研究課題/領域番号 |
22K08382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山本 美佐 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70379957)
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研究分担者 |
竹内 啓晃 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (90346560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経線維腫 / 腫瘍増殖メカニズム / マスト細胞 / RASシグナル伝達経路 / スフェロイド / レックリングハウゼン病 / RAS活性 / シグナル伝達経路 |
研究開始時の研究の概要 |
神経線維腫症は、思春期以降に皮膚良性腫瘍が多発する難治性遺伝性疾患であり、腫瘍の外科的切除以外の効果的な治療法は存在しない。本腫瘍は組織学的には、遺伝子変異を持つシュワン細胞や線維芽細胞の他に、腫瘍内に炎症細胞、特にマスト細胞が多数存在する特徴を持つ。研究代表者は過去の実験結果より、腫瘍中のマスト細胞が炎症性サイトカインや化学伝達物質を過剰に放出することで、患者シュワン細胞や線維芽細胞が異常増殖し、腫瘍を形成すると考えている。そこで本研究では、腫瘍中のマスト細胞が放出する特殊な炎症性蛋白の産生を抑制するシグナル伝達経路を特定することで、本腫瘍増殖を抑制させる新たな治療方法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
レックリングハウゼン病神経線維腫症(以下NF1)は遺伝性疾患かつ厚労省指定難病であり、本邦での発症は3500人に1人と患者数は多い。NF1腫瘍には皮膚、叢状等のタイプが存在するが、特に皮膚神経線維腫では、思春期以降、全身の皮下に神経線維腫が多発し、患者に著しいQOL低下を強いるが、外科的切除以外の効果的な治療法は現在でも確立されていない。病理組織学的にNF1皮膚神経線維腫では腫瘍内にマスト細胞が多数存在する特徴を有しており、腫瘍増殖の一因とされているが詳細は不明である。そこで本研究では本腫瘍中のマスト細胞の機能を解析することで、腫瘍増殖に関与するマスト細胞の機能を抑制する新たな治療方法の確立を目指している。 2022年度はin vitroにおけるNF1(疾患特異的)マスト細胞と健常人マスト細胞について、長期間の各種炎症性サイトカインのmRNA発現量を追跡した結果、NF1マスト細胞において有意に炎症性サイトカインの発現が高い結果を新たに得た。さらにこれらのマスト細胞とNF1腫瘍細胞とを共培養したスフェロイドモデルを作製し、RASシグナル伝達経路阻害剤のうち、MAPK/ERKシグナル伝達経路のERKと、PI3K/AKTシグナル伝達経路のmTORを阻害する因子を添加する実験を実施した。その結果、腫瘍細胞の遊走能抑制、腫瘍組織内の線維化抑制を確認し、さらにスフェロイド径そのものも縮小する結果を得た。 この事は、これらのシグナル伝達経路阻害剤がNF1腫瘍増殖抑制効果を持つことが示唆されたため、すでに2023年2月に日本レックリングハウゼン病学会において報告し、現在一部のデータを国際誌に投稿する準備を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度実験計画では、NF1(疾患特異的)マスト細胞から多量に産生される3つの候補蛋白についてこれらを制御するシグナル伝達経路のうち、発現を特に効率的に阻害する薬剤を同定することを目標としていた。研究実績の概要で説明したように、NF1腫瘍細胞とNF1マスト細胞もしくは健常人マスト細胞との共培養スフェロイド形成実験において、免疫染色、ウェスタンブロッティング、RT-qPCR法を実施した結果、RASシグナル伝達経路のうち、MAPK/ERKシグナル伝達経路のERKと、PI3K/AKTシグナル伝達経路のmTORを阻害する実験において腫瘍増殖抑制や腫瘍径の縮小が認められる結果を得ることに成功した。2023年度はこれらの阻害剤が阻害するシグナル伝達経路のポイントを、より詳細に解析をする計画を立てている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降の実験計画も当初の予定通り進行できる見込みである。具体的には、RASシグナル伝達経路のうち、MAPK/ERKシグナル伝達経路のERKと、PI3K/AKTシグナル伝達経路のmTORを阻害するポイントに焦点を当て、これらのシグナル伝達経路の上流および下流のシグナル伝達経路への影響を詳細に観察する。実験手技は2022年度と同様に、形成組織の免疫染色、ウェスタンブロッティング、RT-qPCR法に加えて、レポーターアッセイや免疫沈降法も取り入れる予定である。さらに、2024年度実験計画ではNF1腫瘍増殖や患部の強い掻痒感や疼痛の原因になる炎症性サイトカインや化学伝達物質産生の抑制をも観察する予定であったので、実験が順調に進むようであれば、これらの実験も実施し、データ解析と総括後、国内外への論文投稿を実施する。
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