研究課題/領域番号 |
22K08154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬場 理 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (30758446)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 動脈硬化 / 非定型ケモカイン受容体 / CXCR7 / PET |
研究開始時の研究の概要 |
非定型的ケモカイン受容体CXCR7は動脈硬化進展において重要な機能を持つと考えられるが、その動脈硬化巣における発現分布を含めて判明していないことが多い。一方、PET検査は生体内での分子動態を非侵襲的に評価できる点で、近年、動脈硬化性疾患領域でも注目を浴びている。本研究では、マウスモデルを用いた動脈硬化巣におけるCXCR7の発現および機能解析、および臨床応用に向けたCXCR7特異的PETトレーサーの開発およびマウスモデルでの動脈硬化巣におけるPETシグナル解析を行う。これらが達成されることによって、動脈硬化性疾患における新たな診断モダリティの創出が期待される。
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研究実績の概要 |
ヒトにおいてケモカインの一つであるCXCL12の血中での上昇は動脈硬化性疾患のリスク因子である。一方、申請者らは、その主要な受容体の一つであるケモカイン受容体CXCR4が逆に動脈硬化抑制的に働くことを以前に報告した。非定型的ケモカイン受容体CXCR7はCXCL12のもう一つの主要な受容体であり、上記の矛盾点を解明するための新たな鍵となることが期待されるが、その動脈硬化巣における発現分布を含めて判明していないことが多い。一方、動脈硬化性疾患において、動脈硬化巣における分子動態を非侵襲的に評価する方法の開発が求められているが、PET検査は潜在的にそれらを可能とする。本研究の目的は、マウス動脈硬化モデルを用いて動脈硬化巣中のCXCR7の発現細胞およびCXCR7の動脈硬化形成における機能を明らかにすることである。具体的には、1. マウスモデルを用いた動脈硬化巣におけるCXCR7の発現および機能解析、2. 臨床応用に向けたCXCR7特異的PETトレーサーの開発およびマウスモデルでの動脈硬化巣におけるPETシグナル解析を行う。これまでに、CXCR7が動脈硬化巣中の内皮細胞に高発現していること、蛍光標識したCXCR7特異的ペプチド(Cy5-LIH383)が動脈硬化巣における内皮細胞に集積することを踏まえ、CXCR7特異的PETトレーサー(64Cu-NODAGA-LIH383:ICT-02)を開発に成功した。さらに、 (1) アポE欠損マウスにおいて、ICT-02が動脈硬化巣に集積すること、(2) 内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスにおいて、蛍光標識トレーサー(Cy5-LIH383)の血管内皮への集積が減少することが判明し、そして、(3) 内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスにおいて動脈硬化進展が増悪傾向であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管内皮細胞特異的CXCR7欠損マウス(CXCR7fl/fl VE-Cadherin CreERT2 Apoe-/- マウス)の作成には予定より時間がかかったものの無事に成功し、このマウスを用いた血管内皮細胞におけるCXCR7の動脈硬化形成に与える影響についての解析を開始している。動脈硬化巣の進展度合いに加えて、動脈硬化巣中のマクロファージの含有量や、単球の取り込み量などについても解析を行っているところである。また、開発に成功した新規CXCR7特異的PETトレーサーをアポE欠損マウスに投与したところ、予想通りに動脈硬化巣におけるシグナルが検出された。さらに、内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスにウェスタンダイエットを負荷して動脈硬化形成を促し、蛍光標識トレーサー(Cy5-LIH383)を投与したところ、コントロールマウスに比して内皮細胞への集積が低下することがフローサイトメトリーを用いた解析で確認した。現在、両群の組織中のトレーサーの分布について免疫染色で確認中である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、これまでに内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスにおいて動脈硬化進展についての解析を行ったが、動脈硬化プラーク中のマクロファージの量や、bead labeling法を用いたプラークへの単球の取り込み量などのさらなる表現型解析を現在行っている。また、体重や食事摂取量については野生型マウスと変化がないことはすでに確認しているが、さらに血清脂質などへの影響がないかも検討する。また、内皮細胞におけるCXCR7が欠損することによって動脈硬化にどのように影響を与えるかの機序について網羅的な遺伝子解析法を用いて明らかにしていく。具体的には、内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスおよびコントロールマウスにおける動脈硬化サンプルについてSingle cell RNA-seq解析を行う。これら網羅的解析によって、内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスにおける表現型の起こる機序について推測する。そして、その推測の妥当性について内皮細胞特異的CXCR7欠損マウスの動脈硬化サンプルのフローサイトメトリーや免疫染色を用いて確認していく。さらに、上記推測の妥当性をより詳細に検討するため、そしてヒト細胞においても同様であるかをin vitroの系を用いて検証する。このために現在、ヒトの血管内皮細胞株であるEA.hy926においてCRISPR-Cas9システムを用いてCXCR7欠損株を作成中である。この欠損株および通常のEA.Hy926においてCXCR7のリガンドであるCXCL12の投与あり、なしの4群においてRNA-seq解析を行い、予想通りの遺伝子発現変化が起きているかを確認する。
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