研究課題/領域番号 |
22K08282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊本 雅靖 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20600505)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 呼吸器疾患 / 肺線維症 / 創薬科学 / ケミカルバイオロジー / 線維化 / フェロトーシス / 線維化機構 / 上皮細胞障害 |
研究開始時の研究の概要 |
肺の線維化は、肺胞上皮の損傷と続いて起こる異常修復によって線維芽細胞が活性化し、細胞増殖とコラーゲンの過剰産生が誘発されて進行すると考えられている。新型コロナウイルスも肺胞上皮細胞に感染し、炎症の惹起と上皮損傷を誘発する。感染などによって末端組織の間質が炎症を起こした肺組織は、炎症の慢性化に伴って不可逆性の線維化が進行する。近年の感染症流行から、線維化機構の解明は、社会的要請が強い課題であると考えられるが、先行研究の多くはin vivoでの線維化を解析しているため、線維化分子機序の詳細は未解明である。本研究では、in vitroで上皮障害モデル系を構築し、肺線維化の分子機序を解明する。
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研究実績の概要 |
研究背景: 特発性肺線維症の生存期間の中央値は診断から2~3年で、膵がん、肺がん、白血病といった悪性腫瘍と同等に予後不良な疾患であるため、治療法確立は喫緊の課題である。 研究目的: 本研究の目的は、肺線維症の線維化機構を解明し、新規の治療標的を同定することである。本研究では、in vitroで上皮障害モデル系を構築し、肺線維化の分子機序を解明する。線維化機序の分子モデル化は、ウイルス感染後に観察される肺線維化や指定難病である特発性肺線維症の治療法進展につながる。 研究実施計画: 令和5年度研究計画では活性型TGF-β複合体関連分子群の分泌・形成にかかわる分子機構解明を目指した。また、令和4年度に新規フェロトーシス阻害剤を同定したことから、新規阻害剤による肺線維症治療を目指した実用化研究を開始した。 成果の具体的内容: 令和4年度に肺上皮細胞障害時のトランスクリプトーム解析を行い、潜在型TGF-β活性化機能が知られるインテグリン分子の発現上昇に着目した。令和5年度はインテグリン阻害剤を用いて、TGF-β活性化を検証し、細胞障害誘導培養上清中の活性化TGF-βが阻害剤によって減少することを見出した。新規フェロトーシス阻害剤については、令和5年度に作用機序を検証し、特定の疾患モデル動物で薬理作用を確認した。 意義: 肺線維症に有効な治療法の確立を目指すうえで、線維化機構の分子モデル化は、治療と予防を分子機構から検証するために必須である。特定の創薬標的に対する実用化研究は、研究成果を還元する社会的意義と薬物で分子機構を検証する学術的意義をもつ。 重要性: 線維化機序の分子モデル化と創薬研究は、ウイルス感染後に観察される肺線維化や指定難病である特発性肺線維症の治療法進展につながると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、令和4年~6年度までに、上皮障害で増加する活性化TGF-β関連分子群を同定・解析し、線維化亢進機構を分子生物学的に説明し、さらに、肺線維症モデルマウスで同定分子が線維化亢進に関与するのか明らかにすることを目指している。また、令和4年度に新規フェロトーシス阻害剤を同定したことから、令和5年度からは新規フェロトーシス阻害剤による肺線維症治療を目指した実用化検証も進めることとした。 令和5年度研究計画では、令和4年度に同定した活性型TGF-β複合体関連分子群の分泌と形成に関係する分子機構の解明を目指して、分子生物学的手法と生化学的手法によって、分子群の発現・放出を制御する因子を同定する計画であった。上皮細胞障害時のトランスクリプトームデータ解析は令和4年度に実施していたため、生化学的手法を中心に検討した結果、細胞培養上清中の活性型TGF-βは、インテグリン分子を介して潜在型から活性型に変化していることが示唆された。 新規フェロトーシス阻害剤による肺線維症治療を目指した検証は、げっ歯類への経口投与で血中移行する化合物について投与溶媒を検討し、in vitroでのフェロトーシス阻害薬効濃度を血中で維持できる溶媒を見出した。さらに、実用化のために薬理作用を早期に検証すべきであると考え、特定の疾患モデル動物で薬効薬理検討を実施し、治療効果を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も、線維化機構の分子モデル構築と並行して、肺線維症に有効な治療法の確立を目指して研究を推進する。 令和6年度研究計画では、上皮細胞障害で増加する活性型TGF-β複合体が肺線維症モデルマウスでも増加するのか解析することを想定していた。しかしながら、令和4年度の研究実施状況報告書に記載したように、上皮障害で増加する活性化TGF-βを含む複合体を構成する分子群の同定については、ウシ胎児血清に含まれる変動要因を含めて、線維化機構の分子モデル構築後に進めることとしたため、令和5年度は活性型TGF-βがインテグリン分子を介して増加することを検証した。活性型TGF-β複合体形成にインテグリンがかかわると示唆されたが、他の形成因子や複合体の構成分子は未同定である。したがって、令和6年度は、複合体の構成分子・形成因子の同定を進める。 肺線維症に有効な治療法の確立については、線維化機構にかかわるフェロトーシスが治療標的になり得るとの認識で、我々が同定した新規フェロトーシス阻害剤の実用化を目指す。実用化によって、新規フェロトーシス阻害剤による肺線維症治療の検証が可能になると考えられる。新規阻害剤は疾患モデル動物で薬効が認められたことから、安全性薬理試験、毒性試験、薬物動態試験等の前臨床試験を行い、PMDAレギュラトリーサイエンス戦略相談を経て臨床試験を目指す。令和6年度は開発資金獲得のために、最適な新規化合物選択と安全性・毒性試験を部分的に進める。
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