研究課題/領域番号 |
22K08055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
本澤 有介 関西医科大学, 医学部, 講師 (90737884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / クローン病 / 腸管線維化 / Heat shock protein 47 / インフラマソーム / PDGF / 治療応用 |
研究開始時の研究の概要 |
クローン病(Crohn’s disease, 以下CD)は腸管に免疫学的異常に基づく慢性炎症が生じる難治性腸疾患である。本疾患は腸管線維化に伴う腸管狭窄を合併し、手術要因の多くを占めている。現在、慢性炎症に対しては免疫制御療法の進歩に伴い治療可能な症例が増加しているが、腸管線維化の制御に関して有効な内科的治療は存在しない。 本研究ではコラーゲン産生に必須の分子シャペロンであるheat shock protein(以下 HSP)47に着目し、ヒト検体及びCD腸管狭窄モデルマウスを用いた包括的研究を行う。 本研究を発展させる事で①CD腸管線維化機構の解明②腸管線維化制御による腸管狭窄治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
クローン病(CD)腸管狭窄においてはコラーゲンの過剰産生に由来する腸管線維化が原因と考え、コラーゲン産生に必須の分子シャペロンであるHeat shock protein(HSP)47に着目して解析を行った。今まで炎症性サイトカインであるIL-17AがHSP47を介してコラーゲンの産生を亢進させることを報告してきた。さらに以前の検討(若手研究)では腸管筋線維芽細胞株に対するIL-1β、TNF-α、TGF-β1などの炎症性・抗炎症性サイトカインの刺激およびそれぞれの共刺激にてHSP47、コラーゲンの産生が亢進することを明らかとした。また、患者背景の検討ではMediterranean fever(MEFV)遺伝子の中でもE148Q SNPを有するCDにて腸管狭窄症例が多く、血清のIL-1β産生が上昇していることを確認した。本研究ではE148Q SNPを有する患者におけるさらなる検討を行い、同SNPを有する患者ではインフラマソームと呼ばれる蛋白複合体の活性化を介して、IL-1βの亢進が認められることを患者末梢血単核球の蛋白解析および腸管組織の免疫染色で確認した。同検体の解析にてCDの中でもMEFV遺伝子変異を有する症例ではIL-1βの発現亢進を認め、他の炎症性サイトカインの存在下では腸管筋線維芽細胞におけるHSP47を介したコラーゲン産生が亢進する(腸管線維化が起こる)ことが腸管狭窄の要因の一つの可能性が示唆され、本年度に研究結果を国際雑誌に報告した。 現在は上記研究過程にて収集された患者血清における検討を行い、慢性炎症下の患者では血小板が活性化されている点に着目し、血小板由来増殖因子(PDGF)における発現を血清蛋白で解析し、CD症例が潰瘍性大腸炎症例や健常人と比較して高いことを明らかとしている。今後、腸管狭窄との関与について組織学的および細胞株における検討を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD腸管線維化メカニズムの解析を目指し、研究計画にあった各種サイトカイン刺激の検討に加えて腸管狭窄症例の背景因子にMEFV遺伝子変異を有している可能性に着目し、インフラマソームに関連した解析を中心に行った。特に同遺伝子変異症例の中でもE148Q SNPを有する症例においてインフラマソームの活性化を確認し、手術検体を用いた免疫染色でもIL-1βが活性化されていた。また、腸管筋線維芽細胞株での検討ではIL-1βによる刺激により、HSP47およびコラーゲンの発現が亢進され、さらにCDの炎症環境において重要なTNF-αやIL-17Aといった炎症性サイトカインとの共刺激がより強い発現を促すことが確認された。今回の結果より複数のサイトカインの共存が線維化に重要であったが、サイトカイン以外の因子の要因も検討することが必要と思われた。今回、背景因子の検討が重要であったように腸管狭窄含めた症例の背景を検討すると炎症性腸疾患(IBD)の症例は慢性炎症による影響と思われる血小板値の上昇を認めたため、血小板との関連を検討することとした。既報にて血小板の活性化マーカーとして血清中のCD62PおよびCD40LがあることからIBD患者血清にて測定したところいずれのマーカーでも上昇が確認された。この為、血小板関連因子にて線維化との関連が報告されているPDGFとCDとの関連について検討したところ潰瘍性大腸炎患者や健常人と比較してCD症例にて発現が亢進していた。線維化に関係する因子であることからCDの腸管狭窄に関与している可能性はあると思われ、腸管組織におけるPDGFの受容体発現の有無・亢進について免疫染色にて確認を予定し、現在条件設定を行っている。また、腸管筋線維芽細胞における検討も予定しており、以前の報告からも複数のサイトカインとの共刺激も検討している。
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今後の研究の推進方策 |
CD腸管線維化メカニズムの解析を目指し、研究計画にあった各種サイトカイン刺激の検討に加えて腸管狭窄症例の背景因子にMEFV遺伝子変異を有している可能性に着目し、インフラマソームに関連した解析を中心に行った。特にMEFV遺伝子変異症例の中でもE148Q SNPを有する症例に着目し、インフラマソームの活性化を確認し、手術検体を用いた免疫染色でもIL-1βが活性化されていることが確認された。また、腸管筋線維芽細胞株での検討ではIL-1βによる刺激により、HSP47およびコラーゲンの発現が亢進し、さらにCDの炎症環境において重要なTNF-αやIL-17Aといった炎症性サイトカインとの共刺激がより強い発現を促すことが確認された。今回の結果より複数のサイトカインの共存が線維化に重要であったが、サイトカイン以外の因子の要因も検討することが必要と思われた。今回MEFVの背景因子の検討が重要であったように腸管狭窄含めた症例の背景を検討すると多くの炎症性腸疾患(IBD)症例は慢性炎症による影響と思われる血小板値の上昇を認めたため、血小板との関連を検討することとした。血小板の活性化マーカーである血清中のCD62PおよびCD40LをIBD患者血清にて測定したところ上昇が確認された。この為、血小板関連因子にて線維化との関連が報告されているPDGF(AA,AB,BBが存在)とCDとの関連について検討したところUCや健常人と比較してCD症例にて発現が亢進していた。線維化に関係する因子であることからCDの腸管狭窄に関与している可能性はあると思われ、腸管組織におけるPDGFの受容体発現の有無・亢進について免疫染色にて確認中である。また、腸管筋線維芽細胞を用いたPDGFにおけるHSP47およびコラーゲンへの影響を検討し、複数のサイトカインとの共存の関係についても同時に解析を予定している。
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