研究課題/領域番号 |
22K08237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
洪 泰浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80426519)
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研究分担者 |
山本 信之 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60298966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肺がん / 分子標的治療 / 薬剤耐性 / 個別化医療 |
研究開始時の研究の概要 |
非小細胞肺がんにおいては、KRAS G12C阻害剤を用いた治療戦略開発及び耐性機序の解明と克服は喫緊の課題である。本研究においては、KRAS G12C阻害剤耐性細胞株及び腫瘍検体から樹立したオルガノイド培養細胞株を用いての基礎検討を実施する。さらにKRAS G12C阻害剤治療前後の組織及び血液検体を用いた解析を行い、治療成績の向上及びプレシジョンメディシン推進への橋渡しを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究提案における取り組みは、KRAS G12C変異阻害剤を用いた最適な治療戦略の開発及び耐性機序の解明とその克服へ向けた橋渡し研究である。臨床検体を用いた検討については順調に進んでおり、KRAS G12C変異陽性の肺癌症例を対象とする、プラチナ製剤+ペメトレキセド+sotorasibの多施設第II相試験(jRCT2051210086)に登録された30症例から採取した血液検体を回収し、抽出した血漿DNAを用いた次世代シーケンスによる網羅的変異解析を実施した。治療前と治療直後、加えて治療に対して耐性を獲得した時(増悪時)の3ポイントにおいて検討を行い、KRAS G12C変異アリルの推移を追うとともに、同時に検出される体細胞変異の変化についても観察を行った。現在は臨床情報との解析を実施中である。加えて、登録された症例から採取した組織検体についても、次世代シーケンスによる網羅的遺伝子変異解析を実施しており、組織と血液での変異プロファイルの比較を行っており、臨床情報との統合解析を実施中である。 加えて、KRAS G12C阻害剤耐性細胞株を用いての基礎検討を実施し、KRAS G12C阻害剤治療前後の組織及び血液検体を用いた解析を行うことで、KRAS変異陽性肺がんにおける治療向上及びプレシジョンメディシン推進への橋渡しとなる基盤研究を実施中である。これまでに肺腺癌細胞株であるH358、Lu65に及びMIA PaCa-2細胞株を用いてKRAS G12C阻害剤であるsotorasib耐性細胞株の樹立に成功しており、現在樹立した細胞株を用いての解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KRAS G12C変異陽性の肺がん症例を対象とする、プラチナ製剤+ペメトレキセド+sotorasibの多施設第II相試験(jRCT2051210086)に登録される症例からの、治療前後の血液検体を用いてリキッドバイオプシー解析について、予定していた30症例から採取した末梢血より抽出した血漿DNAを収集後に、がん関連197遺伝子における網羅的変異解析を実施した。具体的にはイルミナ社のNextSeq 500を用いてシーケンスを実施した。治療前及び治療直後に加えて、治療に対する増悪時の血液検体を用いての解析も実施した。治療への奏功を含む詳細な臨床情報とリキッドバイオプシーから得られたゲノムデータの統合解析を行うことで、耐性機序の解明及びさらなる治療開発へ向けての重要なデータ取得が可能であり、現在は解析を進めている状況である。加えて、登録された症例から採取した組織検体についても、抽出したDNAを用いて次世代シーケンスによる網羅的遺伝子変異解析を実施しており、組織と血液での変異プロファイルの比較を行い、臨床情報との統合解析を実施中である。 KRAS G12C阻害剤であるsotorasibに感受性のある肺腺がん細胞株であるH358、Lu65及び膵がん細胞株であるMIA PaCa-2を用いて耐性株をすでに昨年度樹立済みである。親株との違いを比較することで、耐性機序を探索しており、ウェスタンブロット法によるsotorasib処理時のRAS/RAF/MEK系シグナルの変化及びPETN/PIK3CA/AKT経路の変化の検討を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
血液検体を用いたリキッドバイオプシー解析については、次世代シーケンスより得られたゲノムデータと、治療への奏功を含む詳細な臨床情報との統合解析を行うことで、耐性機序の解明及びさらなる治療開発へ向けたデータを取得する予定である。さらには、治療前に採取した組織検体から抽出したRNAを用いてのRNAシーケンスの実施を予定しており、血液検体での結果と併せての解析を予定している。血液と組織での結果を臨床情報と統合解析することで、耐性獲得メカニズムの解明につながる可能性があると考える。 シングルセル解析によるKRAS G12C阻害剤に対する耐性獲得機序の解明を推し進める。具体的には、感受性細胞株であるH358、Lu65及びMIA PaCa-2に1 uMのsotorasibによる24-72時間の暴露を行い、細胞死を逃れ生存している細胞を回収し、シングルセルレベルでのRNAシーケンスを行う。ライブラリ作成には10X社のsingle cell controllerを用い、シーケンスにはイルミナ社のNextSeq 500を用いる。Sotorasib未処理での細胞株を用いたデータとの比較を行うことで、感受性の異なるクローンの分布の違いを検討するとともに、耐性獲得につながるクローンの同定及びそれらが有する治療標的となる可能性のある分子の同定を行う。耐性細胞を用いた検討においては、shRNAによるノックダウンやsgRNAライブラリを用いたCRISPR/Cas9によるkinome-wideなスクリーニングを行うことで、耐性機序の探索を行うとともに、耐性克服のための標的の探索を進める予定である。
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