研究課題/領域番号 |
22K08352
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西 愼一 神戸大学, 医学研究科, 名誉教授 (70251808)
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研究分担者 |
藤井 秀毅 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (60416211)
後藤 俊介 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40457057)
河野 圭志 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40533724)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 漢方薬 / 慢性腎臓病 / 腎機能 / 利尿効果 / 蛋白尿 / 糖尿病性腎臓病 / SGLT2阻害薬 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病進行を抑制する薬剤として、降圧薬であるアンジオテンシン受容体拮抗薬、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が有効とされている。これらの薬剤は、腎機能(糸球体濾過量; GFR)の低下速度を緩徐にする効果はある。しかし、腎機能を回復させるまでの効果は認められない。真武湯、防已黄耆湯、五苓散などの漢方薬は古くから腎臓保護効果のある漢方薬として知られている。近年、漢方治療の関心が高まる中、これらの薬剤の腎機能低下抑制効果も報告されている。我々は、SGLT2阻害薬に防已黄耆湯、五苓散などの漢方薬を併用することで腎機能回復が得られるか、基礎実験と臨床試験で実証しようと考えている。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性腎臓病の新規治療法の探索である。腎機能を改善させる、つまり糸球体濾過量(eGFR)を上昇させることが可能な薬剤は登場していない。しかし、漢方薬の一部には腎機能改善効果、尿蛋白減少効果が実験的あるいは臨床的に報告されてきた。 そこで本研究では、漢方製剤である五苓散と黄耆(アストラガルス)を使用した基礎的実験と人を対象とした臨床実験を平行して進める形で研究を実施した。これらの漢方薬にどのような腎保護効果があるのか、基礎実験と臨床研究の両面から研究を遂行して解析した。特に、基礎実験は五苓散の尿細管機能への影響を検討するため各種分子マーカーの変動を追跡した。また、近年注目されている腎機能保護薬であるSGLT2阻害薬と漢方薬との併用効果も検討することを計画している。 初年度及び次年度は漢方薬単独の腎機能保護効果の確認を行った。基礎実験においては、ラットCKDネフローゼモデルに対して五苓散を投与し、腎機能改善と利尿効果が認められ、その機序としては、Na利尿を介さない自由水排泄機序が主に働いている利尿効果であることを明らかにした。更に、レニン・アルドステロン系、アクアポリン系への作用を検討している。 人を対象とした臨床試験では、五苓散によりCKD症例で尿蛋白減少効果があることが確認された。また、黄耆煎じ薬をCKDG3レベルの症例に投与して、腎機能、尿所見などの変化を観察したが、約16例の症例でeGFRの改善がみられることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究 ネフローゼモデルに対する五苓散の効果 基礎研究としては、5/6腎摘CKDモデル群、左片腎摘群にドキソルビシン投与(5mg/kgBW×2回)を投与しネフローゼモデル群を作成し、CKD+vehicle群B0、CKD+治療群B1として五苓散500mg/kg/day投与、CKD+治療群B2として五苓散1000mg/kg/day投与、ネフローゼ群+vehicle群C0、ネフローゼ+治療群C1として五苓散500mg/kg/day、ネフローゼ+治療群C2として五苓散1000mg/kg/dayの6群での検討を行った。ネフローゼモデル群では、C0群と比較し、C2群では有意に尿量の増加を認めた。C0群と比較し、C2群では有意に尿浸透圧の低下を認めた。インピーダンスによる評価では、統計学的に有意差は認めないものの総水分量、細胞外液量は五苓散投与により減少している傾向にあった。五苓散によりネフローゼモデルにおいては尿量の増加、細胞外液量の低下、尿浸透圧の低下が得られ、これはNa利尿を介さない機序で主に自由水排泄によるものではないかと推測された。 臨床研究 慢性腎臓病に対する五苓散・黄耆の臨床的な効果 当科通院中の患者で、eGFR≧15mL/min/1.73m2かつ五苓散投与前および投与2ヶ月後のeGFRおよび尿蛋白量のデータがある患者10名を対象とした。尿蛋白量は投与前に比べ投与後で有意に低下した(中央値(四分位)、投与前1.51(1.04-2.81)g/gCr、投与2ヶ月後1.26(0.55-1.35)g/gCr、P=0.037)。この他に、黄耆煎じ薬をCKDG4及びCKDG5の症例に投与し、eGFRの変化を見ている15例の症例がある。現在観察中であるが、少なくとも6カ月以降も平均してeGFRが5.0 ml/min/1.73m2以上上昇していることを確認した。 以上の成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究では、五苓散の利尿作用の分子メカニズムをさらに検討する予定である。特にレニン・アンジオテンシン系、バゾプレッシン受容体への影響を確認する予定である。人を対象とした研究では、尿蛋白減少効果に関して背景に酸化ストレス軽減が関与していないか検討する予定である。 基礎研究及び人を対象とした研究とも、研究成果を英文論文化を進めている。本年度中の投稿を目指している。また、これまでも学会などで成果を発表してきたが、成果発表を継続する予定である。
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