研究課題/領域番号 |
22K08451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10431850)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | クローン選択 / 炎症 / 白血病 / クローン性造血 / 単一細胞解析 / 骨髄異形成症候群 / クローン造血 |
研究開始時の研究の概要 |
白血病はドライバー変異を獲得したクローンの選択・拡大の繰り返しにより発症・進展し、その結果としてもたらされる腫瘍内多様性は治療抵抗性クローンを内包し、難治性の原因となる。本研究では、我々の開発した高感度に変異を同定可能な単一細胞RNAシーケンス技術により、これまでは技術的に困難であった、変異の有無、あるいは異なった変異の組み合わせによって細胞を区別して解析することをで、クローン構造の詳細とクローン毎の性質を明らかにし、白血病の発症・進展を理解することを目的とする。
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研究実績の概要 |
我々の開発した、プロテアーゼ処理によりゲノムDNAを効率良く利用することで高感度にドライバー変異を遺伝子発現と同時に解析可能なマルチオミクス単一細胞解析技術を用いて、血液疾患を有さない高齢者のクローン性造血について解析を行った。クローン性造血を有さない高齢者の造血幹前駆細胞の解析では、加齢に伴い炎症性サイトカインに対する反応が亢進しており、高齢者の骨髄は、より若年者の骨髄と比較して、炎症環境下にあることが明らかとなった。同一症例内でのドライバー変異を有する細胞と有しない細胞との比較では、変異細胞は細胞増殖に関わる遺伝子発現が亢進しており、クローン拡大に合致する所見であった。重要なことに、変異細胞では炎症サイトカインに対する反応性の低下が見られ、炎症環境下により適合した特性を有すると考えられた。これらの結果は変異細胞のクローン選択には炎症が重要であることを示唆するものであり、クローン性造血を有する症例の骨髄環境は有しない症例と比較して高炎症の環境にあると考え、クローン性造血陽性症例の変異を有さない野生型細胞を、クローン性造血陰性の野生型細胞と比較した。特にTET2変異を有する高齢者の野生型細胞の造血幹細胞が濃縮された分画で、変異を有さない同年齢帯の対象症例の細胞と比較し、インターフェロン反応と細胞増殖に関する遺伝子群の発現が亢進しており、骨髄環境に異常が生じていることが明らかとなった。現在詳細の解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の開発した、プロテアーゼ処理によりゲノムDNAを効率良く利用することで高感度にドライバー変異を遺伝子発現と同時に解析可能なマルチオミクス単一細胞解析技術を用いて、血液疾患を有さない高齢者のクローン性造血について解析を行った。クローン性造血を有さない高齢者の造血幹前駆細胞の解析では、加齢に伴い炎症性サイトカインに対する反応が亢進しており、高齢者の骨髄は、より若年者の骨髄と比較して、炎症環境下にあることが明らかとなった。同一症例内でのドライバー変異を有する細胞と有しない細胞との比較では、変異細胞は細胞増殖に関わる遺伝子発現が亢進しており、クローン拡大に合致する所見であった。重要なことに、変異細胞では炎症サイトカインに対する反応性の低下が見られ、炎症環境下により適合した特性を有すると考えられた。これらの結果は変異細胞のクローン選択には炎症が重要であることを示唆するものであり、クローン性造血を有する症例の骨髄環境は有しない症例と比較して高炎症の環境にあると考え、クローン性造血陽性症例の変異を有さない野生型細胞を、クローン性造血陰性の野生型細胞と比較した。特にTET2変異を有する高齢者の野生型細胞の造血幹細胞が濃縮された分画で、変異を有さない同年齢帯の対象症例の細胞と比較し、インターフェロン反応と細胞増殖に関する遺伝子群の発現が亢進しており、骨髄環境に異常が生じていることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
白血病の起源の状態と考えられるクローン性造血において、クローン進展に炎症状態が重要である可能性を示唆する所見を得た。TET2変異以外にもIDH1やSF3B1の変異を有する症例でもTET2とは大幅に異なるものの、クローン性造血陰性の対象症例と比較し、骨髄環境の異常を示唆する所見を得ている。しかしながら単一細胞解析では症例毎の解析細胞数の違いなどが解析結果に影響を及ぼすことも多く、現在ベイズ推定などで群間の違いなどを詳細に検証している。また、変異細胞が骨髄環境を変化させるとして、変異細胞の存在自身が原因として骨髄環境を変化させるかについての動物実験や、実際にどのようなサイトカインや免疫細胞を介して変化させるのか等の検証も行っている。さらに、骨髄異形成症候群からの急性白血病への進展例についても、骨髄環境の変化が関与していることを示唆するデータが得られたが、現在解析での詳細な検証を行っている。
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