研究課題/領域番号 |
22K08393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
葉山 惟大 日本大学, 医学部, 准教授 (40647187)
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研究分担者 |
藤田 英樹 日本大学, 医学部, 教授 (10323544)
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 兼任講師 (80292605)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 慢性特発性蕁麻疹 / IgE / オマリズマブ / マスト細胞 / 蕁麻疹 / 自己抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性特発性蕁麻疹の病態生理において重要な役割を果たしている自己免疫性IgEの簡便な測定法を開発する。多数のタンパク質を用いた方法(タンパクマイクロアレイ)とヒトの皮膚を用いた方法(組織マイクロアレイ)を併用することにより安価で正確な方法を開発する。またこの方法を用いて測定した自己免疫性IgEと抗IgE抗体であるオマリズマブの有効性の相関を解析し、最適な慢性特発性蕁麻疹の治療アルゴリズムを作成する。
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研究実績の概要 |
令和4年度までの研究でfree IgE値、pre-total IgE値がオマリズマブ(Oma)投与後の効果を予測できる可能性があることを示した。一方で、投与前の抗IgE自己抗体(マスト細胞に結合しているIgEを架橋するIgG抗体)濃度が1823 ng/ml以上ではOma投与開始0から4週後の効果が低かった。今年度は抗IgE自己抗体がどのようにOmaの効果を阻害しているかを検討した。Omaで治療を行った 53 人の CSU 患者からの血清を分析した。 血清総 IgE、遊離 IgE、および抗 IgE自己抗体をELISAで測定した。 Omaの1~2回目投与時(UAS71-2)と3~4回目投与時(UAS73-4)の平均UAS7により、患者をResponderとnon-responderに分類した。 また、Omaは血中でIgEと複合体を形成し、IgEがマスト細胞に結合することを阻害する。この効果に対して抗IgE自己抗体が影響するかを調べるために、抗 IgE自己抗体を患者血清から抽出し、ヒト IgE とOmaの複合体形成への影響をBlue Native PAGE およびウェスタンブロッティングで調べた。UAS71-2 のnon-responderでは、抗 IgE自己抗体レベルが有意に高かったが、総 IgE レベルと遊離 IgE レベルは、responderとnon-responderで有意差はなかった(P = 0.175, P = 0.307)。UAS73-4では、それぞれresponderで有意に高値であった(P = 0.021, P = 0.026)。Omaと混合した骨髄腫ヒト IgE (mIgE) の BN-PAGE 電気泳動では、複合体を形成していることが示された。 抗 IgE自己抗体 を mIgE およびOmaと混合した場合、複合体形成は形成されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の研究結果からは抗 IgE自己抗体 は、慢性特発性蕁麻疹におけるオマリズマブによる治療に対する即効性を示す患者を予測するためのバイオマーカーとなり得ることが分かった。さらに抗 IgE自己抗体がオマリズマブとIgEの複合体形成を阻害することを示すことができた。これらのことは臨床的に有意義な発見であり、治療アルゴリズムの作成に重要なデータである。しかしながら自己免疫性IgEを測定するELISAの開発が滞っており、自己反応性IgEが多い患者の同定が出来なかった。これらの結果から予想外の大きな研究成果を得ることはできたものの、当初の予定には達していないため「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までの研究で抗IgE自己抗体がオマリズマブが早期に効果を発現するかどうかの指標となりえることを報告した。しかしながら抗IgE自己抗体は研究室レベルでしか測定できないため、日常診療で使用している検査項目にも注目して解析を行う。現在までに日本大学医学部附属板橋病院皮膚科においてCSU患者で、2017年4月以降にオマリズマブで加療した患者は145名いる。これらの患者のデータを用いて後方視野的な観察研究を行う。UAS7は欠損データが多いため、UCT(Urticaria Control Test)を効果の指標にする。オマリズマブ投与中にUCTが12点に達した患者をresponder群、オマリズマブ投与開始1か月以内(2回目投与時)にUCTが12点に達した患者をearly responder群、継続投与中に12点に達した群をlate responder群に分類する。すでに倫理委員会の承認を得ており、データの取得を開始している。また、2024年2月に抗Il-4/13受容体抗体が慢性特発性蕁麻疹に適用になった。既存のオマリズマブと同等の効果がみられるが、作用機序には不明な点が多い。患者の血清、臨床データを用いて観察研究を並行して行う。 蕁麻疹を引き起こす自己抗体のうち自己免疫性IgEの研究はELISAの確立が出来ていないため、進捗が遅い。令和6年度も引き続きELISAの開発を行っていく。
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