研究課題/領域番号 |
22K08454
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮城 聡 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (20400997)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 造血幹細胞 / クロマチンタンパク質 / 白血病 / ユビキチン化 / リン酸化 / クロマチン / エピジェネティクス / 遺伝子発現制御 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、白血病サンプルのDNA解析が進み、多くの遺伝子変異が同定されている。しかし、この変異を持つ遺伝子の血液細胞における役割と、その変異に伴う機能の異常がどのように白血病の発症を引き起こすかは、多くに場合、明らかにされていない。このような遺伝子の一つとしてPHF6が知られている。これまでの研究から、私達は、PHF6の欠損が、血液細胞の基となる造血幹細胞の増殖を亢進させることを報告した。しかし、PHF6の機能がどのように制御されるのかは、明らかになっていない。この研究では、我々が独自に同定したPHF6結合因子に着目し、これら因子によるPHF6の機能制御に関する研究を行う。
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研究実績の概要 |
これまでの研究から、PHD finger protein 6 (PHF6) 遺伝子がストレス造血時の造血幹細胞(Hematopoietic stem cell; HSC)の機能抑制に働き、その欠損はTNFαに対する抵抗性を付与し、これによりPhf6欠損HSCが競合優位性を獲得することを報告した。また、生化学的な解析から、PHF6会合分子としてTGFβ-activated kinase1(TAK1)とPleckstrin Homology Domain Interacting Protein (PHIP)を同定した。PHIPはCullin-RING ligases 複合体(CRLc)の基質受容体であり、その複合体をPHIP-CRLcと記載する。CRLcはモノユビキチン化を介してクロマチン結合タンパク質のリクルートに関与することが報告されている。一方、TAK1はTNFαなどのサイトカインで活性化されるリン酸化酵素であり、いずれもPHF6の機能制御に関係する可能性が示唆される。本研究は、これら因子によるPHF6の翻訳後修飾を介した機能制御を明らかにすることを目的としている。 2022年度は、造血細胞特異的なPhip遺伝子欠損マウス(Phip cKO)の解析を行い、進行性の血小板減少、造血幹・前駆細胞の増幅とそれに伴う脾腫を観察した。2023年度は競合的移植実験を行い、Phip遺伝子欠損が造血幹・前駆細胞の機能亢進を引き起こすことを見出した。また、PHIP-CRLcの基質を同定するために、PHIPを欠損するK562細胞を用いた質量分析を行い、基質候補としてHistone H2B、Histone H1、MCMタンパク質群、核膜孔複合体のサブユニット群等を同定した。一方で、PHF6は定常状態でリン酸化されており、TNFα刺激により一過性に脱リン酸化されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は競合的骨髄移植実験により、Phip遺伝子欠損が造血幹・前駆細胞の機能亢進を引き起こすことを見出した。この表現型はPhf6cKOと酷似しており、PHIP-CRLcによるモノユビキチン化がPHF6のクロマチンへのリクルートに働く可能性を強く示唆している。この可能性を検証するため、PHIP欠損細胞の質量分析を行い、PHIP-CRLcによりユビキチン修飾を受けるタンパク質の同定を行った。残念ながら、PHF6のカバー率が低くユビキチン化修飾部位を同定することは出来なかったものの、PHIP欠損細胞でユビキチン化が減少するタンパク質群およびにTNFα依存性にユビキチン化を受けるタンパク質群を同定した。これら基質候補タンパク質群の同定は、Phip欠損マウスの表現系を規定する分子機構を明らかにするために重要なデータであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Phip cKOの表現型解析は進んでいるものの、その分子基盤は明らかに出来ていない。2024年度は、成体およびに老化Phip cKOよりHSCを分離しRNA sequenceを行う。この解析によりPHIP-CRLcにより発現制御を受ける遺伝子群を同定するとともに、Phf6cKO HSCとの遺伝子発現レベルでの異同を明らかにする。 PHIP-CRLcによるPHF6のモノユビキチン化の有無とTNFαの影響を検討するために、部分精製したPHF6タンパク質の質量分析を行う。これまでに同定した基質候補群に関しては、そのユビキチン化の有無とTNFα依存性を検証するとともに、ノックダウン解析等により造血における役割を検討する。 2023年度にPHF6は定常状態でリン酸化されており、TNFα刺激により一過性に脱リン酸化されることを見出した。このリン酸化部位を同定すると共に、PHF6の機能制御における役割を明らかにする。また、このリン酸化状態の変化にTAK1が関与するのか検討する。 以上の解析を通じて、PHF6の翻訳後修飾を介した機能制御を明らかにする。
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