研究課題/領域番号 |
22K08257
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
入來 豊久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (20802078)
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研究分担者 |
坂上 拓郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (00444159)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70452886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 腫瘍関連マクロファージ / 小細胞肺癌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、標準治療の進歩に乏しい小細胞肺癌(SCLC)の新たな治療法の開発を目的に、マクロファージ(Mφ)の活性化を調節する化合物をSCLCの治療に応用しようとする研究である。本研究では主にMφの活性化を制御する環状スルフィド化合物を用いての既知抗腫瘍療法との併用効果の検証、ならびに、②近年、SCLCの新たな治療標的として知られるDLL3のMφ活性化に与える影響を解析することで抗DLL3抗体-抗腫瘍薬複合体の腫瘍微小環境に与える作用の解析を行う。上記検討にて、Mφ活性化制御という新たなメカニズムを介したSCLCの治療に応用可能な分子標的薬や治療法の開発を行うための基礎的知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、標準治療の進歩に乏しい小細胞肺癌(SCLC)の新たな治療法の開発を目的に、マクロファージの活性化を調節する化合物をSCLCの治療に応用しようとする研究である。近年、腫瘍微小環境を形成する腫瘍関連マクロファージの活性化状態が腫瘍進展に関与していることが知られており、腫瘍促進性のオルタナティブ活性化(M2)マクロファージが腫瘍促進に関わっていることら知られている。これまでに、申請者らはSCLCの腫瘍微小環境におけるマクロファージとSCLC細胞両者におけるSTAT3の活性化の抑制がSCLCに対する治療標的となることを報告した。そこで、本研究では主にSTAT3の活性化を抑制することでマクロファージの活性化を制御する化合物を用いて、単剤での効果ならびに既知抗腫瘍療法との併用効果の検証し、マクロファージ活性化制御に基づく新たなSCLCの治療法の開発を目指す。 本年度は、STAT3の活性化を抑制することでマクロファージの活性化を制御する候補化合物である環状スルフィド化合物(Onionin A, Onionin A類似化合物)が、マクロファージ由来液性因子によるSCLC細胞のSTAT3活性化と細胞増殖能を抑制することを明らかにした。また、免疫不全マウスを用いたヒトSCLCの皮下腫瘍モデルに対する環状スルフィド化合物の作用を評価したところ、環状スルフィド化合物投与により腫瘍進展の抑制が認めれられた。さらに、既知の抗癌剤(シスプラチン)との併用効果も認められたことから、環状スルフィド化合物はin vivoにおいても有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画における大きな目標としては、マクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化と細胞増殖能対する環状スルフィド化合物の作用の評価ならびに、マクロファージとSCLC細胞間の相互作用(直接・間接共培養)によるSCLC細胞のSTAT3活性化と細胞増殖能の増加に対する環状スルフィド化合物の効果の検証であった。 本計画の進展度としては、環状スルフィド化合物がマクロファージ由来の液性因子によるSCLC細胞におけるSTAT3活性化を単培養ならびに共培養のどちらの条件においても抑制することでSCLC細胞の増殖を抑制することを明らかにした。また、SCLC細胞(SBC3 cell)を移植したヌードマウスへの(Onionin A, Onionin A類似化合物)投与により 腫瘍進展(腫瘍重量・腫瘍サイズ)が減少し、皮下腫瘍における腫瘍の活性化マーカーであるpSTAT3陽性細胞数が減少した。ゆえに、マクロファージの活性化を制御する環状スルフィド化合物はSCLCにおいて腫瘍の進展・増殖に抑制的に機能している可能性が示唆された。Ononin AのSCLCに対する抗腫瘍効果については学術論文にて報告した。ゆえに、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、免疫不全マウスを用いたヒトSCLC細胞の皮下腫瘍モデルを用いて、Onionin A以外の環状スルフィド化合物ならびに天然化合物のin vivoでの抗腫瘍作用の評価および、既存の抗腫瘍療法との併用による抗腫瘍効果の評価を行う。また、DLL3やアンフィレグリンの腫瘍関連マクロファージに対する作用の解明を行う。具体的には、細胞実験にてDLL3刺激によるMφにおけるサイトカイン分泌等を評価する。加えて、SCLCの組織標本を用いて、腫瘍内浸潤マクロファージにおけるDLL3受容体であるNotch受容体や、そのシグナル伝達に関与する分子を免疫組織化学的に解析する。つまり、これまでの研究成果、ならびに上記の検証を行うことで、将来的に臨床応用可能なマクロファージの活性化制御に基づく小細胞肺癌に対する新規治療戦略の基礎的知見を得ることを目指す。
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