研究課題
基盤研究(C)
全身性ALアミロイドーシスは、形質細胞が作るアミロイド蛋白が全身臓器に蓄積する、まれで治療が難しい病気です。しかし、病気を引き起こす形質細胞の割合が低いため、これまでは正常な細胞と区別することができず、遺伝子の異常を解析することが困難でした。本研究では、ALアミロイドーシスの骨髄中の形質細胞に着目し、単一形質細胞レベルで分離を行って、網羅的に遺伝子変異解析とRNA発現解析を行い、アミロイドーシスを引き起こす原因遺伝子を調べ、明らかにすることを目標としています。
同じく骨髄腫類縁疾患であり、骨髄中の腫瘍細胞割合が少ないPOEMS症候群を対象とした、当教室の先行研究のシングルセル解析の手法を用い、ALアミロイドーシス患者の骨髄形質細胞解析に向けて準備を進めている。POEMS症候群におけるシングルセル解析の報告については、昨年申請の時点では論文投稿中であったが、正式にacceptされた(JCI Insight. 2022 Oct 24;7(20):e151482.)。当該手法の先進性、および希少かつ難治性疾患であるPOEMS症候群の解析を行ったことが高く評価されたものであり、本研究のALアミロイドーシスの解析においても同様に重視される点であると考える。ALアミロイドーシス患者は希少疾患であるため、検体のリクルートを行えるかどうかが非常に重要である。これについては、県内関連病院の当該症例ピックアップを進め、データベースを作成している。遺伝子の網羅的な解析においては、倫理的な面からも十分な配慮が必要であり、一部改訂された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に準拠する形で改めて説明同意書の整備を行い、完了している。ALアミロイドーシスの患者検体は千葉大学医学部附属病院血液内科において、順調に検体数は収集されている。保存検体については、先行の共同研究より日本赤十字医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターから多数の検体の受け入れをすでに行っている。並行して、ALアミロイドーシス患者検体におけるシングルセル解析条件の検定を進めており、最適な解析条件について設定を行っている。
3: やや遅れている
新型コロナ流行のため、昨年度は入院患者の受け入れに制限をかけざるを得ず、当初の見込みより新規症例の集積が遅れていると考えられる。また、シングルセル解析の条件検定などに想定より時間を要しており、進行はやや遅れていると判断している。
今年度については、シングルセル解析を本格的に開始し、ALアミロイドーシス、多発性骨髄腫、MGUSの各症例から、単一形質細胞レベルで複数の遺伝子ライブラリーを作成し、RNAシークエンス解析を行う予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
JCI Insight
巻: 7 号: 20 ページ: 1-13
10.1172/jci.insight.151482