研究課題/領域番号 |
22K08333
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
矢野 裕一朗 滋賀医科大学, 医学部, 客員教授 (10586241)
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研究分担者 |
長尾 智晴 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (10180457)
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
長洲 一 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40412176)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 慢性腎臓病 / 深層学習 / リアルワールドデータ / 人工知能 / リアルワールドエビデンス / ドラッグリポジショニング |
研究開始時の研究の概要 |
長年機能している研究基盤、つまり①7年間継続しているJ-CKD-DBの事務局体制、②既 に進行しているフィジシャン/データ・サイエンティスト(矢野ら)とAI研究者(長尾)の 共同研究体制、③既にある豊富な種類のデータ、④同データベースを用いてリアルワールド データからリアルワールドエビデンスを生み出してきた実績を基に、他研究者の追随を許さ ない独創的な医療ビッグデータ研究を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では、包括的な慢性腎臓病(CKD)のリアルワールドデータを活用し、CKD患者の腎機能変化の予測モデルの開発、および腎機能変化に影響を与える薬剤を特定する。その過程では、臨床データや併用疾患の情報を統合し、時間経過を勘案しながら分析を進める。 研究の基盤としては、以下のリソースを利用している:①日本腎臓学会が主導する約10年間のレジストリデータベース(J-CKD-DB)、②医師やデータサイエンティスト(矢野ら)、AI研究者(長尾ら)との協力体制、③多様な既存のビッグデータ、④リアルワールドデータからエビデンスを生成する実績。2022年度には、研究実施のための倫理委員会の承認を得て、2023年には解析が概ね終了した。特に、腎機能指標であるeGFRの予測において、従来の線形重回帰分析に比べ、ニューラルネットワークやGated Recurrent Unit (GRU) -D (decay) :GRU-Dモデルを使用した深層学習手法の方が予測精度が高くなるかを検証した。GRU-Dは、データの欠落や時系列の不規則性を効果的に扱えるため、精度の向上が期待される。また、薬剤に関してはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の腎機能への悪影響が示唆された。
2023年度には新たな研究領域として、生成系AIを用いた研究を開始した。この研究では、高血圧に関連する一般的な患者からの質問に対するChatGPTの反応の適切性を評価し、特に日本語と英語での応答品質を比較した。ChatGPT-4を使用して、高血圧患者からよく受ける質問を日本語と英語で生成し、各言語から20の質問を選定。これらに対する応答を高血圧や腎臓病の専門医が評価し、20の質問中17が適切と認められた。この結果から、対話ベースの生成系AIが高血圧管理の患者教育を強化し、医師との対話をサポートする可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年には研究解析を終えて論文の執筆に入った。さらに、新しい研究領域として生成系AIを活用した研究も進め、その成果を「Hypertension」誌(2024年1月号、81巻1号、e1-e4ページ)に報告した。2024年度は最終年度にあたり、研究成果を国際的な学術誌に投稿するほか、この研究から新たな課題も明らかになったため、引き続き研究を進めための準備をする。データ駆動型の腎臓病研究およびその社会実装に向けた重要なステップとなった年になったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では2023年度に得られた研究成果を国際的な学術誌に投稿し、出版を目指す。これまでのところ、ニューラルネットワークやGated Recurrent Unit (GRU) -D (decay) モデルを用いた深層学習手法を多く試行したが、従来の統計学的手法である線形重回帰分析と比較して、著しい精度の向上は確認されていない。これは、電子カルテのデータのみを使用した将来の腎機能予測手法の限界を示唆していると考えられる。今後、患者の病院外での日常生活におけるデータ(患者の生活習慣データ:食事、運動、睡眠パターンなど、社会経済的ステータスなど)を組み合わせることで、腎機能予測の精度向上が期待できる。この新たな仮説を証明するためにも、新たな研究資金(例えば科研基盤B)の獲得にトライする。その際、2023年度に得られた生成系AI研究の成果を活かし、生成系AIを取り入れたデータ駆動型の腎臓病研究をさらに推進し、その社会実装を加速させる計画である。
また、本研究ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)がCKD患者の腎機能変化に影響を与える可能性が示唆さた。令和6年度では傾向スコア分析を用いて交絡因子を調整し、PPIの影響をより詳細に調査する。さらに、XGBoostなどの機械学習手法を活用して、腎機能に影響を与える薬剤の相対的重要度を定量化する。これにより、CKD患者の腎機能変化に寄与する薬剤の同定をより網羅的に行い、精度の高い分析を目指す。
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