研究課題/領域番号 |
22K08005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 美奈 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 准教授 (30401342)
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研究分担者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肝線維化 / 慢性肝疾患 / TNFα / ケモカイン / 肝星細胞 / iPS細胞 / 肝硬変 |
研究開始時の研究の概要 |
代表者らが独自に構築した2000例以上からなる慢性肝疾患患者の前向きコホートデータベースと研究分担者らが確立してきた研究基盤に基づき、臨床的に有意な肝疾患予後の背景因子とバイオマーカーの探索を継続する。同時に、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を肝細胞特異的、及び間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを用いて、肝線維化における機能的意義について解明することで、肝線維化において重要な機能を呈する分子標的を新たに抽出し、今後の抗線維化治療の創薬基盤とすること、さらに自己由来ヒトiPS由来細胞を用いた肝星細胞を利用したpersonalized medicineの基盤技術となることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究計画では(1) 独自の慢性肝疾患患者の前向きコホートデータベースから臨床的に有意な背景因子とバイオマーカーを探索し、(2) TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を肝細胞特異的、及び間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを用いて、肝線維化におけるその機能的意義を解析するとともに、肝線維化の過程で当該分子により調節される分子機構を明らかにする。さらに(3)標的分子をゲノム編集したヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈することを検証することを目的に下記の研究を行い、今年度の成果として下記を得た。 独自の慢性肝疾患患者の前向きコホートデータベースから臨床的に有意な背景因子とバイオマーカーを探索し、これまで我々が得た知見および関連する最新知見をまとめて、日本消化器病学会機関紙に報告した(J Gastroenterol. 58(4):299-310, 2023)。 さらに抗線維化療法の新規標的分子の探索と開発の解析をさらに進めるために、すでに終了した過去の研究課題で2次利用の同意が得られた保存血清・DNAを用いて解析ができるように倫理審査を進め、承認を得たため、2010年6月以降の保存血清およびDNAが本研究で使用可能となった。今後、さらに解析を進めて新規の知見を得る予定にしている。 TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子の作用に関しては、間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを解析すると、肝障害を与えない状態でも各種のケモカイン産生が亢進しており、肝線維化が形成されることを見出した(第36回肝類洞壁細胞研究会で発表)。今後は、そのメカニズムについてさらに詳細な検討を進め、肝疾患患者由来検体により検証解析を行う予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では抗線維化療法の新規標的分子の探索と開発へ貢献すること目的に、基礎および臨床研究の両面から取り組んでいるが、臨床情報データベースを用いた解析、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を星細胞特異的に欠損させたマウスの解析について、いずれも今年度以降の研究基盤の確立、研究の進捗は良好で、2022年度に予定していた研究計画は概ね完了した。 C型肝炎SVR後の肝発癌および生命予後に関与する因子として一般的な血清マーカーであるγGTPが有意因子として抽出され、SVR後のγGTP高値は、糖尿病や飲酒、肥満、肝硬変/肝線維化とは独立した肝発がん/全死亡リスクであり、過去の文献的にも、γGTP高値の背景にはHCV慢性感染により惹起された酸化ストレスや不可逆な代謝異常、multi-organ tumorigenesisなどがあると考えられた。実際、SVR後の肝発癌は、ウイルス非感染者であるNASH肝癌などより発癌リスクが高く、γGTPはグルタチオンの産生と再利用、炎症と一酸化窒素のシグナル伝達、酸化ストレスの改善などの恒常性維持に重要な役割を担っていることから、酸化ストレスマーカー等とγGTPの相関を確認する方向で研究をすすめている。 さらに、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子の作用に関しては、間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを解析すると、肝障害を与えない状態でも各種のケモカイン産生が亢進しており、肝線維化が形成されることを初めて見出した。その分子機構に関しても、現在詳細な解析を進めており、有望な標的分子の同定へと研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス制御による肝を含めた全身の炎症、線維化の改善は肝関連疾患だけでなく、非肝関連疾患である肝外病変に対してもよい影響を与えることが報告されているが、肝関連疾患に関しては、治療時期によってSVR後の病態改善が異なることがわかっている。肝病態に不可逆的ポイントがあるように、おそらく肝外病変にも不可逆ポイントがあることは想像される。HCV感染による肝病変と肝外病変の病態進展が相関するかも含めて、未だ十分明らかになっていないことは多いが、本研究により線維化不可逆的ポイントに関係する標的分子を同定したいと考えている。 抗線維化療法の新規標的分子の探索と開発をさらに進めるために、すでに終了した過去の研究課題で2次利用の同意が得られた保存血清・DNAを用いて解析ができるように計画書を作成し、倫理審査で承認を得たことで、2010年6月以降の保存血清およびDNAが本研究で使用可能となり、多数の慢性肝疾患症例が蓄積されていることから、基礎的検討で得た知見を検証解析してゆく予定である。 基礎的検討においては、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子が肝星細胞における機能を明らかにするとともに、RNAシークエンスなどの網羅的な発現解析により、その標的分子の同定を進め、標的分子の機能解析へと進捗させる予定である。同時に、標的分子を欠損および過剰発現するヒトiPS細胞由来星細胞を用いた検証解析、前記データベースを用いた慢性肝疾患臨床検体における検証解析へと進めてゆく予定である。
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