研究課題/領域番号 |
22K08363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
市村 浩一郎 順天堂大学, 医学部, 教授 (10343485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 糸球体老化 / アミロイドーシス / ポドサイト / FIB-SEM / アレイトモグラフィー / 老化モデル動物 / 糸球体 / 腎臓老化 |
研究開始時の研究の概要 |
糸球体の構造老化を抑制することで、健康寿命の延伸が期待されるが、糸球体老化抑制法の開発に当っては幾つかの障壁がある。その一つが、ヒトやモデル動物における糸球体老化プロセスの理解が不十分な点である。さらに別の問題として、老化研究に頻用されるマウスは老化に伴い高度な糸球体アミロイドーシスを発症することから、マウスはヒトの糸球体老化プロセスを再現せず、適切な糸球体老化モデル動物の探索が必要である。本研究の目的は糸球体老化に関する2つの問い(1)ヒトの糸球体における構造老化の実態・2) ヒトの糸球体老化を再現するモデル動物)を解明し、糸球体の構造老化抑制法を開発するための研究基盤を確立することにある。
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研究実績の概要 |
マウスの代表的な系統(C57BL等)は全て加齢に伴い糸球体アミロイドーシスを呈し、高度なメサンギウム拡大を示すのに対し、ラット(Wistar, SD)は2年齢においても糸球体アミロイドーシスを呈することはなかった。2年齢ラットでは、ヒトの老化糸球体でみられる変化(分節状の効果病変、糸球体基底膜の肥厚、微小癒着病変など)が確認され、ラットがヒトの糸球体老化を再現することが確認できた。そこで、ラットにおいて、糸球体の各コンポーネントの老化形態をFIB-SEMによる連続断面観察と3D再構築により検討したところ、ポドサイトにおいて、老化に伴う独特な変化が生じていることが判明し、この変化の程度を評価することが糸球体の老化度を判定するうえで有用であることが分かってきた。また、ラットで確認した老化変化がヒトの自然老化腎でも生じていることを確認するため、高齢者の手術検体の収集を開始し、良好な電顕サンプルが複数確保でき、解析を進めている。 本年度に明らかになった研究遂行上の問題として、老化糸球体(ポドサイト)は肥大化ししており、FIB-SEMで観察できるボリュームに収まらず、老化変化の全容を捉えきれないことが分ってきた。そこで、アレイトモグラフィー(糸球体丸ごとを完全連続切片化して画像化する手法)による解析基盤をあらたに確立し、糸球体上にある任意のポドサイトの全体像を把握できるようになった。これにより、ラットおよびヒトにおける糸球体(ポドサイト)の老化構造を完全に把握できるようになり、現在主にアレイトモグラフィーにより、老化構造のカタログを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの糸球体老化モデルとしてラットが適切であることが早期に判明したため、糸球体の老化構造自体の解析に速やかに進むことができ、ポドサイトにおけるユニークな老化構造を発見できた。また、アレイトモグラフィーによる効率のよい解析基盤が確立できたが、これは代表者らの研究室において新型のダイヤモンドナイフデバイスを実用化できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの糸球体老化を明らかにするための基盤として、本年度において若年者の糸球体構造をFIB-SEMによる連続断面観察と3D再構築により解析したところ、ヒトにおける糸球体とポドサイトの構造が実験動物とかなり異なることが見えてきており、今後の老化構造の解析においては、老化モデル動物との種差を念頭におく必要があることが分かってきた。 R6年度以降は、主にヒト糸球体の老化構造を明らかにし、カタログ化することを目指す。なお、FIB-SEM法に加え、アレイトモグラフィー(糸球体を丸ごと連続切片化して画像化する手法)により糸球体の全体にわたって構造老化を評価してゆく。特に、血管極や尿細管極のような従来の手法では観察が困難な部位についても解析を行ってゆく。予備的な検討により、糸球体全体の構造評価には組織透明化法の活用も有用であることが分かり、この活用も進めてゆく。
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