研究課題/領域番号 |
22K08377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大沢 匡毅 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10344029)
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研究分担者 |
矢澤 重信 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (30392153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 尋常性白斑症 / メラノサイト / 自己免疫 / Npy / モデルマウス / 尋常生白飯 / 色素細胞 / ニューロペプチドY / 自己免疫疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
皮膚には様々な細胞が存在し、それらが多様な相互作用を起こすことによって皮膚の恒常性が保たれている。このような相互作用の分子的な仕組みを理解するために、皮膚からさまざまな系譜の細胞を分離し、それらの細胞の遺伝子発現解析を行った。その結果、ニューロペプチドYが色素細胞に特異的に発現していることを発見した。ニューロペプチドYは神経伝達物質であるが、免疫系の細胞にも作用し、免疫系を制御する作用を持つことが知られている。そこで、本研究では自己免疫反応によって色素細胞が消失してしまう病気である尋常性白斑症に注目し、尋常性白斑症発症の機序とニューロペプチドY の関連性について探索する。
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研究実績の概要 |
尋常性白斑はメラノサイトが消失してしまうことにより皮膚に白斑が形成される疾患であり,白斑という外見上の病変によって患者のQOLが著しく低下してしまうことが問題である。尋常性白斑の病態には環境的要因,メラノサイトの異常,および免疫的な素因等が複合的に関与していると考えられているが,このような高次元な現象を生体外で再現することは困難であり,その病態の理解にはモデル動物を用いたin vivoレベルでの解析を行うことが必須である。しかし,現存の尋常性白斑症モデル動物には様々な問題点があり,研究の推進の障害になっている。 我々は、マウスの皮膚を構成する細胞のトランスクリプトーム解析を行い、神経ペプチド類のニューロペプチドY(Npy)遺伝子がメラノサイト特異的に強発現していることを見出した。NPYは高次神経機能を制御する神経伝達物質であるが、メラノサイトに対するNPYの生理役割は理解されていない。一方、NPY遺伝子座に存在する一塩基多型(SNP)が尋常性白斑発症のリスク因子であることが示されており、また、NPYが免疫系を制御する作用を持つことから、NPYが尋常性白斑の病態に何らかの役割を果たしている可能性が考えられる。そこで、本研究では、尋常性白斑の病態に対するNPYの生理的な作用を解明することを目的に研究を進める。NpyのノックアウトマウスやNpyを強制発現させたトランスジェニックは尋常性白斑様の異常を示さないことがわかっている。そこで、尋常性白斑病態を発症するモデルマウスを作製するとともに、モデルマウスを用いて既存のNPYアゴニスト/アンタゴニストが尋常性白斑の病態進展にどのような作用を持つのかを解析する。得られた成果をもとに、既存のNPYアゴニスト/アンタゴニストについて尋常性白斑治療薬へのドラッグリポジショニングの可能性を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は常性白斑症発症に対するNPYの生理的な作用を探索するための準備を行うための研究を行なった。まず、CRISPR/Cas9システムを用いて、Npyの遺伝子座に緑色蛍光タンパク質(mClover3)をノックインすることによって、Npy遺伝子を破壊した上で内在性のNPYの発現をmClover3レポーターでモニターすることができるNpy-mClover3ノックイン・ノックアウトマウスを作製した。作製したマウスについてmClover3レポーター分子の発現を調べたところ、既知のNpy遺伝子発現部位においてレポーター分子の発現が認められ、本レポーターマウスの有効性が確認できた。 近年、マウスに抗CD4抗体を投与することによって制御性T細胞を除去した後にメラノサイトに対する自己免疫性反応を惹起することによって、容易に尋常性白斑様の病態を発症するマウスを作製することが可能になることが報告されている。しかし、このような抗体投与を行うためには、大量の抗体を入手する必要があり、財政的に実験の実施が困難である。そこで、このような問題点を解決するために、自前で組換え型抗体を生産することにした。また、制御性T細胞を効率的に除去するために、抗CD4抗体に加え、抗CD25抗体や抗PD1抗体の使用も検討することにした。このために、まずこれらのモノクローナル抗体をコードする遺伝子を人工合成し、抗体遺伝子を強制発現するためのベクターを構築して、293T細胞にトランスフェクションすることによって換え型の各種抗体を得ることができた。今後これらの抗体を用いて、迅速かつ効率的に尋常性白斑様の病態を発症するマウスを作製する手法を開発する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Npy-mClover3レポーターマウスを使用して、メラノサイトにおけるNpyの発現パターンの変化の解析を行う。これまでの解析結果から、Npyは正常なマウスのメラノサイトに強く発現していることがわかっている。一方、紫外線や化学物質によって遺伝子障害ストレスや酸化ストレス、小胞体ストレスを与えた時に、Npyの発現がどのように変化するのかは明らかにされていない。また、Npyペプチドは、通常は細胞内に顆粒状に存在し、何らかの刺激に応じて細胞外に分泌されることがわかっている。メラノサイトについても、どのような仕組みによって細胞外へNpyペプチドが放出されるのかを明らかにする。尋常性白斑様の病態を発症するマウスを効率的に作製する方法を構築するために、抗CD4抗体を投与しB16メラノーマ細胞を用いてマウスの免疫を感作する既知の方法に加え、抗CD25抗体や抗PD1抗体を使用して自己免疫反応を惹起する方法も検討する。また、自己反応性のPmel反応性TCRを発現するトランスジェニックマウスを入手・活用することによって、より強力にメラノサイトに対する自己免疫反応を誘導することも考慮し、尋常性白斑様の病態を発症するマウスを作製する。尋常性白斑様病態を誘導する方法ができれば、速やかに、Npy-mClover3レポーターマウスに対し尋常性白斑様病態を誘導させ、Npyの欠損が尋常性白斑様病態の発症に及ぼす影響を解析する。
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