研究課題/領域番号 |
22K08231
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 朋幸 浜松医科大学, 医学部, 助教 (20402357)
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研究分担者 |
鈴木 哲朗 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00250184)
須田 隆文 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30291397)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 線毛輸送系 / 肥満 / 線毛機能 / インフルエンザウイルス / SARS-CoV-2 / ウイルス性呼吸器感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
肥満は,ウイルス性呼吸器感染症の重症化をもたらす重大なリスク因子であるが,その詳細な機序は未解である.線毛輸送系は,気道に侵入した病原体を体外に排出する生体防御機構でウイルス感染制御に必須であるが,肥満と線毛輸送系の関連を示した報告はない.本研究では,肥満に起因する気道上皮の線毛機能障害に着目してその機序を解明して,線毛機能障害に対する制御法の開発へ向けた基盤を構築する.
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研究実績の概要 |
本研究は,肥満によるウイルス性呼吸器感染症の重症化機序に関して,「肥満により惹起される気道の線毛機能障害」に焦点をあてその機序を解明し,線毛機能障害に対する効果的な制御法の開発へ向けた基礎的基盤の構築を目指すものである. マウス気管の組織培養系を用いた線毛機能の動的定量評価として,線毛輸送能と線毛活性を解析した.線毛輸送能については、組織培養液中に蛍光ビーズを添加してそれらの移動する距離と時間を蛍光顕微鏡とビデオカメラで計測して、“流体移動速度”を算出した。線毛活性については、色素標識した線毛先端の動きを高速ビデオカメラで撮影して専用画像ソフトでイメージング解析し、“線毛打頻度(ciliary beat frequency: CBF)”を算出した. 高脂肪食を14週間摂取した肥満モデルマウスを作成し,上述の方法を用いて線毛輸送能と線毛活性をコントロールマウスと比較解析した.その結果,肥満マウスでは有意に流体移動速度とCBFが低下しており,肥満マウスにおける線毛機能の低下が実証された.次に,インフルエンザAウイルス(IAV)感染時における線毛機能の変化を,コントロールマウスと肥満マウスで比較解析した.コントロールマウスより採取した気管組織をIAV含有培養液にて60分組織培養して気管上皮にIAVを感染させた後,線毛輸送能と線毛活性を評価した.その結果,IAV感染により流体移動速度とCBFは有意に増加した.一方、肥満マウスより採取した気管組織を用いて,同様の手法で気管上皮にIAVを感染させで線毛機能を解析したところ,IAV感染による流体移動速度とCBFの増加は消失した. 以上より,肥満マウスでは,気道上皮の線毛機能が障害されており,さらにIAV感染時における線毛機能促進作用が減弱することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,肥満に起因する気道上皮の線毛機能障害のメカニズムを解明して,線毛機能障害に対する効果的な制御法の開発へ向けた基盤を構築することである. これまでの実験において,肥満モデルマウスを作成して,気管組織培養系と線毛機能の動的定量解析法を用いて,肥満による線毛機能障害を解析した.その結果,肥満モデルマウスでは,コントロールマウスと比較して,気管上皮における流体移動速度とCBFが有意に低下し,肥満マウスにおける線毛機能障害が実証された. また,ウイルス感染時にみられる線毛機能の促進作用に対して,肥満が与える影響について解析した.コントロールマウスでは、IAV感染により流体移動速度とCBFは増加するが,肥満モデルマウスではIAV感染による流体移動速度とCBFの増加は消失した. さらに,SARS-CoV-2感染がIAVと同様に気道上皮の線毛機能を促進するか否か検証するため,ヒトACE2を発現したトランスジェニックマウス(K18-hACE2マウス)の気管組織を用いてSARS-CoV-2含有培養液で組織培養し,気道上皮にSARS-CoV-2を感染させ,線毛輸送能・線毛活性を定量評価した.その結果,SARS-CoV-2感染により,気管上皮の流体移動速度とCBFは有意に増加した. 今後は,肥満がSARS-CoV-2感染時における線毛機能促進に対して如何なる作用をおよぼすか,K18-hACE2マウスを用いた肥満モデルマウスを作成して検証を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までの研究により,肥満マウスにおいて線毛機能(線毛輸送能・線毛活性)が低下すること,またIAV感染時における線毛機能促進作用が消失することを実証した.これは,肥満では線毛機能障害を来して,それによりIAV感染時におけるウイルスの体外排泄が遅延して感染症の重症化を惹起することを示唆する結果である.今後は、K18-hACE2マウスを用いたSARS-CoV-2感染実験系により同様の解析を行い,肥満におけるSARS-CoV-2感染時の線毛機能障害につき同定する。 これらの研究成果は,肥満におけるCOVID19重症化機序を解明するだけでなく,ひろくウイルス性呼吸器感染症全般における肥満による重症化メカニズムを解明することに繋がること期待される. また、今後は、肥満による線毛機能障害の機序の解析を計画している.まず、コントロールマウスと肥満マウスの気道上皮における繊毛関連遺伝子群の発現の相違につき、RNAseqを用いて網羅的に解析する.RNAseqで肥満とコントローで発現に差異のある線毛関連遺伝子群が同定されれば、real-time PCRを用いてそれらのmRNA発現の相違につき検証する.また,我々は、IAV感染による線毛機能の促進機序として、IAV感染に伴う細胞外ATP放出の増加とATP-P2受容体経路が関与することを報告した(Respir Res 2020).そこで,肥満におけるIAV感染による線毛機能促進作用の減弱機序につき,肥満による細胞外ATP放出の減弱につき検証する.具体的には,コントロールマウスならびに肥満マウスの気管組織培養を用いて、IAV感染時における培養上清中ATP濃度測定し比較解析する.
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