研究課題/領域番号 |
22K08462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
安川 正貴 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (60127917)
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研究分担者 |
越智 俊元 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (10571086)
山田 武司 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (40333554)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | CAR-T細胞 / 免疫チェックポイント / がん免疫療法 / 1本鎖抗体 / Siglec-15 |
研究開始時の研究の概要 |
現在のがん免疫療法の主な課題は、新たな標的がん抗原の同定と腫瘍組織微小循環環境での負の抗腫瘍免疫制御の修復である。我々はこの2つの課題を単一のCAR-T細胞で同時に克服することに着目した。これまでのデータベースから、多くの腫瘍細胞と免疫を負に制御するMDSCsやTAMsとに、ともに高発現する新規免疫チェックポイント分子Siglec-15を標的とする多機能的CAR-T細胞療法を考案した。本研究によって、抗腫瘍細胞殺効果とがん微小循環環境の修復を包括的かつ同時に達成できる革新的がん免疫療法の開発に結び付ける計画である。
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研究実績の概要 |
キメラ抗原受容体T細胞療法 (CAR-T細胞療法) は、難治性B細胞急性リンパ性白血病・悪性リンパ腫や、多発性骨髄腫に対して顕著な治療成績を示し、難治性がんに対する新たな治療薬としての期待が高まっている。しかしながら、固形がんやその他の造血器腫瘍を標的としたCAR-T細胞療法は未だ開発段階と言わざるを得ない。免疫チェックポイント阻害剤は、さまざまな固形がん治療に有効であることが示されているが、その治療効果は患者体内の免疫細胞の状態に依存しうる。もし腫瘍細胞に発現する免疫チェックポイント分子を標的としたCAR-T細胞療法を開発できれば、CAR-T細胞療法と免疫チェックポイント阻害剤の両者の利点を併せ持つ新たな治療薬開発に繋がる可能性がある。 SIGLEC15はT細胞を負に制御する免疫チェックポイント分子の1つで、様々ながん細胞で発現がみられる一方、正常細胞における発現はmacrophageや骨髄由来抑制細胞 (MDSC) に限局している。そこで我々は、独自に開発した一本鎖抗体 (scFv) 作製技術 (Eumbody System) を用いて、高い治療効果が期待できる新たなSIGLEC15 CAR-T細胞の作製とその機能評価を行った。新たに樹立したSIGLEC15 CAR-T細胞は、SIGLEC15を発現する固形がんや血液がん細胞株などを認識して傷害し、サイトカインを産生した。さらに、従来型のCAR-T細胞と比較してよく増殖しうることが確認された。これらの結果から、難治性がんに対するCAR-T細胞療法・免疫療法の発展に向けた新たな可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人ヒト末梢血B細胞を回収し、5’RACE PCR法を用いて免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域遺伝子をクローニングした。SIGLEC15を特異的に認識するscFvを作製し、その可変領域遺伝子の片方を、ヒト免疫グロブリン可変領域に由来するライブラリー配列に置換することで、SIGLEC15 scFvライブラリーを作製した。Eumbody Systemを用いてSIGLEC15 CAR-T細胞ライブラリーを作製し、腫瘍細胞を用いて繰り返し刺激増幅することによって、機能性が高いと考えられるCAR-T細胞集団を濃縮し、新たなscFvを複数同定した。新たに樹立したSIGLEC15 CAR-T細胞は、SIGLEC15を発現する固形がん細胞株 (U87-MG、SK-OV-3) や血液がん細胞株などを認識して傷害し、サイトカインを産生した。さらに、SIGLEC15を強制発現させた標的細胞と共培養すると、従来型のCAR-T細胞と比較してよく増殖しうることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
SIGLEC15 CAR-T細胞ライブラリーを用いて、引き続き新たなscFvの作製と同定を行う。新たに作製したCAR-T細胞については、固形がん細胞株や血液がん細胞株と共培養して、サイトカイン産生能、メモリー形質、細胞傷害活性、分裂能などを多角的に評価する。その中で、高い機能性を発揮した1-2つのCAR-T細胞を用いてin vivo実験を行う。固形がん細胞株を皮下に移植した免疫不全マウス (NOGマウス) を用いて、SIGLEC15 CAR-T細胞を経静脈的に投与する。抗腫瘍効果と生存率を経時的に評価するとともに、腫瘍組織を採取して、腫瘍局所における腫瘍細胞とCAR-T細胞とを時間的空間的に解析する。 また、ヒトSIGLEC15はマウスSIGLEC15アミノ酸配列と相同性が高いことが知られている。そこで、新たに作製したCAR-T細胞の中から、マウスSIGLEC15を発現する標的細胞を認識するCAR-T細胞を同定する。つぎに、同一のscFvをもつCAR遺伝子をマウスT細胞に導入してCAR-T細胞を作製し、in vitro機能性を評価するとともに、マウス腫瘍細胞を免疫不全のない正常マウス皮下に移植して、マウスCAR-T細胞で治療するin vivo実験を行う。このようにして単一種の中で腫瘍微小環境を形成させることで、SIGLEC15 CAR-T細胞療法による直接的な抗腫瘍効果や、SIGLEC15シグナル・腫瘍内MDSCを抑制することによる腫瘍浸潤リンパ球の活性化と間接的な抗腫瘍効果を一貫して検討する。また、macrophageを抑制することによってサイトカイン放出症候群 (CRS) のリスク回避に繋がるかどうかも併せて検討を行う。
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