研究課題/領域番号 |
22K08349
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 規利 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90716052)
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研究分担者 |
前田 佳哉輔 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00836306)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
水野 正司 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (20303638)
古橋 和拡 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50835121)
小杉 智規 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90584681)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 非典型溶血性尿毒症症候群 / aHUS / エクソソーム / エクリズマブ / 血管内皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
aHUSは血液中ではなく、血管内皮細胞膜上での無秩序な補体活性化が問題であり、単純な採血で評価できないところに検査開発の難しさがある。我々は、2020年より開始したaHUS全国調査研究で登録のあった症例の血漿から、細胞外小胞(Exosomes)を精製し、Exosomes上の補体関連タンパクを測定し、細胞膜上の補体活性を評価する。またex vivoでaHUS患者の血漿と血管内皮細胞株との反応系にエクリズマブを添加することにより、実際に薬剤を投与する前に、治療反応性を見極める。
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研究実績の概要 |
我々は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の疾患事務局を、2020年より東京大学から引き継ぎ、医療施設からの症例相談を受けるとともに、奈良県立医科大学にて開発されたヒツジ赤血球溶血試験(補体機能検査)を行ったり、抗H因子抗体(抗CFH抗体)価を測定するなどして研究、臨床の両面から知見を蓄積してきた。2020年度は62症例の臨床相談を受け、91検体の解析を行った。2021年度は65症例の臨床相談を受け、81検体の解析を行った。そして本研究を開始した2022年度は1月までに66症例の相談、77検体の解析を行った。 当方で33例のaHUSの診断に至り、内補体関連遺伝子の病的バリアント保有例は19症例、バリアント未検出は10症例、未検査4症例であった。病的バリアント保有割合は65%(19/29)という数字は、過去の報告と同等~やや高めの値で、概ね妥当な数値と考えられる。 19症例のバリアントの内訳は、CFH:7例、C3:9例、CD46:3例、CFI:1例(1例のC3, CD46重複例を含む)であった。世界的にはCFHの病的バリアント保有例の割合が高いが、本邦ではC3、特にC3 I1157Tバリアントの割合が高いことは、既に報告(Clin Exp Nephrol . 2018 Oct;22(5):1088-1099.)があり、同じ傾向であった。 上記の様に、疾患の概要、特に本邦における特徴が明らかになっている。課題の1つであるヒツジ赤血球溶血試験に関しては、CFH病的バリアント保有例の7例の内、6例で測定が行われ5例で陽性と診断され、遺伝学的検査の前にaHUSへの診断につなげることが出来た。一方で他の遺伝子バリアントでは、C3 I1157Tバリアントの1例で陽性になったのみで、他のバリアントでは陰性となり、aHUSの早期診断には繋がらず、課題の残る結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
aHUSは希少疾患であり、本研究(非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)全国調査研究)は、現在日本で行われているaHUSの最大のコホート研究であると言える。上述のように33症例の診断に寄与してきた実績があり、本年度の症例数も例年と同じ水準~やや多めの数を記録している。aHUSのみならず他のTMA(STEC-HUS, TTP, 二次性TMA)の症例も含まれていることが、本コホート研究の強みである。つまり、aHUSの診断に寄与する検査方法を、他のTMAを引き起こす疾患と比較することができる。 現状では血漿中のC5b-9は、エクリズマブ治療を行うと完全に抑制されるが、血漿交換を数回行った状況では、そこまで抑えられていないことがわかっている。また興味深いことに未発症者の検体でもC5b-9は基準値を上回っており、あきらかなTMAによる臓器症状がない状況においても異常値を取っていることの意義は、今後検証をしていく必要があるものと思われる。また、aHUS以外のTMAであるTTPにおいても血漿C5b-9が異常高値であったことは、C5b-9の診断的価値の検討に置いて大切な結果である。つまり補体が一義的に関与するaHUSのみならず、別要因で血管内皮細胞障害を引き起こす疾患でも、二次的に補体の活性化が起きている可能性は示唆される。これら問題点に置いて、更に症例数を重ねて検証を続けていく。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には現在のaHUS疾患事務局を通した症例の解析を続けていく。名古屋大学医学部腎臓内科学のホームページにおいて事務局の案内をするとともに、動画などの説明資材を用いて疾患の啓蒙を続ける。 目的の検査に関しては、ある程度の数のaHUS症例、及び、STEC-HUS, TTP, 二次性TMAの症例が蓄積した時点で、更にエクソソームの抽出を行う。またin vitroにおけるエクリズマブ抑制試験は、ヒツジ赤血球溶血試験においては既に数多く行っている。フローサイトメトリーによる解析を通して、生体内における補体活性化の量的解析、つまり定量性をもたせることによって、実臨床に置いて発症、再発診断、治療効果判定、のみならず抗C5抗体薬(エクリズマブ、ラブリズマブ)投与前に治療効果予測を行えるようになることは、医療資源の適切な利用に関わる問題として非常に重要な知見となると考える。
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