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再生付属器組込ヒト3次元培養皮膚モデルを用いた皮膚疾患病態再現の試み

研究課題

研究課題/領域番号 22K08438
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分53050:皮膚科学関連
研究機関杏林大学

研究代表者

大山 学  杏林大学, 医学部, 教授 (10255424)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード皮膚付属器 / 立体培養 / 毛包 / 汗腺 / 組織再生 / 皮膚疾患 / ヒト培養皮膚 / 付属器 / 疾患モデル
研究開始時の研究の概要

皮膚は、毛包や汗腺といった「付属器」と呼ばれる構造体を含む組織である。アトピー性皮膚炎などでは皮膚の基本構造である表皮・真皮・皮下組織と付属器が相互に作用しあう。本研究ではヒト皮膚組織から得た培養細胞を用いて、付属器を模した構造を再現した立体的な皮膚を培養条件のもとで作成する。次いで 疾患の病態に特徴的なサイトカイン(炎症にかかわる因子)などを培養皮膚に作用させ皮膚疾患の病態を実験器具のなかで再現することを目指す。

研究実績の概要

本研究の目的は、少量のヒト皮膚検体から得られた細胞から毛包、汗腺など皮膚付属器の構造を再現したヒト3次元培養皮膚を作製し、疾患モデルに用いることである。その実現のため、ヒト皮膚組織由来の毛包、汗腺細胞を生物学的な特性を維持しながら培養する条件の確立と増殖させた細胞を用いた立体構造の再現を試みている。
今年度は、付属器由来細胞凝集塊の3次元培養皮膚へ留置だけでは構造が容易に失われるという昨年度の課題を解決するため、ケラチノサイト、毛乳頭細胞、汗腺細胞を混合し立体培養することで細胞の自律的な再構成能を利用してオルガノイド様構造を得る可能性につき検討した。また、毛乳頭細胞からなる細胞凝集体の解析で構成細胞の間で生物学的特性の維持のされ方が不均一であったことから、生物学的特性が維持された良質な毛乳頭細胞の分離技術の確立を試みた。
前述の混合立体培養系ではマトリゲル添加条件で立体構造を取らせた場合に、単なる細胞凝集塊ではなく特異な形態パターンであるダンベル型を呈し、汗腺、毛包上皮、毛乳頭それぞれのマーカーを示す細胞が異なる部位に局在する立体構造が形成された。また、毛包、汗腺の器官形成に重要な因子であるWNT、SHH、EDAシグナルの活性化因子を加えたところダンベル様形態、個々の細胞分画ごとの分布様式ともに明確となり付属器構造再生に有利に働くことを示唆する結果を得た。前年度に確立したWNT、FGFリガンドを用いた毛乳頭細胞活性化培養条件下では発現するが、通常の培養条件では発現しない細胞表面マーカーを複数同定し生物学的特性を維持した細胞を効率良くふるい分けるための技術を開発した。並行して、これまで集積した患者検体をもとに付属器が傷害される代表的な皮膚疾患である円形脱毛症の病態解析を試み、急速進行性の症例でみられる免疫応答の特徴を明らかにし報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究計画では皮膚付属器、特に毛包と汗腺の構造を含む3次元皮膚モデルを構築することを目的としている。今年度は昨年度の研究結果から立体構造体の作成法を工夫し、ヒト毛包、汗腺由来細胞を混合し立体培養することで付属器の原基ともとれる細胞凝集体を得ることができ、さらには、その内部では部位別に毛包・汗腺関連マーカーの発現を確認した。しかし、構造体の一部では双方の細胞がうまく分離せず混在する結果となった。また、再構築促進のため毛包、汗腺のそれぞれの発生で重要とされる発生シグナルの活性因子を立体培養条件に添加した。得られる凝集体の形態学的特徴は強調されたが、汗腺マーカーの発現強度は一部で低下していた。つまり毛包と汗腺の立体構造を同一の培養条件で行うことが困難であることが示唆された。初年度の研究結果もあわせ、本研究の目的である皮膚付属器構造をもつ立体培養皮膚を得るには、3次元培養皮膚の担体と毛包、汗腺各々の構造体を個々に準備し組みあわせる必要があることが示唆され、未完成な器官原基の自律的な組織再構築能を期待する研究計画立案時の立体構造作成に関する方法論を修正する必要があることが明らかとなった。
その一方で、立体構造体作成のための素材改良の一環として毛包由来の毛乳頭細胞に関して、生物学的特性の高い細胞の純度を増すことで、もとからの特性を維持した細胞表面に発現するバイオマーカー候補因子を見いだし、それを用いて効率的に立体構造体作成に必要な素材を準備する方法論を確立しつつある。
また、立体構造体の作成に並行して遂行する皮膚疾患の病態解明では、重症円形脱毛症の特定のサブセットにおいて重要なCD8陽性T細胞分画を同定した。同細胞が分泌するサイトカインプロファイルを再現したサイトカインカクテルを立体培養皮膚モデルに作用させることで、疾患における毛包側の応答を検証できる可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

