• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

患者iPS由来腎臓オルガノイドを用いた変異タンパク質の膜移行制御による治療法開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K08332
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分53040:腎臓内科学関連
研究機関熊本大学

研究代表者

谷川 俊祐  熊本大学, 発生医学研究所, 講師 (10726318)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワードネフリン / iPS / 病態再現 / 腎臓オルガノイド / 糸球体 / 多発性嚢胞腎 / 腎臓
研究開始時の研究の概要

腎臓のネフロン(糸球体と尿細管)は生体の恒常性の維持に必須である。ネフリンは糸球体のろ過膜を構成し、その変異はネフローゼの原因となる。一方、ポリシスチンは、細胞の繊毛の膜状に発現しその発現低下は尿細管や尿管に多数の嚢胞形成を誘発し多発性嚢胞腎(PKD)を呈して腎不全となる。本計画では、腎臓の構造と病態を再現できる腎臓オルガノイドを基盤とし、ミスセンス変異を持つネフリンやポリシスチンの膜移行障害を小胞体ストレス応答因子の人為的制御により矯正する技術開発を行い、腎疾患の治療法を開発することを目的とする。本計画の知見は、先天性腎疾患の治療に留まらず、蛋白尿の低減や腎嚢胞軽減にも貢献すると期待される。

研究実績の概要

腎臓は主要機能単位であるネフロン(糸球体と尿細管)によって生体の恒常性を維持している。ネフリンは糸球体のろ過膜を構成する膜タンパク質で、その変異はネフローゼの原因となる。一方、ポリシスチンは、細胞の繊毛に発現する膜タンパク質でその発現低下は尿細管や尿管に多数の嚢胞形成を誘発し多発性嚢胞腎(PKD)を呈して腎不全となる。申請者は、先天性ネフローゼ患者由来のiPS細胞から糸球体を誘導することによって、濾過膜の形成異常を再現し、ネフリンの膜移行障害が疾患の病態であることを証明した(Tanigawa et al. Stem Cell Reports, 2018)。さらに、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者由来のiPS細胞から腎臓オルガノイドを誘導し嚢胞の再現にも成功している(Kuraoka et al. J Am Soc Nephrol, 2020)。本計画では、腎臓の構造と病態を再現できる腎臓オルガノイドの実験系を基盤にして、疾患原因分子であるミスセンス変異を持つネフリンやポリシスチンの膜移行障害を小胞体ストレス応答因子の人為的制御によって矯正する技術開発を行い、腎疾患の治療法を開発することを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本計画にて立案した変異タンパク質の膜移行を効率的にモニターできるiPS細胞の樹立に取り組み、腎臓の主要機能である血液ろ過に重要な糸球体のネフリンタンパク質の膜移行を化学発光によって検知(HiBiT NanoLucルシフェラーゼシステム)できる患者由来iPS細胞の樹立に着手した。計画通り目的のiPS細胞を樹立し、この細胞から作成した腎臓オルガノイドにおいてネフリンと共にHiBITの発現を確認することができた。しかし、ネフリンの膜移行をルシフェラーゼアッセイによって検知できないことが判明した。細胞膜外のネフリンを検知するために11アミノ酸からなるHiBiTのペプチドタグはN末端に挿入しているが、そのことが膜移行には影響しないことをHEK293細胞において確認できていた。しかし、ネフリンの遺伝子変異を修復した患者由来iPSにおいても同様にルシフェラーゼを検知できなかった。そのため、HiBItシステムの代替として腎臓オルガノイド由来の糸球体を薬剤スクリーニングに適用できる培養系の開発に取り組んだ。これまでにiPS細胞から糸球体のポドサイトを高効率に誘導する方法を報告しており(Yoshimura et al., JASN 2019)、この方法を応用して384 well plate上で糸球体を多く含むオルガノイドを二次元で培養しネフリンの膜局在を観察できる方法を開発した。

今後の研究の推進方策

糸球体を多く含むオルガノイドを二次元で培養する方法を開発しつつある。これに並行して患者由来ネフリンの膜移行を促進する薬剤の検索と培養条件の検討により温度条件が患者由来腎臓オルガノイドの糸球体における変異ネフリンタンパク質の膜局在化を促進することを発見した。
これらを基に最適の温度条件でオルガノイドを二次元培養することで薬剤のハイスループットスクリーニングが可能になりつつある。さらに、変異ネフリンタンパク質の温度によるフォールディング調整が膜移行の促進に関与することが示唆されたことから、今後ケミカルシャペロン系の薬剤を中心にスクリーニングすることで効果的にネフリンの膜局在を促進する薬剤を同定できることが期待できる。また、これらの知見を変異ポリシスチンタンパク質の膜移行矯正に応用することで腎嚢胞抑制にも効果が期待できる。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Functional renal collecting ducts from human PSCs2022

    • 著者名/発表者名
      Tanigawa S, Nishinakamura R
    • 雑誌名

      Cell Stem Cell

      巻: 29 号: 11 ページ: 1510-1512

    • DOI

      10.1016/j.stem.2022.10.006

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Generation of the organotypic kidney structure by integrating pluripotent stem cell-derived renal2022

    • 著者名/発表者名
      2.Tanigawa S, Tanaka E, Miike K, Ohmori T, Inoue D, Cai C-L, Taguchi A, Kobayashi A, Nishinakamura R
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 号: 1 ページ: 611-611

    • DOI

      10.1038/s41467-022-28226-7

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 腎臓オルガノイドによるポドサイト研究: その現在と未来2022

    • 著者名/発表者名
      谷川俊祐, 西中村隆一
    • 雑誌名

      腎臓内科

      巻: 15 ページ: 670-676

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Generation of the organotypic kidney structure solely from pluripotent stem cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Tanigawa S, Tanaka E and Nishinakamura R.
    • 学会等名
      International Workshop on Developmental Nephrology (IWDN)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 間質前駆細胞の誘導法確立による腎臓の高次構造構築2023

    • 著者名/発表者名
      谷川俊祐、田中悦子、西中村隆一
    • 学会等名
      第7回黒潮カンファレンス  シンポジウム「次世代ダイバーシティー研究の最前線」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 発生シグナルの同定と制御による腎臓の高次構造構築と病態再現への応用2023

    • 著者名/発表者名
      谷川俊祐、田中悦子、西中村隆一
    • 学会等名
      第46回分子生物学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Generation of the organotypic kidney structure solely from pluripotent stem cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Tanigawa S, Tanaka E and Nishinakamura R
    • 学会等名
      International Society for Stem Cell Research (ISSCR) 2022 Annual meeting.
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 多能性幹細胞由来間質の誘導法確立による腎臓の高次構造構築2022

    • 著者名/発表者名
      谷川俊祐、田中悦子、西中村隆一
    • 学会等名
      第55回日本発生生物学会 シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 多能性幹細胞由来間質の誘導法確立による腎臓の高次構造構築2022

    • 著者名/発表者名
      谷川俊祐、西中村隆一
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] 高次構造を持つ腎臓組織を多能性幹細胞から人工的に作ることに成功

    • URL

      https://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/np128/

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi