研究課題/領域番号 |
22K08380
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神戸 直智 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50335254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 肉芽腫 / 自己炎症 / ブラウ症候群 / 翻訳後修飾 / ユビキチン化 / NOD2 |
研究開始時の研究の概要 |
肉芽腫形成のメカニズムには不明な点が多く,特異的治療法も確立していない。我々はこれまで取り組んできたブラウ症候群に関する研究を通じて独自に確立した系を用いて,NOD2活性化における翻訳後修飾に注目するに至り,その関与と調整因子の同定を目指す研究を計画した。本研究が自然免疫の解明,肉芽腫性疾患の病態解析と新たな治療アプローチにつながると確信している。
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研究実績の概要 |
感染症のみならず,変性した自己や代謝産物に対しても形成される免疫反応である肉芽腫のメカニズムには不明点が多い。我々は,細胞内パターン認識受容体であるNOD2遺伝子に変異を有することで自己炎症的機序により,皮膚と関節,眼に肉芽腫をきたすブラウ症候群の解析に従事してきた経験から,このブラウ症候群をモデル疾患として捉えた肉芽腫のメカニズム解明に取り組んでいる。リン酸化以外の翻訳後修飾として近年蛋白の精度管理を超えて注目されるユビキチン化に着目した本研究においては,まずブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系を用いて,ここにHA標識をしたユビキチンを同時に遺伝子導入することで,変異NOD2によって誘導されるユビキチン鎖の同定を試みた。この際,NLR分子の活性化にはK63が関わると推定されることから,HA標識をしたWTユビキチン,K63のみを残し他の残基をアルギニンに置換したユビキチン(Ub-K63),コントロールとしてUb-K48など他のLys残基を1つずつ残したものを遺伝子導入系に導入し,抗HA抗体を用いてユビキチン鎖の形成の有無を確認したが,残念ながらNOD2の変異の有無,およびNOD2のリガンドであるMDPの有無によって形成されるユビキチン鎖に変化は見られなかった。さらに,NOD2の下流でシグナル伝達に関わることが同定されているRIPK2を標的蛋白として,RIPK2の関わるユビキチン形成についても検討したが,この際もNOD2変異の有無による差異は確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系を用いて,ここにHA標識をしたユビキチンを同時に遺伝子導入することで,変異NOD2によって誘導されるユビキチン鎖の同定を試みた。NF-κBの転写亢進能自体は,これまでも行ってきた実験系であることから,期待どおりの再現性が確認された。 この際,NLR分子の活性化にはK63が関わると推定されることから,HA標識をしたWTユビキチン,K63のみを残し他の残基をアルギニンに置換したユビキチン(Ub-K63),コントロールとしてUb-K48など他のLys残基を1つずつ残したものを遺伝子導入系に導入し,抗HA抗体を用いてユビキチン鎖の形成の有無を確認した。しかし当初の作業仮説に反して,NOD2の変異の有無,およびNOD2のリガンドであるMDPの有無によって形成されるユビキチン鎖に変化は見られなかった。 このため,NOD2の下流でシグナル伝達に関わることが同定されているRIPK2を標的蛋白として,RIPK2の関わるユビキチン形成についても検討した。しかしながら,この際もNOD2変異の有無による差異は確認できていない。
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今後の研究の推進方策 |
我々はブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系に加えて,これまでの研究からブラウ症候群患者からiPS細胞を樹立し,さらに単球へと分化誘導することに成功している。この患者由来iPS細胞を用いた研究から,IFNγ添加によりNOD2の発現が増強し,この条件下で変異NOD2をもつ細胞(R334W)においてのみNF-κBの転写亢進や炎症生サイトカイン産生を示すことを確認している。このため,このiPS細胞から樹立した細胞を用いてユビキチン形成能を検討する予定である。
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