研究課題/領域番号 |
22K07987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
国府島 庸之 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00650748)
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研究分担者 |
合谷 孟 九州大学, 大学病院, 助教 (30884754)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | NASH / hCLS / 線維化 / 非実質細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
NASHの確定診断は肝生検による組織診断によってなされるが、組織学的にはhCLSと呼ばれる特徴的な構造が観察され、これらの構造は肝線維化の起点となることが知られている。NASHにおける肝細胞周囲肝線維化は肝細胞の脂肪沈着やhCLSが生じる領域とは空間的な差異が存在し、その進展のメカニズムについては不明な点が多い。本研究ではNASH肝組織に存在する非実質細胞を分離し1細胞遺伝子発現解析を行うことにより、NASH病態進展に関わる非実質細胞種の同定と細胞内環境の変化に加え細胞間相互作用解析による活性化機構について明らかにすることで、NASHに特徴的なhCLSや線維化の形成機構を解明する。
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研究実績の概要 |
NASH症例の肝生検検体よりmRNAを抽出して、糖・脂質代謝関連遺伝子、線維化関連遺伝子、酸化ストレスや小胞体ストレス関連遺伝子、サイトカイン/ケモカインなどの免疫関連遺伝子、線維化関連遺伝子などの発現解析を行なったところ、脂質代謝関連遺伝子、β酸化関連、酸化ストレス関連遺伝子の発現が著明に亢進していることが確認された。次に肝生検組織の病理学的特徴と各種遺伝子発現変化との関連について検討を行なったところ、Fibrosisにおいて、CXCL8、CXCL10等のケモカインの遺伝子発現が優位に増加することが確認された。hCLSの程度と組織のSteatosisおよびInflammationは有意な相関を認めるとともに、トランスアミナーゼと線維化マーカーであるP-Ⅲ-Pが有意に相関していた。hCLSの程度は一部のサイトカイン/ケモカインとともにCol1A1などの細胞外基質の遺伝子発現とも有意な相関を認めており、hCLSがNASH病態進展における炎症、線維化の起点となっている可能性が示唆された。 MC4R-KOマウスに高脂肪・高コレステロール飼料を負荷したNASHマウスを作成し、組織学的に確認されたhCLSより非実質細胞を採取する手技の確立を行なった。hCLSの位置情報を残した状態で採取するために、NASHマウスに蛍光標識したF4/80抗体を経静脈投与後にサンプリングし、その未固定肝組織をビブラトームで薄切標本とし、hCLSが視認できることを確認した。hCLSの抽出方法については、バキューム方式のマイクロダイセクションであるUnipicKを用いることで、hCLSを回収することに成功した。分散条件、吸引条件などの検討を重ね、生存率を確保した状態でhCLSを構成する非実質細胞を回収する実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、NASHに特徴的な病理学的構造の形成や線維化進展に伴って変化する遺伝子を明らかにした。マウスモデルにおいては、空間情報を残した状態でhCLSを抽出する手法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度で確立したhCLSの抽出方法を用いて、NASHマウスよりNASHに特徴的なhCLSの抽出を行う。抽出したサンプルを用いて、一細胞遺伝子発現解析を行い、抽出された細胞集団と他部位の肝非実質細胞を比較することにより、hCLSを構成する細胞集団における各細胞腫の存在比率、活性化状態、遺伝子発現を検討し、パスウェイ解析やリガンド・受容体解析を行うことで、炎症細胞を含めた非実質細胞との相互作用による新しい情報伝達構造を探索する。強く関与が考えられる細胞集団に関しては、FACSでの細胞分取もしくは同細胞株を用いて、qPCR解析や免疫組織学的解析などを行うことにより、この細胞集団の遺伝子発現パターンを確認する。研究代表者はNASHマウスの肝非実質細胞を用いた先行的な一細胞遺伝子発現解析の結果から、NASHマウス肝組織において、SPP1 (Osteopontin)陽性マクロファージが増加することを見出しており、本研究ではSPP1陽性マクロファージとhCLSの関係についても明らかにしていく。以上より、hCLSや類洞・肝細胞周囲の線維化形成に関与すると考えられている細胞集団を同定し、その活性化と情報伝達メカニズムを明らかにすることで、NASH病態進展機構の解析を目指す。 また、令和4年度において収集したNASH生検組織検体を用いて、qPCR解析あるいは免疫組織学的染色を行い、マウスモデルを用いた基礎研究の臨床的妥当性をヒト検体を用いて検証する。
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