研究課題/領域番号 |
22K08010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大野 栄三郎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00447822)
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研究分担者 |
石川 卓哉 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (00792649)
加藤 あす香 藤田医科大学, 医学部, 客員助教 (00801333)
川嶋 啓揮 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20378045)
西田 一貴 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (30877072)
飯田 忠 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (30878319)
水谷 泰之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50831393)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 膵管内乳頭粘液性腫瘍 / IPMN併存膵癌 / 膵癌 / 遺伝子変異プロファイル / 膵嚢胞サーベイランス / 膵上皮内腫瘍性病変 / EUS |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌早期診断は喫緊の課題であるが、未だに高リスク群の絞り込みは不十分である。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は自身の悪性化に加え、通常型膵癌が高頻度に発生すると報告されている。本研究では、サーベイランス中の膵嚢胞症例中、手術例(膵癌または悪性IPMN疑い)における、切除病変の遺伝子変異プロファイルと周囲正常膵実質内の膵管上皮内腫瘍性病変(PanIN)の発症頻度および背景膵実質内膵管上皮における遺伝子変異プロファイルを同時に解析し、IPMN症例における膵管癌発生の超高リスク群の特徴を解明する。更にその結果を蓄積された臨床情報、画像情報、血液検体と対比し、膵発癌予測の新規バイオマーカーを探索する。
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研究実績の概要 |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は粘液産生を特徴とする膵上皮性腫瘍で緩徐に進行するものと報告されているが、同時に浸潤性膵管癌発症の危険因子ともされている。近年IPMN症例にIPMNとは別病変として浸潤性膵管癌が発症(IPMN併存膵癌と呼称)することも知られており、特に既存のIPMNの近傍より発症した浸潤癌はIPMN由来浸潤癌であるのかIPMN近傍より発症した浸潤性膵管癌であるのかの鑑別は難しい。我々はIPMN症例の中に、背景膵において膵発癌(併存膵癌)のハイリスクとなる前がん病変および遺伝子バリアントを発症する群が存在するとの仮説をもとに、IPMNに併存する浸潤性膵管癌(IPMN併存膵癌)にて切除を実施した症例(A群)、IPMN由来癌にて切除した症例(B群)、浸潤性膵管癌にて切除を行い、その背景膵にIPMNを認めない症例(C群)の各症例における、臨床的背景、術前画像所見、特に超音波内視鏡による背景膵所見、病理学的な背景膵における異型膵管上皮の分布、膵がんの主病巣部および十分に主病変部から離れた膵断端部位の背景膵における遺伝子プロファイルの特徴の対比を目的に研究をすすめている。 本年度はA群、B群、C群の症例の抽出(各20症例)を選別し、それらの臨床病理学的な背景因子の抽出、術前画像所見(特に造影CTとEUSによる主病変部の特徴と断端部における画像所見)、切除病理標本における切除断端部における病理所見の解析を実施した。その結果、IPMN併存膵癌症例においては、膵断端部に画像上認識が困難であったIPMN病変または膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)病変がIPMN由来癌およびIPMNを併存しない浸潤性膵管癌症例に比べて高頻度に認められるという知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の移籍から症例の選別、レーザーマイクロダイセクション(LMD)から組織DNA抽出、シークエンスの実施環境準備に時間を要しているが、下記のごとく研究を推進している。 本年度はA群、B群、C群の症例の抽出(各20症例)を選別し、1)それらの臨床病理学的な背景因子の抽出、術前画像所見(特に造影CTとEUSによる主病変部の特徴と断端部における画像所見)、2)切除病理標本における切除断端部における病理所見の解析を実施した。 その結果、IPMN併存膵癌症例においては、膵断端部に画像上認識が困難であった膵癌ハイリスク所見(IPMN病変または膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)病変)がIPMN由来癌およびIPMNを併存しない浸潤性膵管癌症例に比べて高頻度に認められる知見を得た。(病理所見の具体的な数値表記) また術前の画像診断においては断端部領域における背景膵実質の超音波内視鏡による所見においてIPMN併存膵癌(A群)においては、早期慢性膵炎所見を30.7%(B群では10.5%, C群では8.3%)と有意に高い頻度で検出されていた。 一方臨床的背景との対比において、背景膵に膵癌ハイリスク所見を有する症例の診断時における耐糖能、膵癌家族歴には相関を認めていない。(いずれも論文未発表)
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今後の研究の推進方策 |
現在研究の主目的である、膵切除例の背景膵の膵管上皮における遺伝子プロファイル解析の開始にむけ、組織未染色標本の作製、レーザーマイクロダイセクション(LMD)から組織DNA抽出、シークエンスの準備を進めている。主研究者の移籍にともない、LMD作業にやや遅延が生じているが、外注委託により研究を遂行する予定である。 またその遺伝子プロファイル所見と照合するため、より詳細な病理組織所見および術前の画像における背景膵所見の定量的解析(具体的には造影EUSにおける造影様式の解析、EUS elastographyのパターン、Strain Ratioによる組織硬度定量化、Bモード所見のヒストグラム解析など、CTの造影パターン、CT、MRIによる背景膵脂肪化解析)を並行して実施する予定である。 順調に解析が進めば、IPMN前向き観察研究参加症例にて切除を行った症例におけるこれまでの臨床経過・画像所見経過との対比を行い、IPMN症例における特に膵癌ハイリスク因子を有する患者群の抽出に有用なキー所見(画像所見・臨床背景)の発見を目指したい。
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