研究課題/領域番号 |
22K08087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
チョ ハクショウ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80570689)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肝線維化 / 自然免疫 / 胆汁酸 / 腸内細菌叢 / 腸内細菌 / 修復性マクロファージ / TLR4 / FXR |
研究開始時の研究の概要 |
肝硬変を終末像とする慢性肝疾患は依然として「生命予後」のみならず人類の「生命の質」を脅かし続けており、「抗線維化・抗炎症・再生促進」を標的とする内科治療の開発が急務である。”Holobiont”の概念でGut-liver axisを介し、生体組織の適応、修復機構の解析から修復性マクロファージの誘導に強く関連する特定の腸内細菌叢―胆汁酸という軸に治療応用が可能になる基盤的研究を展開する。本課題の成果で今後に更に変貌する代謝関連脂肪性肝炎や肝不全を含めた慢性肝疾患の基礎および治療応用を目指したい。
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研究実績の概要 |
Gut-liver axisを標的とする新規抗肝線維化治療の基盤的検討を目指して研究を進めている.今までの研究結果では,複数のマウスモデルで肝障害中止後の肝線維化消退には,骨髄由来単球細胞におけるTLR4の経路が必要であることが確認された.また、抗HCV治療でHCV駆除が達成できた症例の治療前後の血清を用いて検討を行ない、ヒト血清中4型コラーゲン7Sの動態で早期線維化消退群において,TLR4の内因性リガンドであるHMGB1およびTLR4のco-receptorである可溶性CD14の血清濃度が高値な傾向を認め、TLR4を介した線維化消退の現象をヒトで検証した。 2023年度では、さらに肝線維化からの機能回復を検討するため、ヒトのacute-on-chronic 肝不全モデルとして、重症型アルコール性肝炎(severe alcohol-associated hepatitis)患者の抗炎症治療前後のペア血清を用いて検討を行った。抗炎症治療後における、肝予備能の低下を反映するMELD-Naスコアは、血清中G-CSF, VEGF, PDGF, IL-4, IL-13, IL-22と有意な逆相関が示された。G-CSFとの逆相関は、本研究で注目していた回復性マクロファージとの関連が示唆されており、今後、臨床応用の課題になると考えられる。 マウスモデルの検証につき、Erysipelotrichaceae科の腸内細菌の機能評価を中心に進めた。肝線維化消退期に採取した野生型マウスの糞便に有意に増加するErysipelotrichaceae科の腸内細菌の遺伝子解析では、7-α hydroxysteroid dehydrogenaseを有しないことを確認した。Probioticsとしての治療応用に際し、Erysipelotrichaceae科の存在は、どのようにenterohepatic circulationを介して肝内TLR4とFXRの機能を影響するかが課題となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上の研究結果を踏まえて,ヒトacute-on-chronic肝不全モデルとして、重症アルコール性肝炎の抗炎症治療後の回復性マクロファージの関与が示唆された。マウスFMT実験からprobioticsの可能性やFXRとTLR4の相互関係がより確認された一方、注目のターゲットとされるErysipelotrichaceae科の腸内細菌の機能解析も進められている。今後は複数の腸内細菌叢やpost-bioticsとしての胆汁酸との併用による検証が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
下記のように研究を推進したい. ①マウス肝線維化CCl4モデルにて肝線維化消退期におけるErysipelotrichaceae科のprobioticsの役割の評価。7-α hydroxysteroid dehydrogenaseを有しないことを確認したため、FXRのアゴニストとして機能する胆汁酸との関連も同時に検討する。また、Pro-biotics (腸内細菌叢)とpost-biotics (胆汁酸)の同時投与による表現型の検証も検討される。 ②ヒトacute-on-chronic 肝不全モデルとして、重症アルコール性肝炎における回復性マクロファージの重要性が示唆された。血清だけでなく、治療前後の末梢血免疫細胞や肝組織におけるsingle-cell transcriptomeの評価も検討する。
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