研究課題/領域番号 |
22K08189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
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研究分担者 |
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00398322)
久野 篤史 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30468079)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 拡張型心筋症 / 心不全 / ネクロプトーシス / MLKL / 細胞死 / mTOR |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、細胞増殖・成長のmaster regulatorである哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体1 (mTORC1) の恒常的活性化が、MLKL活性化依存性プログラムネクローシスであるネクロプトーシスを誘導することを報告した。さらに、リン酸化により活性化したMLKLが拡張型心筋症の心筋細胞で増加し、特に核リン酸化MLKL増加が不良な転帰と関係していた。本研究の目的は、心不全の発症・進展におけるMLKLの役割を解明し、MLKL標的治療の基盤を作ることである。
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研究実績の概要 |
1. 拡張型心筋症 (DCM) 56例を対象とし、ネクロプトーシスシグナル活性化の指標として、心筋生検標本における心筋細胞リン酸化MLKLの発現量を免疫染色で定量的に解析した。全死亡および心不全・心室性不整脈による再入院をイベントと定義した。リン酸化MLKLは心筋細胞の核、細胞質および介在板に観察され、特に歪な形態の肥大した核にリン酸化MLKLが顕著に発現していた。追跡期間の中央値は3.5年間で、イベントが発生したのは10症例(18%)であった。イベント発生率は、総リン酸化MLKLおよび介在板リン酸化MLKL高値群と低値群の間では差はなかったが、核リン酸化MLKL高値群において低値群より高値であった(32% vs. 4%、p=0.012)。生存曲線解析における無イベント発生率は核リン酸化MLKL高値群において低値群より有意に低値であったが(68% vs. 96%、p=0.019)、総リン酸化MLKLおよび介在板リン酸化MLKL発現高値群と低値群の間に差はなかった。
2. δサルコグリカン欠損マウスでは左室拡大および置換性線維化を伴う左室駆出率減少が認められ、ヒトDCMと類似していた。総リン酸化MLKL発現率および核リン酸化MLKL発現率は野生型マウスと比較してδサルコグリカン欠損マウスで有意に高値であった。
3. ラットMLKLのNuclear Export Signal(NES)機能欠失型変異体を作成しH9c2ラット心筋芽細胞に導入することにより、核MLKL過剰発現とネクロプトーシスの関連を検証した。MLKLの核排出抑制による核への蓄積により、RIP1/RIP3非依存性のネクロプトーシスが誘導された。拡張型心筋症における核MLKL増加は心筋細胞のネクロプトーシスを誘導し、末期心不全への進行に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に本研究の成果を二つの論文として発表し、さらにMLKLノックアウトマウスを用いた解析にも着手することができたことから、現時点では順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
MLKLノックアウトマウス(MLKL-KO)とコントロール(WT)を用いる。圧負荷誘導心不全、ドキソルビシン心筋症モデル及びデルタサルコグリカン欠損マウスモデルを用いる。MRIとコンダクタンスカテーテルで評価した左室形態及び左室機能を指標に代償期心不全と左室機能が低下した非代償期心不全の週齢を明確にする。in vivoにおけるネクロプトーシスの指標としてリン酸化MLKLとC9の免疫染色を用いる。心不全代償期と非代償期におけるTNFを始めとした既知のリガンドに加え、unbiased approachで検出した新規リガンドの血清や心筋における発現量、リン酸化MLKLの細胞内局在の変化(特に核リン酸化MLKLの発現量)、C9で検出したネクローシス、さらに核MLKLによる制御される遺伝子・心筋代謝物を解析し、心不全の非代償化とネクロプトーシスの関連を解析する。WTとMLKL-KOを比較し、心不全改善効果とMLKL下流の標的分子との関連性を明確にする。
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