研究課題/領域番号 |
22K08376
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
知野 剛直 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (20521397)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | デルモカイン / 魚鱗癬 / 皮膚胎児治療 / 遺伝子治療 / 再生治療 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、研究代表者らが独自に作製したDMKN欠損マウスの胎仔期にDMKNリコンビナント蛋白投与やDMKN発現自己末梢血幹細胞により、新生仔期にDMKN強制発現骨髄細胞を移入する。これにより、出生後に魚鱗癬様皮膚と皮膚バリア機能の改善が得られるか、その効果が持続するかどうかを検証する。胎仔へのDMKN投与は、3種類の異なる投与法(循環系内、胎仔腹腔内、胎仔皮下)で施行する。皮膚のDMKN発現量と皮膚症状の改善度から、標的分子の高い導入効率と免疫寛容が得られる投与法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では、重症ヒト常染色体劣性遺伝皮膚病の胎児治療の実験的疾患モデルとして,我々が作成したデルモカイン(dermokine; DMKN)欠損マウスを用いて研究を行っている。DMKNは表皮の上層に発現する分泌型糖蛋白であり、DMKN欠損マウスは、生後より表皮内セラミドが減少し、魚鱗癬様の角化と皮膚バリア機能の低下を生じる。ヒトにおけるDMKNの役割は未解明であるが、このマウスは低湿度の環境下では致死的な脱水をきたすため、本研究に最適な重症魚鱗癬モデルとして使用している。R4年は、マウスDMKNα蛋白質精製に時間を費やしたが、研究に使用できるマウス由来蛋白質を確保できた。現在、この蛋白質をDMKN欠損マウスから単離した表皮細胞の培養上清に添加することで、正常の角化プロセスに復帰できるのか実験を行っている。まだ、条件設定段階である。このin vitro実験が終わり次第、動物実験に移行する予定である。 今後の実験方法:DMKN欠損マウスの胎仔期に、卵黄嚢静脈を介して当科で新たに作成したリコンビナントDMKNα蛋白や骨髄観葉系幹細胞を投与し、角化に関わる皮膚構造タンパクを再構築するか検討する。DMKN欠損マウスの胎仔期に3系統のDMKN蛋白の投与法(①マウス卵黄嚢静脈、②腹腔内、③皮下投与)を試み、それぞれの導入効率と治療効果を評価する。投与するのは、rDMKNα蛋白や骨髄観葉系幹細胞である。 解析方法・評価方法:新生仔期から自然死まで観察し、治療後のDMKN欠損マウスの表現型を、形態学的、組織学的、さらに電子顕微鏡的に解析する。皮膚におけるDMKNの発現、バリア機能、角化マーカーやサイトカインの発現量、浸潤細胞を解析する。得られた結果をもとに、胎仔期免疫寛容の誘導や治療効果などが他の皮膚難治性疾患の常染色体劣性皮膚遺伝病マウスモデルにも応用が可能かどうかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新たに精製したDMKNα蛋白の投与条件設定に時間がかかっている。また、この新規に作成したDMKN KOマウスは、冬の低湿気状態になると新生児の生存率が極端に落ちるため、冬の間は、新生児が育たず新たな動物実験用のKOマウスが確保できない。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らは、独自に作成した胎仔期から顆粒層などの表皮の肥厚や免疫異常を認めて、出生後に顕著な落屑やバリア機能異常を伴うDMKN欠損マウスを、胎仔治療により出生後の皮膚バリア機能や免疫異常の改善を目指して、現在研究を進めている。まずは、①骨髄間葉系幹細胞をマウス胎仔循環系に直接投与することで、生着した投与細胞が治療効果を有するのか検討する。②当科で新たに精製したrDMKNα、αβγ蛋白質をマウス胎仔に投与予定である。 解析方法:①マウス新生仔の皮膚バリア機能や角化異常の解析・HE染色による組織学的検討: 顆粒層の肥厚、表皮の肥厚など・電子顕微鏡による検討: ケラトヒアリン顆粒、周辺帯、ケラチン線維束、角層のコルネオデスモゾームなどの形態学的異常・経皮水分蒸散量、角質水分量、角層透過性、天然保湿因子などの測定・免疫染色、real time PCR、Westernblotーフィラグリン、ロリクリン、インボルクリンなどの発現。②マウス新生仔の皮膚免疫の解析。・免疫染色による組織学的検討: 表皮内のγδT細胞、Langerhans細胞の数。真皮のT細胞や樹状細胞の数・フローサイトメトリーによる検討: 個々のサブセットの活性化やサイトカイン産生能。 以上、順次実験を進める予定である。
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