毛包系に関しては、立体構造体作成のための素材の改良、方法論ともに進められている一方で汗腺系の培養技術、立体構造作成法のさらなる模索が必要であることがさらに明確となりつつある。これまでの研究結果からは、その原因のひとつとして毛包、汗腺ともに発生誘導にWNTシグナルが重要であることは共通しているが、BMPシグナルの活性化は毛包由来細胞の再構築能には大きく影響しないが、汗腺由来細胞のそれには抑制的に働く可能性があることを示唆している。つまり、細胞を混合した条件下で両付属器を同時に再構築させることは困難である可能性が高い。
そこで、今後の研究の推進方策として、予め構造体としての完成度を高めたヒト立体培養皮膚に毛包、汗腺細胞を個別にコラーゲンゲル内への射出などの手法により立体構造をとりつつ組み込む方法を試みる。細胞自律的な組織再構築力に大きく依存する方法ではなく、人工的に個々の組織構造を構築する方法の可能性を評価する。毛包構造の立体培養皮膚への組込には申請者らが報告した3次元立体毛包類似構造作成法などを応用し、汗腺立体構造の作製では、これまでの研究結果に基づきBMPシグナルの阻害因子の利用などを試みる予定である。
また、立体毛包類似構造作製においては、本研究計画で得た毛乳頭細胞分離法を利用し効率良く培養細胞から特性を維持した細胞を分離し立体構造体を得ることで、付属器再構築に必要な上皮―間葉系相互作用を惹起することを目指す。汗腺細胞の培養時にも収量を増やすためにFGFなどの添加を試み細胞増殖と生物学的特性維持の両立を目指す。
研究計画推進のため、作製した付属器由来細胞からなる構造体を組み込んだ立体培養皮膚の分子生物学的・免疫組織化学的解析と並行して、皮膚疾患を模した環境として立体培養皮膚にIFN-γ、IL-4/5、IL-15などを作用させその影響をみる予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Increase in CD8+ Effector Memory T Cells Re-Expressing CD45RA Correlates with Intractability of Severe Alopecia Areata2024

    • 著者名/発表者名
      Ryo Takahashi, Misaki Kinoshita-Ise, Yoshimi Yamazaki, Masahiro Fukuyama, Manabu Ohyama
    • 雑誌名

      Journal of Investigative Dermatology

      巻: S0022-202X(24)00025-3 号: 7 ページ: 1654-1657.e7

    • DOI

      10.1016/j.jid.2024.01.006

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] WNT・FGFシグナル活性化因子と3次元細胞凝集を用いたヒト毛乳頭細胞の特性維持法確立の試み2024

    • 著者名/発表者名
      大山 学、早川怜那、塚島明希、山﨑好美、君嶋桃子、福山雅大
    • 学会等名
      第23回日本再生医療学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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