研究課題/領域番号 |
22K08379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山中 恵一 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70314135)
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研究分担者 |
近藤 誠 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (40464169)
波部 幸司 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (50324538)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 尋常性乾癬 / アトピー性皮膚炎 / サイトカイン / 精子形成不全 / 動脈硬化症 / 注意欠如/多動症(ADHD) / 注意欠如/多動症(ADHD)様症状 / 慢性炎症 / 精子形成不全・精子運動能低下 |
研究開始時の研究の概要 |
難治性皮膚疾患を含む慢性炎症は精子形成・運動能の低下のリスク因子である。また尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎では脳・心血管イベントの発症が高まる。さらには疫学的にアトピー性皮膚炎ではADHD症状が増加する。しかし詳細な病態の解明や媒介因子の解析の報告は無い。 本研究では炎症性皮膚疾患や自己炎症症候群にも随伴する精子形成・運動能異常、動脈硬化症、及び注意欠如/多動症(ADHD)様症状の本態を解明し、その治療法を提唱する。
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研究実績の概要 |
皮膚は免疫組織としては最大の臓器の一つであるため尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚の慢性炎症により皮膚局所から産生されるサイトカインが生体の免疫に与える影響は甚大であり内臓臓器に影響を及ぼすと思われるが、適切なモデル動物が少なく炎症皮膚由来の持続性サイトカイン血症がもたらす臓器障害を調べた報告は少ない。我々は自ら作成した自然発症皮膚炎モデルマウスを用いて、皮膚炎発症後に皮膚炎症病巣部から産生されるIL-1, IL-17や他の炎症性サイトカインにより、全身の炎症、特に非アテローム性動脈硬化・脂質代謝異常に加えて、アミロイドーシスを生じるに至る可能性を検討し、これら内臓病変の一部が抗IL-1αβ抗体の投与により回避でき、治療戦略を作成できる可能性を証明し報告した。そして乾癬やアトピー性皮膚炎が単に皮膚のみに影響を与えるに止まらず、心・脳血管病変にも深く関与することを証明し“Inflammatory Skin March”という概念を提唱した。更にはPETによる解析を行い皮膚炎マウスでは脳のFDG(グルコース)取り込みが低下するという報告や、持続する皮膚炎症にて内臓脂肪の炎症や骨粗鬆症も生じる可能性を報告した。本研究では、慢性難治性皮膚疾患に合併する精子形成不全・精子運動能低下、動脈硬化症、注意欠如/多動症(ADHD)様症状の病態を解明する。また関与する炎症性サイトカインの同定、媒介する因子の同定、更には抗サイトカイン抗体や新規の治療薬の有用性についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定項目の大部分が完成に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 慢性炎症に伴う精子形成不全の評価と抗体・阻害剤投与にての治療; 精子の評価として精巣上体尾部より抽出した精子の所見(総精子濃度、精子運動率、奇形率)、生存率(TO/PI染色)、TUNEL染色による精子DNA断片化率の測定(蛍光顕微鏡とFACS)、in vitroでの受精能力評価(CTC/ヘキスト染色、蛍光顕微鏡)、先体反応評価を行う。 2) 動脈硬化症の病態解明と治療; 動脈硬化に密接に関与し硬化を媒介すると考えられる遺伝子が5因子見つかりRT-PCRでもこれらの因子の増加を認めた。血管内皮細胞・血管平滑筋細胞・周囲の線維芽細胞の各培養系に炎症性サイトカインやadipocytokineを添加し、5因子及び動脈硬化に関連するNF-κβ、AP-1 activator protein1, CEBP, CXCL, IL-6等の増加を確認する。更にはこの因子の正常マウスへの投与による動脈硬化の再現、5因子の阻害剤の投与による炎症マウスの動脈硬化の抑制を確認する。更には予防薬としての低分子化合物の開発と特許取得を目指す。 3) 注意欠如/多動症(ADHD)様症状の解明と治療; サイトカイン中和抗体の投与や遺伝子改変マウスとの交配、動脈硬化阻害剤の投与で、行動解析にて臨床効果の改善、脳血流の改善、FDG-PETでの臨床効果の改善を見る。またシナプスの観察と電気生理学的研究ではAAVウイルスを用いて観察部位の神経細胞にGFPを発現させ、二光子励起顕微鏡を用いて神経シナプスの形態的な変化や分布のパターン・数等の差異を解析する。また電気生理学的解析により興奮性シナプスと抑制性シナプスを共に解析するなど、シナプス機能の異常について詳細な評価を行う。
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