研究課題
基盤研究(C)
肝細胞癌は、種々の原因による慢性炎症を有する肝臓に発癌する。慢性炎症に伴いCD8+T細胞が肝臓内に浸潤・蓄積するが、その役割は背景肝疾患により異なると考えられている。免疫療法の有効性を高めるためにはCD8+T細胞が腫瘍抗原を認識し活性化することが重要であるが、肝細胞癌の背景肝に存在するCD8+T細胞が腫瘍局所のCD8+T細胞と同様に腫瘍抗原を認識しているか否についてはいまだ明らかではない。本申請研究において肝細胞癌における腫瘍局所および背景肝のCD8+T細胞を「腫瘍抗原の認識」に着目し、抗腫瘍免疫応答における機能解明を目的に臨床検体の解析やマウスモデルでの検証を行う。
肝細胞癌の発癌母地となる慢性炎症を有す肝臓(慢性肝炎または肝硬変)にはCD8+T細胞が蓄積・浸潤していることが知られている。一方、肝細胞癌のみならず全ての悪性腫瘍において免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を高めるためには腫瘍に浸潤する「腫瘍を認識した」CD8+T細胞が大きな役割を果たしている。肝細胞癌において背景肝に蓄積するCD8+T細胞と腫瘍に浸潤するCD8+T細胞の機能を個々に解析するために、我々は肝細胞癌に対して免疫チェックポイント阻害剤を投与する症例の治療開始直前の臨床サンプルを、同一症例において1腫瘍局所、および腫瘍から離れた2背景肝の2ヶ所から生検を行い、ペアサンプルの蓄積、解析を行なった。本研究では臨床サンプルを用いて(A)肝細胞癌の腫瘍局所および背景肝における免疫微小環境の評価、(B)肝細胞癌の腫瘍局所および背景肝のCD8+T細胞の抗原認識の相違性の探索、(C)項目A、Bで得られた解析結果と免疫チェックポイント阻害剤との奏効の関連性の検討を実施し、加えて(D)マウスモデルを用いたCD8+T細胞の抗原認識の相違性の検証を計画している。2022年度に、項目(A)では病理学的所見の検討、およびフレッシュサンプルを用いたフローサイトメトリー(FCM)を用いた免疫細胞の1細胞レベルの解析を行った。本年度は、項目(A)の症例追加を行なった上で、臨床データとの相関性について解析を行った。特にFCMを用いて腫瘍内に浸潤したT細胞と病理学的所見及び免疫療法の有効性との関連性について着目し検討した。来年度は、背景肝に蓄積したT細胞と腫瘍内に浸潤したT細胞との関連性を含めて追加の解析を行う計画である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的を遂行するために計画した項目について、項目Aおよび項目Bが臨床データとの相関性の解析を含めて完了したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
引き続き、肝細胞癌における腫瘍局所および背景肝のCD8+T細胞の抗腫瘍免疫における機能解析を明らかにする目的で研究を継続する。おおむね計画通りに研究が進展していると判断しており、現行の計画で研究を行う。次年度は、項目Cと項目Dの解析に注力することを予定している。代表例の臨床サンプルを用いたシングルセルシークエンスを用いてTCRと遺伝子発現を同時に行い共通クローンの機能解析の準備も引き続き進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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