研究課題
基盤研究(C)
肺動脈性肺高血圧症(PAH)では、血管内皮成長因子の発現が増強しており肺動脈の内腔狭窄・閉塞などに関与すると考えられるが、内皮機能制御に関わる分子機序は明らかでない。最近、申請者らは組織透明化技術と多光子励起レーザー顕微鏡を用いてマウスの肺葉全層の微小構造(血管新生像など)を三次元で可視化する新システムを開発した。本課題ではヒトPAH疾患の遺伝子異常を反映したPHノックインマウスを新たに作成し、この現象を制御する分子機序について、独自の三次元病理解析やオミックス解析、シングルセル解析などを用いてPH肺内に混在する多様な内皮細胞の特性を明らかとし、新たなPH病態・治療法を提唱する。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)では、血管内皮成長因子の発現が増強しており肺動脈の内腔狭窄・閉塞などに関与すると考えられるが、内皮機能制御に関わる分子機序は明らかでない。申請者らは組織透明化技術と多光子励起レーザー顕微鏡を用いて、マウスの肺葉全層の微小構造を三次元で可視化する新システムを開発し、低酸素性肺高血圧症において二次元の病理組織学的検討では検出困難であった血管新生様式を見出した(Circulation 2021;144:1452)。2022-2023度、遺伝子発現解析などの結果、この現象に重要な因子PGC1aを同定し、低酸素環境での病初期の適応反応に重要な役割を担っていることを報告した(JCI insight 2023;e162632)。さらに、CRISPR-Cas9システムを用いてヒトPAHの原因遺伝子変異を導入したBmpr2ノックインマウス(Bmpr2-KI)を作成し、血管内皮特異的に因子PGC1aを欠損させたところ、このBmpr2-KI:eKOマウスは、通常大気下で高度の肺高血圧を発症し叢状病変に類似した病変像を呈した。2024年度は、このマウスについて、免疫組織学的検討や遺伝子発現解析などを行って表現型を解析するとともに、シングルセル/核マルチオミックス解析や三次元病理解析システムを用いて、PAHの新たな治療標的因子や進展過程に重要なシグナル伝達機構を同定する。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子発現解析などの結果、低酸素性肺高血圧症で見出した血管新生に重要な因子PGC1aを同定し、低酸素環境の病初期における役割(適応反応)を解明した。さらに、CRISPR-Cas9システムを用いてヒトPAHの原因遺伝子変異を導入したBmpr2ノックインマウスを作成し、PGC1aを血管内皮特異的に欠損させたマウスを作成したところ、通常大気下で高度の肺高血圧を発症し、叢状病変に類似した病変像を呈していた。
上記のPAHモデルマウス(Bmpr2-KI:eKOマウス)について、免疫組織学的検討や遺伝子発現解析などを行って表現型を解析するとともに、シングルセル/核マルチオミックス解析や三次元病理解析システムを用いて、PAH発症・進展に関わる分子機序を時空間的にも明らかとする。特に代償期から非代償期(悪化)への起点となる分枝点を探索することで、PAHの新たな治療標的因子や進展過程に重要なシグナル伝達機構を同定したい。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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