研究課題/領域番号 |
22K08090
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
鎌田 研 近畿大学, 医学部, 講師 (70548495)
|
研究分担者 |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 自己免疫性膵炎 |
研究開始時の研究の概要 |
芳香族炭化水素受容体 (Aryl hydrocarbon receptor, AhR) は環境因子センサーとして機能する転写因子である。申請者らは青黛を含む3種類のAhRリガンドが実験的自己免疫性膵炎の発症をIL-22依存性に抑制することを見出した。また、青黛によるAhRの活性化は膵臓腺房構造の恒常性の維持に寄与し、膵炎の発症を抑制することも明らかにした。本研究では青黛によるAhRの活性化が自己免疫性膵炎・慢性膵炎・膵癌の発症に及ぼす効果を解明し、青黛によるAhRの活性化を膵疾患の治療に応用することを目指す。
|
研究実績の概要 |
芳香族炭化水素受容体(AhR)は、生体内のほぼ全ての細胞に存在するタンパク質である。AhRの活性化は発がん・代謝・免疫に様々な影響を及ぼす。本研究では、自己免疫疾患モデル動物であるMRL/MpJマウスを用いて、AhR活性化の自己免疫性膵炎発症に及ぼす効果を検討した。MRL/MpJマウスに対して、Poly(I:C)を繰り返し腹腔内投与することにより、自己免疫性膵炎を誘導した。最初に、3種類のAhR活性化分子(2, 3, 7, 8-Tetrachlorodibenzodioxin、Indole-3-pyruvic acid、植物由来生薬である青黛)の投与が、実験的自己免疫性膵炎の発症にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、これらのAhR活性化物質の投与が効率的に自己免疫性膵炎の発症を防ぐことが膵組織の病理像の検討にて判明した。次いで、AhRの活性化に伴い、膵臓ランゲルハンス島α細胞においてIL-22が著明に産生されること、抗IL-22中和抗体投与下ではAhR活性化分子による膵炎発症抑制効果が消失することが分かった。このように、AhR活性化分子による膵炎発症抑制効果がIL-22に依存的であることが示唆された。また、自己免疫性膵炎患者において、ステロイド治療による寛解後に血清IL-22が著明に増加することが確認された。IL-22は組織修復機能を発揮して、炎症を制御する作用を有することが知られている。自己免疫性膵炎の進行は、腺房組織の消失と腺房-導管異形成(ADM)を特徴とし、SOX9+細胞あるいはAMY-CK+細胞の出現にて定義されるが、AhR活性化分子の投与がADMの発生を抑制することが免疫染色による検討にて判明した。これらの実験結果により、AhR機能の活性化は膵島α細胞からのIL-22の産生を促進し、膵臓腺房構造の恒常性の維持に寄与することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AhRの活性化がヒト自己免疫性膵炎の発症に及ぼす効果については明らかにするために、当初、下記の研究を予定していた。 a)AhR・AhR nuclear translocator (ARNT)の膵組織における発現を検討する; 超音波 内視鏡下に採取した自己免疫性膵炎患者の膵組織を用いて、AhRおよびAhRとヘテロダイマーを形成するARNTの発現を定量的PCR・免疫染色法で検討する。さらに、AhR・ARNTの発現と自己免疫性膵炎患者の臨床像 (血清IgG4・IL-22濃度・臓器病変数)の関係を明らかにする。 b)血清IL-22濃度と疾患活動性の関係を解明する; 申請者らはAhRの活性化がIL-22依存性に実験的自己免疫性膵炎の発症を抑制することを明らかにした。そこで自己免疫性膵炎患者の血清中のIL-22濃度を測定し、IL-22と疾患活動性、特にステロイド投与による寛解導入に伴い、IL-22濃度が増加するかどうか?を解析する。 c)AhRリガンド産生腸内細菌と疾患活動性の関係を解明する; 腸内細菌はトリプトファンを代謝し、AhRリガンドを合成する。AhRリガンド合成に寄与する腸内細菌として、Lactobacillus reuteriなどが知られている。そこで、ステロイド投与前後の自己免疫性膵炎患者の便検体を次世代Sequence解析に供し、AhRリガンド合成細菌の割合と疾患活動性の関係を解析する。
a)およびb)に関しては免疫染色等の実験体制が既に構築されていたことや検証に必要な臨床検体が既に保管されていたこともあり、スムーズに完遂することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、下記研究を推進していく予定である。研究に必要な設備や体制は整っており、順調に進展していくものと考えられる。
a)AhRリガンドの投与が慢性膵炎の発症を抑制するかどうかを解明する。慢性膵炎を誘導したC57BL6野生型マウスに青黛・Indole-3 pyruvic acid含有飼料を給餌し、「青黛・IPAによるAhRの活性化が慢性膵炎の発症を抑制するか否か?」を組織学的に解析する。次いで、AhR欠損マウスに慢性膵炎を誘導し、「AhR欠損マウスが慢性膵炎の誘導に感受性が高いかどうか?」を確認する。 b)AhRの活性化が慢性膵炎モデルマウスに誘導する免疫反応を解明する。慢性膵炎の誘導下にAhRリガンドの給餌により、膵臓の免疫細胞に生じる細胞分画の変化を多重Flow-cytometry染色法で解析する。また、AhRの活性化が膵組織に誘導するCytokine・chemokine反応をRNA sequence法で網羅的に解析する。 c)AhRの活性化が膵臓腺房構造の維持に及ぼす効果を解明する。慢性膵炎を誘導したAhR欠損マウス・野生型マウスの腺房構造のTurnoverをBrdU・Tunel染色を用い、検討する。さらに、その効果がIL-22に依存するかどうかについて、IL-22欠損マウスを用いて検証する。 d)AhRの活性化が腸内細菌叢に及ぼす効果を解明する。慢性膵炎を誘導したAhR欠損マウス・NOD1欠損マウス・野生型マウスの便・膵検体を用いた次世代Sequence解析を実施し、AhRリガンド合成腸内細菌の割合と慢性膵炎に対する感受性の関係を明らかにする。
|