研究課題/領域番号 |
22K08424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
猪爪 隆史 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (80334853)
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研究分担者 |
冨樫 庸介 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80758326)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 粘膜型メラノーマ / 末端黒子型メラノーマ / 抗PD-1抗体 / 腫瘍特異的T細胞 / バイオマーカー / 免疫チェックポイント阻害薬 / メラノーマ / TIL / 免疫チェックポイント / single cell RNA sequence |
研究開始時の研究の概要 |
抗PD-1抗体は3-4割のメラノーマ患者に奏効するが、免疫関連有害事象も発生する。したがってがんに反応するT細胞だけを活性化する方法の開発が重要である。本研究ではメラノーマ組織中のがんに反応するT細胞を同定してその性質と機能を細胞1個のレベルで分析し、それらに特徴的な分子を探索する。こうした分子群は鋭敏なバイオマーカーとなり、またがんに反応するT細胞のみを選択的に活性化する治療の標的となる。
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研究実績の概要 |
抗PD-1抗体は効果と免疫関連有害事象の個人差が大きいため、治療前に効果を予測するバイオマーカーの探索および効果と副作用の差別化が重要である。本研究の目的は、腫瘍特異的T細胞に選択的に発現される分子群を同定し、鋭敏なバイオマーカーや治療標的としての利用を目指すことである。本研究ではメラノーマ、特に免疫学的な解析が世界でもほとんど進んでいない粘膜型、末端黒子型、先天性母斑由来型も対象としつつ、代表者が持つメラノーマ組織中の腫瘍特異的T細胞クローンを同定する技術と、研究分担者が持つ単細胞RNA解析技術を融合して、腫瘍特異性が担保されたT細胞クローンの特徴を網羅的に解析した。令和4年、5年度の解析を通じて、腫瘍特異的T細胞に選択的に発現する特異的分子として既に報告されている複数の分子がピックアップできた。この結果は本研究のスクリーニングシステムが効果的にworkしていることを担保する。その上で複数の新規分子 (腫瘍特異的T細胞における役割が不明な分子)もピックアップできた。 新規候補分子の例として接着分子であるCD106、B細胞やfollicular helper T細胞を遊走させるケモカインCXCL13、細胞外ATPを分解してADP, AMP, アデノシンを生成するCD39などを同定している。これらは腫瘍内の腫瘍特異的T細胞を同定したりenrichしたりするためのマーカーとなりうる他、腫瘍特異的T細胞に選択的に発現される理由やその機能が明らかとなれば、腫瘍特異的T細胞のみを選択的に制御する(副作用の少ない治療)の開発に結びつく可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の解析を完遂するためのサンプルセットを作成するためには、より多くのメラノーマ患者からサンプリングを行いつつ、細胞株や腫瘍浸潤T細胞株の樹立に努める必要がある。今年度までに、粘膜型メラノーマ5例、末端黒子型メラノーマ8例、先天性母斑由来1例(合計14例)について、切除された新鮮腫瘍よりtumor digestを作成、保存した。そのうち6例において、培養がん細胞(オルガノイド、primary cultureを含む)と浸潤T細胞株のペアを樹立した。そして全ペアにおいて、共培養により自己がん細胞に対する浸潤T細胞の存在を確認できた。うち3例については、腫瘍特異的T細胞クローンを多数樹立し、それぞれのT cell receptor (TCR) 遺伝子配列まで同定できた。そしてそれらのtumor digestからCD3+T細胞を抽出して単細胞 RNA/ TCR解析し、クラスタリングを行った。その結果、樹立した腫瘍特異的T細胞クローンが集積するクラスターの存在を確認できた。このクラスターには既報通り、PD-1, LAG3などの疲弊マーカーと呼ばれる分子が高発現されていた。さらにCD39やCD103, その他CD106やCXCL13等の腫瘍特異的T細胞では機能が十分に判明していない分子も同定できた。現在これらの分子の腫瘍特異的T細胞における機能をin vitroの実験系で検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
新規症例を増やすのが課題の一つである。検体採取と処理はコンスタントに実施できているが、単細胞 RNA/ TCR解析に進むべき症例(培養腫瘍細胞と腫瘍特異的T細胞クローンがセットで樹立できた症例)の増加ペースは緩やかである。そのため、さらに多くの腫瘍検体を生検してより多くのセットの樹立を試みる。 ピックアップされた各候補分子についての、 腫瘍特異的T細胞における機能の解析や、腫瘍特異的T細胞をソーティングするための表面マーカーとしての有用性の検証、免疫チェックポイント阻害剤の効果との関連を検証する免疫染色、などは進行中である。これらのin vitro実験システムは代表者が多くの実績を重ねてきたものであり、今回の候補分子についても十分に実施可能である。当施設だけでは実施困難なバイオインフォマティクス解析については、分担者の岡山大学腫瘍微小環境学、冨樫庸介教授、共同研究者の京都大学大学院医学研究科免疫ゲノム医学講座、谷口智憲講師と連携しながら推進する予定である。
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