研究課題/領域番号 |
22K08144
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
稲垣 薫克 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (20638366)
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研究分担者 |
石橋 知彦 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (30722285)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肺高血圧症 / 炎症性サイトカイン / Interleukin-6 / Interleukin-21 / 炎症性サイトカイ / 肺動脈性肺高血圧症 / 血管リモデリング / 免疫細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、(1)肺血管の異常なリモデリングの発生や進行過程における炎症シグナルを産生する細胞およびその下流で作用する細胞や組織を明らかにし、PAHの発症並びに重症血管病変の形成機構の解明を目指すことを目的とする。さらに、(2) PAHサブタイプ別のAHR/IL-6/IL-21シグナル活性化についてPAH患者および健常者の末梢血単核球における免疫細胞動態解析を行うことにより明らかにすることにより、PAH に対する新規治療法の開発に繋げることを目標とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、(1)肺血管の異常なリモデリングの発生や進行過程における炎症シグナルを産生する細胞およびその下流で作用する細胞や組織を明らかにし、肺高血圧症(PH)の発症並びに重症血管病変の形成機構の解明を目指すこと、及び、(2) PHサブタイプ別のAHR/IL-6/IL-21シグナル活性化についてPH患者および健常者の末梢血単核球(PBMC)における免疫細胞動態解析を行うことにより明らかにすることにより、PH に対する新規治療法の開発に繋げることを目標としている。2023年度は代表的な炎症性サイトカインであるInterleukin-6(IL-6)のシグナルに着目して、IL-6受容体の一つであるgp130のfloxマウスを用いて、血管内皮細胞(VE-Cadherin-CreERT2)、血管平滑筋細胞(SMMHC-CreERT2)およびヘルパーT(Th)細胞(CD4-Cre)におけるIL-6シグナル欠損の影響について検討した。その結果、CD4特異的gp130欠損マウスでは、HPHマウスモデルのPH病態が有意に抑制されることを明らかにした。マウスで得られた結果について、より重症のPHモデルであるラットを対象としたPHモデルにおけるIL-6ノックアウト(KO)の影響についての検討を行った。その結果、IL-6KOラットでは低酸素やモノクロタリン、およびSuHx誘発のPHモデルがいずれも有意に抑制されることを明らかにした。さらに、SuHxラットモデルにおける肺のCD4陽性T細胞のRNAseq解析から、IL-6シグナル依存的なTh17細胞の分化が重症PH病態形成に関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では肺高血圧症(PH)の発症における炎症性サイトカインの産生細胞を特定するため、PH動物モデルの肺や肺胞洗浄液におけるIL-6発現についての経時変化を行うこととして、PH病態形成におけるIL-6の発現細胞や時期について明らかにしつつある。また、炎症性サイトカインシグナルが関与する細胞の特定に関しては、初めにIL-6シグナルに着目し、CD4特異的なgp130欠損マウスではPH病態が有意に抑制されることを見出している。さらに、重症PH患者でみられるような閉塞性の肺血管病変を呈するSuHxラットモデルにおいて、IL-6シグナルの下流で生じるSTAT3のリン酸化が肺血管周囲のCD4陽性細胞において生じていることを明らかにした。この重症PHラットモデルであるSuHxモデルの肺からCD4陽性T細胞を回収してRNAseq解析を行い、野生型ラットとIL-6KOラット由来のCD4陽性T細胞における遺伝子発現の比較を行った結果、重症PHモデルの肺のCD4陽性T細胞では、IL-6シグナル依存的な炎症状態となっていること、IL-17シグナル経路が活性化していることが明らかとなり、Th17細胞への分化がIL-6シグナル依存的に生じていることが示唆された。以上の成果と、これまでの成果をまとめて論文投稿し、PNAS誌に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はIL-6とIL-21シグナルに共通するSTAT3に着目し、これまでに樹立した各細胞特異的なSTAT3欠損マウスにPHモデルを適用することにより、IL-6、IL-21シグナルがどの細胞で活性化を来してPH発症に関与するかを明らかにする。さらに、IL-6やIL-21受容体欠損ラットに最重症のPHモデルであるSuHxラットモデルを適用し、肺を含む各種臓器から免疫細胞を回収して免疫染色、FACS解析、タンパク質発現解析および遺伝子発現解析を経時的に行うことにより、肺血管の重症病変の形成に炎症性サイトカインが関与する時期や細胞の特定について引き続き検討を進める。また、これまで集積した健常者およびPH患者の血液サンプルにおけるIL-6の測定やPBMCのフローサイトメトリーによる免疫細胞解析を行うことにより、PHの重症度や疾患特異的な炎症性サイトカインシグナルの活性化を明らかにする。
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