研究課題/領域番号 |
22K08384
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
寺林 健 大分大学, 医学部, 准教授 (40452429)
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研究分担者 |
橋本 悟 大分大学, 理工学部, 客員研究員 (60352150)
花田 克浩 大分大学, 医学部, 助教 (90581009)
石崎 敏理 大分大学, 医学部, 教授 (70293876)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 慢性炎症性皮膚疾患 / 皮膚恒常性 / アクチン細胞骨格 / ROCK / 細胞接着 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目標はアトピー性皮膚炎に対する新規治療薬開発基盤構築にある。本研究課題においてはケラチノサイト恒常性維持機構を新規創薬基盤構築の候補として設定し、上述の学術的問いを検証するため、次のの3点を明らかにすることを目的とする。 ①in vitro 培養系を用いたROCKによる接着依存シグナルの制御機構の解明 ②in vivoにおけるROCK依存的接着依存シグナルの構成因子の同定 ③in vivoにおけるROCK依存的接着依存シグナルが標的とする転写因子の同定
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研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎の発症・増悪化の要因の1つとなっているのが、皮膚組織恒常性の喪失(バリア機能異常)である。角化細胞が形成するバリアは病原生物やアレルゲン、紫外線や機械的刺激などといった多くの外的刺激から生体を防御し、皮膚組織の恒常性を維持している。このことから、ケラチノサイトの細胞恒常性維持に関与するシグナル伝達の解明は、その破綻が惹起するアトピー性皮膚炎の理解に大きく貢献するものである。これまでの先行研究において、申請者はセリン・スレオニンキナーゼROCKの喪失がマウスケラチノサイトの分化異常を誘導することを見出している。そこで本研究課題では、ROCKによるケラチノサイト分化制御機構の解明を通じて、アトピー性皮膚炎に対する新規治療薬の開発基盤構築を目的とする。 今年度はROCKノックアウトケラチノサイトにおけるリン酸化タンパク質プロファイリングを行っている。培養ROCKノックアウトケラチノサイトを用いて、リン酸化ペプチド質量解析を行った。ノックアウトケラチノサイトに対してそのリン酸化度が1.5倍以上を示すペプチドはコントロールケラチノサイトにおいて262種類同定することができた。このうち、リン酸化抗体が入手できる2種類のタンパク質に対してウェスタンブロッティングを行い、ノックアウトケラチノサイトもしくはノックアウトマウスにおいてリン酸化が有意に低下していることも確認している。リン酸に変動があると予測されるタンパク質には細胞構造の維持に関与するものだけでなく、細胞周期調節やmRNA転写に関与するものも含まれていた。この結果はROCKがケラチノサイトの恒常性維持に対して非常に重要な機能を果たしていること強く示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においてはROCKノックアウトケラチノサイトにおけるリン酸化タンパク質プロファイリングを行った。本来はノックアウトマウスから単離したケラチノサイトを直接解析する予定であったが、ノックアウトマウスは成長不全も示すため1個体あたりから単離できるケラチノサイトが解析必要数に足りない可能性があったため、培養ケラチノサイトを用いた解析に変更した。条件検討に少々時間を要したものの、培養ケラチノサイトを用いた解析では結果的に良好な候補を抽出することができた。 また、研究計画の1つである「ROCKによる接着依存シグナル制御機構の解明」ついても研究を進めている。ROCKの部分コンストラクトを作製しROCKによる細胞-基質間接着に必要なドメインの同定を試みたが、現時点では有力な候補を得られていない。リン酸化タンパク質プロファイリングの結果には細胞接着制御に関与するタンパク質も同定されている。当初の計画では細胞接着制御に必要なROCKの最小ドメインに結合するタンパク質の同定を予定していたが、次年度以降は方針を転換し、ROCKとこの蛋白質との相互作用を軸に解析を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実施した研究の結果から、ROCKはケラチノサイトにおいて多種多様な蛋白質のリン酸化状態を制御することが示された。これまでの研究成果からは、ケラチノサイトのおいてはROCKはキナーゼ活性依存的もしくは非依存的な機能を有しており、そのどちらもケラチノサイトの恒常性維持に重要な役割を果たしていることが示されている。リン酸化タンパク質プロファイリングでは、細胞周期制御因子や転写制御因子など、これまでROCKがそのキナーゼ活性非依存的に制御しているだろうと推測していたイベントに関わる因子が同定された。このことから、次年度以降はROCKノックアウトケラチノサイトにおいて変動したリン酸化タンパク質はROCKのキナーゼ依存的であるのか、もくしは非依存的なものであるのかを精査していく必要があると考えている。これを検証するために、ROCK阻害薬処理におけるリン酸化タンパク質プロファイリングを行いたい。また、ROCKはROCK1とROCK2の2つのアイソフォームが存在する。両者のキナーゼドメインは非常に高い相同性示すことから基質選択性は低いと考えられているが、ROCKシグナルを標的とした創薬基盤構築の観点から、siRNAやノックアウトケラチノサイトを用いることでケラチノサイトにおける基質選択性についても解析を進めていきたいと考えている。
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