非透過性のDNA結合色素であるため、遠紫外線照射によって、細胞膜に影響を与えた可能性が高い。歯周病菌の殺菌とバイオフィルムの破壊を同時に行いうる遠紫外線を応用した歯周病治療器の開発を目指し、検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠紫外線照射によるF. nucleatumの殺菌効果を定性的、定量的に検討し明らかにした。バイオフィルムの破壊効果はクリスタルバイオレット染色で定量的に確認できた。バイオフィルム内の生菌を定量には、NADHの酵素活性により発色するMTSアッセイで証明できた。生菌に取り込まれる蛍光色素 (Syto9) や死菌に取り込まれる、Propidium iodide (PI) を併用して、遠紫外線照射後のバイオフィルム内のF. nucleatumの生死を蛍光顕微鏡でも観察した。さらに形態的にも共焦点レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡による観察でバイオフィルムの厚みの減少や、菌体表面の構造の変化をとらえることに成功した。殺菌機序についても検討を開始できており、紫外線でよく認められるDNA傷害は比較的少ないとの結果が得られた。 以上より、3年間の計画良く速いペースで検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
歯周病菌のうち、重症の歯周病で多く検出されたり、病因として重要とされているPorphyromonas gingivalisについても検討を加える予定である。同様にバイオフィルムを形成する偏性嫌気性菌であるため、F. nucleatumと同様の手法で遠紫外線のバイオフィルムに与える影響を評価できると考えている。 in vitroの検討が順調であるので、動物モデルを作成し、歯周病モデルに対して遠紫外線が効果を発揮するか、検討を行いたいと考えている。また、動物実験を行う上で光源が大きいことが問題となるので小型の光源の開発を企業と連携して行いたい。これらの検討を行うための別の研究費への応募も視野に入れている。
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