研究課題/領域番号 |
22K08050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 綾 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医 (20931877)
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研究分担者 |
平田 喜裕 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10529192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 樹状細胞 / オルガノイド / ニコチン / α7nAchR |
研究開始時の研究の概要 |
腸管には自律神経、知覚神経などの末梢神経系が分布し、その役割は十分解明されていない。臓器相関としての脳神経系と大腸の相互作用が示唆されているが、その分子メカニズムは大部分未解明である。本研究では副交感神経刺激、また抗炎症性シグナルとして知られるアセチルコリン刺激に着目し、その腸管局所における影響、標的細胞、作用機序などを生体モデルおよび培養細胞モデルを用いて解明する。標的細胞や作用機序の検討には細胞特異的受容体ノックアウトマウスを用いる。腸炎モデルにおける効果的な神経シグナル刺激法、特異的な制御法を開発し、腸炎治療への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
自然腸炎モデルであるIL10-/-マウスへのニコチン投与は、粘膜産生細胞である杯細胞の回復、粘膜固有層白血球(LPLs)の浸潤抑制を伴って腸炎を改善し、特に樹状細胞の浸潤抑制が目立った。 既報で免疫細胞と上皮細胞による腸管恒常性の破綻を模倣するモデルとして開発したオルガノイドと樹状細胞共培養モデルを用い、アセチルコリン刺激の標的細胞について検証した。野生型マウスの小腸オルガノイドと骨髄由来樹状細胞(BMDCs)の共培養により、杯細胞への分化障害が誘導され、オルガノイドの嚢胞状の形態変化や杯細胞マーカーMuc2のmRNA発現低下を認めた。共培養へのニコチン負荷は嚢胞形成を抑制しmuc2発現を回復した。一方、樹状細胞のa7nAChRをノックアウトした共培養ではニコチンによる上皮分化障害の改善効果は消失し、共培養において樹状細胞はa7nAChRを介したコリン刺激の標的細胞である事が示され た。 IL10-/-とCD11c-cre;a7nAChRf/fを交配したIL10-/-;CD11c-cre;chrna7 fl/fl(IALマウス)はコントロールに比して腸炎が重症化し、樹状細胞のa7nAChRを介する内因性コリンシグナルが生体の腸炎を抑制する可能性が示唆された。IALマウスの粘膜固有層樹状細胞(LPL-DCs)は網羅的遺伝子解析に足るRNA検体量の確保が困難であったため、野生型マウスのBMDCで遺伝子解析を行い、得られた結果をIALマウスで検証した。BMDCへのLPS負荷によりT細胞のプライミングに関わる遺伝子群(IL1, IL6, CD80)や上皮分化障害の誘導に関わるnotchシグナルのリガンド(Jagged1)の発現が亢進し、ニコチンにより抑制されることが示された。 qPCRおよびフローサイトメトリー法によりIALマウスのLPL-DCでもこれらの遺伝子発現の亢進が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IALマウスのLPL-DCの遺伝子発現について、qPCRおよびフローサイトメトリー法で解析する検体数を追加して検証し、投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
IL-10-/-マウスの腸炎におけるa7nAchRを介したコリンシグナルは、樹状細胞の抗原提示能や上皮分化障害の誘導能を抑制し、腸炎を改善することが示唆された。 近年、炎症性腸疾患に対して多くの生物学的製剤が開発されているが、樹状細胞を標的とした薬剤はなく、新規治療薬開発に繋がることが期待される。
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