研究課題
基盤研究(C)
痒疹は非常に頑固な痒みを慢性的に伴い患者の日常生活においてもまた精神的にも大きな負担となる。よくみられる疾患でありながら皮膚疾患の中で最も治療に難渋するものの一つとなっている。その病態は最近の研究で徐々に明らかなりつつあるとはいえ全容の解明には程遠い。痒疹には各種の病型があり、一部の痒疹は透析患者、糖尿病、肝疾患、アトピー性皮膚炎、内臓悪性腫瘍などに関連してみられることもある。本研究では、病型ごとに局所皮膚にみられる免疫反応、痒みを起こす神経や皮膚生理機能、そして消化管を含めた内臓免疫反応や機能と皮膚の痒みや痒疹との関連などを中心に病態の解明を試みる。
結節性痒疹の病変部では痒み過敏の一種であるpunctate hyperknesisのみられることを明らかにした。またリンパ球に加えてIL-4は好塩基球から、またIl-13は好酸球から産生されていることが観察された。なおpunctate hyperknesisは帯状疱疹後そう痒においてもみられることを示し、それには表皮内への神経伸長はむしろ減っていることが明らかになった。アトピー性皮膚炎においては、M2マクロファージの浸潤がみられIL-31を発現していた。また表皮にはTSLP、真皮にはperiostin発現と好塩基球浸潤がみられた。アトピーモデルマウスでの同様の所見が確認された。しかしTSLP, periostinを阻害してもIL-31陽性M2マクロファージの浸潤を抑制できず、それには好塩基球の浸潤抑制が必須であった。すなわちM2マクロファージの浸潤、IL-31産生には2型炎症下で、TSLP, periostin,そして好塩基球の存在が必要条件であることが判明した。
3: やや遅れている
これまでの研究で2型炎症の痒みにおける好塩基球とマクロファージの重要性、そしてその産生経路が徐々に明らかになってきた。また痒疹病変部でpunctate hyperknesisの状態にあることも判明した。一方で、好塩基球の浸潤機構、そして痒疹での発汗機能、各種の痒疹病型における免疫、神経病態の差異については今のところデータをえられていない。
今後は各種痒疹ごとにサイトカイン、神経、汗腺の動態、好塩基球の分布などについて研究に着手する予定にしている。また腸炎存在下での痒みの誘導についても解析を加えたい。
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