研究課題/領域番号 |
22K08445
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石川 浩三 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 客員研究員 (20624795)
|
研究分担者 |
佐藤 精一 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (60459724)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 核酸 / 悪性腫瘍 / アポトーシス / 3pRNA / RIG-I / p53 / ナノデリバリー |
研究開始時の研究の概要 |
近年、がんの治療は3大治療の他、免疫療法、理学療法、統合医療が実施されているが、がん細胞のアポトーシスおよび免疫記憶誘導(再発制御)が治療において重要となる。我々の先行研究で合成核酸(3pRNA)によるがん細胞選択的なアポトーシス機序には、RIG-Iから分子Xを介したCaspase3活性化が起き、正常とがん細胞の主な相違点であることを示した。過去に報告されたType1 IFN産生を介した機序は炎症が惹起される。本研究では、核酸によるがん細胞死誘導がサイトカインストームを回避できる治療となり得るか追及する。 本研究では白血病治療の治療応用を視野に、臨床研究機関と連携し開発研究を進めていく。
|
研究実績の概要 |
代表的抗ウイルス免疫分子であるRIG-I(Retinoic acid-inducible gene-1)は、自然免疫機構に則りType1 IFN産生にはたらくが、一方で、様々ながん細胞において、RIG-I自身がその合成リガンドである5’-triphosphate RNA(3pRNA)により、アポトーシスを誘導することがin vitro、in vivo系にて報告されている。それに関連し、RIG-IはTumor suppressorとして潜在的な抗腫瘍分子として近年注目されてきた。これまで、我々は先行研究にて、3pRNA 刺激によりRIG-IがI型IFN産生非依存性にp53活性化を起こし、多種の上皮細胞、非上皮細胞のがん細胞死を誘導し、同系列の3種類の正常細胞では細胞死発現が優位に乏しいという実験データを得た。そこで、RIG-Iが上皮系、非上皮系のがん細胞において正常細胞と相違する共通的特徴があると仮定して検証を進めたところ、がん細胞において、核内分子Xの細胞質内局在性が存在し、RIG-Iとの結合、さらにp53への移送を介して、Caspase3開裂および細胞死をきたすことを示唆する所見を得た(未発表)。そのため、正常細胞へ障害の少ない新規の抗腫瘍治療の開発に向けた見解を得られる可能性がある。次に、上記の3pRNAによる抗腫瘍作用がINF産生や獲得免疫系を介さない可能性を示すため行った担癌ヌードマウス(A549移植)を用いたin vivo実験においては、CD8中和抗体投与下で3pRNAが腫瘍退縮を示した。 今回、上記の系統と異なる血液系腫瘍細胞(独立円形細胞)における核酸誘導性細胞死を検証するため、2022年度、2023年度に細胞培養系、In vivo系、さらに臨床試験の計画作成を上記の先行実験にならい進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では慢性骨髄性白血病の急性転化に頻発する抗がん剤耐性に陥った場合に、核酸刺激薬によるRLR機序を介した細胞死誘導による殺腫瘍薬の開発として進めている。白血病細胞の抗がん剤耐性機序には、RUNX1-p53-CBFBフィードバックループ、P38α(p53抑制分子)遺伝子発現、遺伝子のmethylation、histoneのアセチル化が古くから知られている。一昨年度と昨年度、がん細胞株での3pRNAによる細胞死誘導効果を各種造血系悪性腫瘍細胞株に実施した。その結果、Hunt7(Tリンパ腫)、BJAB(バーキットリンパ腫B細胞)、MonoMac6(急性単球性白血病)、JurKat(T細胞型リンパ腫)、K562(慢性リンパ芽球性白血病)、U937(組織球性リンパ腫)細胞株で24時間後の早期アポトーシス発現はMonoMac6を除いてすべて25%以下であったため、細胞死誘導シグナルを阻害する分子生物学的要因さらに骨髄性白血病の起源種における相違の探索を現在進めており、当初予定していたモデル動物を用いたIn vivo実験に進めることが出来ていない。 先行研究では、上皮系細胞、非上皮系細胞において、RIG-Iシグナル以下のMAVSシグナル非介在性のp53分子、Caspase3開裂作用が上皮系、非上皮系がん細胞において、検証されたが、独立円形がん細胞においては、それらの活性化を阻害する機序が想定されるため、治療応用に適さない可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
髄性白血病には、各種起源(リンパ芽球、単芽球、骨髄球)が存在し、さらに急性白血病および慢性白血病の抗がん剤や分子標的薬への感受性、p53発現の相違、臨床的挙動の相違が存在する。そのため、本年度は、細胞内シグナル分子の相違やp53抑制性システムの相違を探索し、さらに、3pRNA刺激に対する応答性(RIG-Iおよび分子Xの細胞質内局在や輸送経路)を詳細に調査する。さらに、独立円形細胞特有のカタラーゼ産生性やアポトーシス抑制因子の発現性をRNAライブラリーを用いて探索し、上皮系、非上皮系がん細胞株において生じる核酸誘導細胞死機序を阻害するインターアクションについて検証を試みる。 一方で、先行研究で展開した上記2系統のがん細胞を用いた担癌モデルマウスにおいて、核酸細胞内導入効率即ち、腫瘍塊退縮効率の開発を進める。
|