研究課題/領域番号 |
22K08345
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
釘田 雅則 藤田医科大学, 病態モデル先端医学研究センター, 講師 (50440681)
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研究分担者 |
山本 康子 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00331869)
長尾 静子 藤田医科大学, 病態モデル先端医学研究センター, 教授 (20183527)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 多発性嚢胞腎症 / キヌレニン / キヌレン酸 / 芳香族炭化水素受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らの研究により、多発性嚢胞腎症(PKD)の腎臓において、キヌレニン/キヌレン酸 - aryl hydrocarbon receptor(AhR)経路が動いていることが示唆された。そこで、PKD責任遺伝子とキヌレニン、もしくはキヌレン酸変換酵素のダブルノックアウトマウスを作成することにより、キヌレニン/キヌレン酸 – AhR経路がPKDの病態に与える影響を検証する。さらに、得られた知見を元に、キヌレニン/キヌレン酸を標的とした薬剤をPKDモデルマウスに投与し、新規PKD治療薬になり得るかを検証する。
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研究実績の概要 |
多発性嚢胞腎症(PKD)は腎臓に嚢胞が多発する遺伝病であり、その責任遺伝子の1つとしてPKD1が報告されている。PKDの治療薬としてトルバプタン(商品名:サムスカ)が承認されているが、この薬は多尿という副作用があるため、別の薬の開発が望まれている。申請者らは、2種類のPKDモデル動物の腎臓にて、トリプトファン代謝経路の産物が有意に増加するという知見を得たことから、この経路を標的にした新規PKD治療薬の開発を目指している。 トリプトファンは、キヌレニンに代謝され、キヌレニンはキヌレン酸、キサンツレン酸、キノリン酸に代謝される。キヌレニンからキヌレン酸への変換はキヌレニンアミノトランスフェラーぜ(KAT)2が関与する。そこで、PKDモデルマウスであるPkd1-RCマウスとKat2ノックアウトマウスと交配を行い、キヌレニンがキヌレン酸に代謝されなくなることによりPKDの病態にどのような影響を与えるかを解析することにした。現在、Pkd1-RC/+ - Kat2-/-が得られたところである。引き続き交配を行い、Pkd1-RC/RC - Kat2-/-マウスを得る。その後、腎臓の病態やトリプトファン代謝産物の解析を行い、PKDにおけるキヌレン酸の役割を解析する。 PKDの治療薬を開発するためには、薬剤にてKAT2の機能を阻害する必要がある。KAT2阻害薬は存在していなかったが、近年、共同研究者が化合物スクリーニングによりKAT2阻害薬を発見した。この新規KAT2阻害薬を用いた投薬実験を行うために、Pkd1-RC/RCマウスの規模拡大をおこなってきた。次年度には、投薬実験に必要なPkd1-RC/RCマウスの匹数が揃う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者らと同様にPKDにおけるトリプトファン代謝経路に着目した論文が2023年に報告された。この論文はPkd1-RC/RCマウスを用いてトリプトファンからキヌレニンヘの代謝に着目していた。申請者らはキヌレニンからキヌレン酸への代謝に着目しており着眼点は異なるが、実験に使用したPkd1-RC/RCマウスに関しては本研究に対しても有益な情報が多かった。そこで、本研究で使用するマウスをPkd1-RC/RCマウスに変更することにした。 昨年度、CRISPR-Cas9システムによりPkd1-RC/+マウスを作製した。昨年度から規模拡大を目指しながら、維持繁殖を行い、今年度で投薬実験に必要なまとまった匹数のPkd1-RC/RCマウスが得られるだけの規模になった。次年度はKat2阻害薬の投薬実験を行う予定である。Pkd1-RCマウスの規模拡大を行いながら、Pkd1-RC/+マウスとKat2-/-マウスとの交配を行い、Pkd1-RC/+ - Kat2-/-マウスまでは得ることが出来ている。引き続き交配を行い、Pkd1-RC/+ - Kat2-/-マウスを得る予定である。 Pkd1-RCマウスは腎臓に影響があるためか出産時や育児中に母親マウスが亡くなることが起こる。また、Kat2-/-マウスは鬱様行動を取るため、繁殖効率が悪い。モデル動物の変更だけでなく、使用するマウスの繁殖効率が悪く、増えにくいというのも研究が遅れている原因の一つと考える。
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今後の研究の推進方策 |
PKDにおけるキヌレン酸の役割を解析するために、Pkd1とKat2のダブルミューテーションマウスの作製を行っている。Pkd1-RC/+ - Kat2-/-マウスまで得られているため、引き続き交配を行い、Pkd1-RC/RC - Kat2-/-マウスを得る。その後、腎臓の病態やトリプトファン代謝産物の解析を行い、PKDにおけるキヌレン酸の役割を解析する。 KAT2阻害薬の投薬実験を行うために、まとまった数のPkd1-RC/RCマウスを用意する。4週齢から50週例までKat2阻害薬を経口投与する。腎臓の病態やトリプトファン代謝産物の解析を行い、Kat2阻害薬がPKDの治療薬になり得るかを検討する。 Pkd1-RC/RCマウスにおける腎臓の病態に明らかな差が出るのは9ヶ月齢以降になる。そのため、KAT2阻害薬の効果がわかるのも時間がかかる。申請者らはPKDと同じく腎臓に多数の嚢胞を形成するネフロン癆のモデル動物であるpcyマウスの腎臓においてもキヌレン酸が増加している知見を得ている。このマウスは4週齢から病態を示すため、投薬期間も最短で10週齢、最長でも20週齢とPkd1-RC/RCマウスに比べて、投与期間は短くて済む。また、PKD以外の嚢胞を形成する病気にも同様の効果を示すかどうかを検証することは、治療薬開発において有益な情報になる。そこで、pcyマウスにKAT2阻害薬を投与して、腎臓の病態やトリプトファン代謝産物の解析を行い、その効果を検証する予定である。
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