研究課題/領域番号 |
22K08420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮井 智浩 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (30812549)
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研究分担者 |
川崎 洋 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (70445344)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 代謝 / 内分泌 / 多臓器円環 / 代謝・内分泌 |
研究開始時の研究の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)の患者数は近年増加の一途を辿っている一方、 病気の兆候や症状が軽減または消失するような寛解の状態に導く治療法はいまだに確立していない。その原因として、発症に対してさまざまな内的・外的因子が関わるために患者間で莫大な多様性があること、さらにその多様な病態の層別化と各々のメカニズム解明に至っていないことが挙げられる。 本研究では、代表者がこれまでに見出している内分泌因子に着目し、AD患者のビッグデータとマウスモデルのデータを多面的に比較し、内分泌・代謝異常と皮膚炎症との間の連関メカニズムを解明する。さらに、この因子がアトピー性皮膚炎の新たな治療標的となりうるかを検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は、申請者が見出した代謝・内分泌系に関与する分子Xの発現異常を伴う特定のアトピー性皮膚炎モデルマウスおよびヒト患者について、その詳細な分子病態の解明および治療介入を視野に入れた検討を実施するものである。 2023年度においては当初計画に基づき、アトピー性皮膚炎モデルマウスにおける分子X欠損群と対照群の血清生化学検査を実施し、分子Xが関与する代謝変動の特定を試みた。その結果、分子Xの直接の標的分子には有意な差が認められなかった一方で、アミラーゼ分子が有意に上昇することを明らかにした。今後、週齢の違うマウスにおいても同様の検討を加え、その生理的意義について精査していく。 さらに、本研究の治療応用を考えた場合、皮膚炎発症後の分子X high患者に対する分子X中和抗体の投与が考えられる。計画当初においては、アトピー性皮膚炎モデルマウスに中和抗体を投与する系を検討していたが、タモキシフェン/ERT2-Creによる誘導的遺伝子欠損の方がより明確な差異が検出できると考えられた。そこで、中和抗体投与実験の実施に先立って、分子X-flox:ERT2-Creマウスを作出し、アトピー性皮膚炎モデルマウスを交配した。皮膚炎発症後にタモキシフェンを投与した場合における病態の改善について、炎症の程度を反映する耳介の肥厚により評価した。すると、個体差はあるものの、一定の改善傾向が認められた。今後、さらに個体数を増やして検討を重ねていく。 本課題はこれまでにあまり追究されてこなかったアトピー性皮膚炎に対する内分泌系の関与の一端を明らかにしようとするものであり、今後、発展が期待される層別化医療の実現にも貢献すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に基づき、生化学検査や新規マウスの作出および解析を進めている。加えて、企業との共同研究により、約1000検体のアトピー性皮膚炎患者の血漿サンプル中の分子X濃度を測定する計画も進行中であり、分子Xが病態に関与する患者層別化について大きな全身が見込める。また、抗分子X抗体のアトピー性皮膚炎に対する治療効果を検証する目的で、分子Xのヒト化マウスの作出にも着手している。以上の取り組みにより、本研究課題を基礎から臨床へと還元するための取り組みは十分に行なっていると考えている。一方で、分子Xの標的細胞については未だに未解明であるため、2024年度は生理学的メカニズムの解明にも力を入れて進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
メカニズム解析においては、免疫染色によって皮膚組織およびこれまでの研究で異常が想定される肝臓・腎臓の免疫染色を実施することによって、分子Xの標的細胞の同定を試みる。 また、組織局所である皮膚の炎症と全身性の代謝内分泌の連関が疑われ、それらを繋ぐ血中物質としてアミラーゼが候補に挙がってきた。今後、生理学的意義を精査していく予定である。 臨床応用を視野に入れた研究については、前項で述べたハイスループットの血漿中分子X濃度測定、およびヒト化マウスを用いた抗体製剤の有効性についての検討を加えていく。
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