研究課題/領域番号 |
22K08029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小林 正典 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10825459)
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研究分担者 |
伊藤 剛 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (20733900)
田邉 稔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50197513)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 膵充実性偽乳頭腫瘍 / オルガノイド / 網羅的遺伝子解析 |
研究開始時の研究の概要 |
膵に発生する低頻度・由来不明の腫瘍である充実性偽乳頭腫瘍(Solid Pseudopapillary Neoplasm;SPN)は,低頻度に浸潤・転移を来し,その場合には予後不良となる.有効性な抗がん剤がなく,転移した際は切除が必須となるため,悪性転化例に対する有効な治療法が切望される.本研究では膵組織の3次元体外培養系(オルガノイド培養系)を応用し,SPN患者由来の腫瘍・正常膵オルガノイドから,SPNの腫瘍化・高度悪性化を規定する遺伝的背景や分子・細胞機構の解明及び転移浸潤能獲得機構の解明を目指す.本研究により,高度悪性化SPNに対する画期的な治療基盤の創出が期待できる.
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研究実績の概要 |
膵solid pseudopapillary neoplasm(SPN)は若年女性に好発する原因不明の悪性腫瘍で病理学的には偽乳頭構造が特徴とされる.低悪性度だが浸潤や転移を来すと有効な薬物療法はなく治療に難渋する.SPNの発生機序や悪性度を規定する因子は不明で,新規治療の開発には同解析が急務である.「オルガノイド培養技術」は腫瘍細胞のみを用いた純度の高い解析が可能となる.今回,われわれの研究として膵SPNの悪性化リスクの層別化と有効な治療薬の開発を目的に,当院で2019年12月から2021年4月までに切除された6例のSPN症例から年齢,性別,腫瘍径,病理診断による悪性所見の有無を抽出し,さらに腫瘍部,正常部の組織からそれぞれオルガノイドを作成した.さらにこれらを用いてキール大学と共同でRNA-seq法による遺伝子発現の網羅的な解析を行った.また,臨床所見・分子生物学的特徴について解析を行った.現在までに集積された対象の年齢中央値は41歳(IQR 38-49歳),男女比は1:7であり,腫瘍径中央値は34mm(IQR 18-101mm )であった.神経叢もしくは静脈浸潤を認めた症例は3例で内1例に肝転移を認めた.悪性所見を有するSPNでは有意に核径の増大を認めた(平均値5.8μm vs 8.1μm, p<0.001). 正常・腫瘍部位の手術組織と同組織から作成した正常・腫瘍オルガノイドを用いてRNA-Seqを行い, 腫瘍由来手術組織・腫瘍由来オルガノイドで共通して発現変動を認める32遺伝子が同定され,SPNを特徴づける遺伝子発現様式が明らかとなった.これらの解析をさらに発展させ,次年度にはSPN成立・進展を規定する分子生物学的機序を解明することを予定しており,さらにSPNに対する新規治療の開発につなげることを目標としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
稀少疾患のため症例集積の困難も予想されたが,当初の予定通り年間3例程度の症例の集積が可能で,オルガノイドの樹立とその解析も予定通り進行している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は患者由来膵オルガノイドおよび手術検体を用いたSingle-cell RNA-seqを用いた個々の細胞を対象としたノイズの少ない詳細な遺伝子解析を行うことで,本年度の解析結果の解像度を上昇させ,そこから明らかとなるSPNを特徴づける遺伝子群に対して細胞生理学的な機能解析を予定している.これらの解析結果からSPN成立・進展を規定する分子生物学的機序を解明すること,さらにSPNに対する新規治療の開発につなげることを目標とする.
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