研究課題/領域番号 |
22K08037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井上 貴子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (00431700)
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研究分担者 |
中山 二郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (40217930)
田中 靖人 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90336694)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 腸内フローラ / C型慢性肝炎 / SVR後発癌 / 非代償性肝硬変 |
研究開始時の研究の概要 |
HCV排除(SVR)達成後のC型慢性肝炎、特にC型非代償性肝硬変の病態進展に関与する腸肝軸の変化を、門脈血成分・肝組織での胆汁酸代謝酵素発現量を含めて明らかにし、非アルコール性脂肪性肝疾患と比較しながら、SVR達成後の病態(発癌・線維化・代謝障害)に寄与する要因を同定する。最終的にはSVR達成後の効率的な観察手法の確立・包括的治療の構築につながる腸肝軸モデルの実用化及び開発を目指す。
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研究実績の概要 |
直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)が登場し、最短8週間の経口剤投与で、ほぼ100%C型肝炎ウイルス(HCV)を排除することが可能となった。一方でウイルス学的著効(sustained virological response : SVR)を達成したC型慢性肝炎(CHC)であっても、肝線維化進展例ではSVR達成後も肝発癌の可能性が課題として残されている。肝線維化が軽度の症例でも、高リスク群(高齢・男性)の場合、SVR達成後も肝発癌のリスクが増加する。今後CHCに対する方策は、未知のSVR後肝発癌高リスク要因の同定、および肝線維化進展例を含めた高リスク群患者の囲い込みが重要となる。 我々はHCV感染者の病態進展度による腸内フローラの特徴を明らかにした。CHC患者(PNALT[無症候性キャリア]、慢性肝炎、肝硬変、肝癌)と健常人の腸内フローラを比較し、病態別に解析した結果を世界で初めて報告した(Inoue T, Nakayama J and Tanaka Y, et al. Clin Infect Dis. 2018)。さらにメタボローム解析のひとつである胆汁酸バランスに着目し、CHC患者の便中胆汁酸の特徴を初めて報告した(Inoue T, Nakayama J and Tanaka Y, et al. Liver Int. 2022)。 これまでの成果に基づき、HCV排除前後の腸内フローラを同一患者で比較するとともに、非代償性肝硬変を含む病態進展例の腸内フローラを解析し、腸肝循環におけるHCV排除の意義の解明を試みた。病初期の症例では、HCV排除前後での腸内フローラの変化が大きい傾向にあった。また非代償性肝硬変症例の腸内フローラでは、代償性肝硬変と比較し、さらに腸内フローラの変化(dysbiosis)が進展していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の目標は、C型非代償性肝硬変やウイルス学的著効(SVR)を達成したC型慢性肝炎(CHC)の病態進展に関与する腸肝軸(Gut-liver axis)のメカニズムを明らかにすることである。また予後予測を的確に行なうために、発癌・線維化の高リスク群を選別可能にするバイオマーカーの開発・臨床応用を念頭に置く。これらの研究成果から症例ごとの病態進行(発癌・線維化進展)の程度及びその改善予測が可能となり、CHC患者の包括的診断・治療を具体化することができる。 当院及び協力研究機関に通院中のCHC SVR達成症例を対象に、SVR達成前後のポイントで糞便の提供を依頼した。SVR達成前後の腸内フローラを同一患者で比較し、フローラを構成する菌種数の変化・特定菌種の増減から腸肝循環におけるHCV排除の意義を解明しようと試みた。交絡要因を考慮・排除して腸内フローラの解析を行った結果、HCV排除前後で腸内フローラの構成が変わるグループがあることを発見した。非代償性肝硬変症例に関しても糞便の提供を依頼し、腸内フローラを同定した。 これまでの進捗から、生態系としてのHCV排除・病態進展の意義を評価する準備は整った。今後は、腸肝循環におけるHCV排除・病態進展の意義を解明し、腸肝軸モデルを用いてSVR後発癌や肝線維化進行に関係する腸内フローラ由来物質を同定する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、CHCにおけるSVR達成後の腸内フローラを長期にわたり追跡・比較する。腸肝循環をコントロールする微生物環境としての腸内フローラの構成から、HCV感染・HCV排除の意義を解明する。症例を前向きに観察し、SVR達成後の予後、特に肝発癌・線維化進展と腸内フローラとの関連を明らかにする。さらにNAFLD/NASHなど他の肝疾患との比較解析を含め、門脈血の成分解析・肝組織における胆汁酸代謝遺伝子の発現量の解析を行う。 今後は特にHCV排除後も臨床所見に改善が乏しい症例、および臨床所見が悪化する症例に着目する。臨床的エンドポイントとして肝線維化進行度・発癌・生存率を設定する。さらに腸肝軸モデル・動物モデルを含めた、確実な病態進行予測系を完成させる。また肝発癌・線維化進展を予測可能にする新規バイオマーカーの開発・臨床応用によって、的確に予後予測を行なうシステムを構築する。 本研究の成果から個別の病態進行(発癌・線維化)及びその改善予測が可能となり、CHCにおける包括的診断・治療の構築が実現できる。解析対象とする症例を階層分けし、より詳細で明確なカテゴリー分類ができるよう、新規症例からの検体収集も継続して行なう。
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