研究課題
基盤研究(C)
糖尿病性腎臓病は我が国の透析導入原因疾患第一位であり、その成因の解明と新たな治療法の確立が急務の課題となっている。本研究では、リンを過剰摂取をすることが糖尿病性腎臓病の発症、進展につながることを遺伝子改変モデルや細胞実験を通して明らかにする。本研究の成果によって、リンの摂取を制限する食事療法によって糖尿病性腎臓病が抑制される可能性があることを示し、糖尿病の食事療法に新たな選択肢を提唱したい。
今年度は動物実験を主体に研究を遂行した。マウスを通常食群と高リン食群、そして高リン食+Rho-kinase阻害薬群に分けて解析を行った。Rho-kinaseは低分子量GタンパクRhoのエフェクターであり、糖尿病性腎症をはじめとしたCKDの病態形成に重要な役割を持つ細胞内シグナルである。高リン食負荷を開始してから16週後に腎組織から切片を作製し、糸球体および尿細管、尿細管間質線維化について検討した。糸球体に関しては高リン食負荷群においても構造上の変化は認められなかった。一方で尿細管については萎縮が認められ、リン負荷による腎障害は主に尿細管に生じることが確認された。これは、リン負荷によって尿細管でのリン排泄が亢進していることが関係していると考えられた。Masson染色を行い、主に線維化について高リン食群では、通常食群と比較して尿細管間質の著明な線維化を認めたが、Rho-kinases阻害薬を投与した群においてはこれらの線維化が抑制されていた。体重や腎重量に関しては、群間差を認めなかった。また、血中リン濃度や尿細管におけるリン排泄には有意差を認めなかった。また、血中FGF23や副甲状腺ホルモンの値にも群間差は認めなかったことから、Rho-kinaseはリン代謝そのものには影響を与えないことが明らかになった。以上のことから、リン負荷によって腎線維化が促進されること、その過程にRho-kinaseの活性化が関与していることが示唆された。しかしながら、①リン負荷がRho-kinaseを活性化するメカニズム、②リンによって誘導される尿細管間質線維化のどの段階にRho-kinaseが関わっているのか、についてはさらなる検討が必要である。
3: やや遅れている
動物実験を実施したが、非糖尿病モデルでの検討が中心であり、今後糖尿病モデルでの検討が必要である。また、動物実験で得られた事象に関するメカニズムの解析が終了していないため、次年度の課題としたい。
次年度は動物実験で得られた事象に関するメカニズム解析を行うとともに、リン負荷が糖代謝に与える影響も含めて、糖尿病モデルでの検討を実施する予定である。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 4件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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