研究課題/領域番号 |
22K08468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
秋山 正志 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30298179)
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研究分担者 |
樋口 由佳 (江浦由佳) 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (30443477)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Siglec / 好中球 / 血小板 |
研究開始時の研究の概要 |
Siglecは白血球膜上に発現するシアル酸結合免疫受容体で、エンドサイトーシス受容体としても機能する。我々はメタロプロテアーゼADAMTS13が、基質であるフォンビルブランド因子(VWF)と同様に、Siglec-5およびSiglec-14に結合しエンドサイトーシスされることを見出した。 生体内で活性化した血小板は好中球に結合した姿で観察される。我々は好中球表面のSiglec-5/14が血小板膜上のリガンドに結合することで両者の血栓形成機能が調節されると考えた。そこで、血小板膜上のリガンドを同定し、リガンドが好中球の血栓形成促進機能(NETs形成機能)に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
血中において高分子量のマルチマーとして存在するvon Willebrand factor (VWF)は血管損傷部位に露出したコラーゲンと血小板の双方に結合し血小板血栓形成を促進する一方、メタロプロテアーゼのADAMTS13はVWFを特異的に切断することで過剰な血栓形成を抑制している。我々は白血球の細胞膜上のシアル酸を認識する免疫受容体として同定されたSiglec-5およびSiglec-14が、VWFのみならずADAMTS13を認識しエンドサイトーシスすることを明らかにし、当該年度において論文として報告した。Siglec-5/14は好中球と単球に高発現しているが、活性化した血小板はこれら2種の白血球に結合することが知られている。我々は好中球・単球と血小板の結合時に、血小板上のSiglec-5/14リガンドが好中球のSiglec-5/14に結合することで、好中球の免疫機能に影響するのではないかと考え、リガンドの同定を目指した実験を当該年度から開始した。初めに、Siglec-14を発現させたTHP-1細胞のリガンドスクリーニングで同定されたシスリガンドをはじめとした様々な手法で同定された複数のSiglecリガンドの既存データを解析し、血小板膜上で発現しているtoll-like receptor 2 (TLR2)をリガンド候補として選択した。初めにHEK293細胞にTLR2を発現ベクターのトランスフェクションによって発現させて、Fc融合可溶性Siglec-5およびSiglec-14タンパク質への結合を免疫染色によって調べたが、結合を観察することはできなかった。そこで現在さらに探索範囲を広げて、TLR4およびPSGL-1などのリガンドへの結合を同じ手法で調べたが結合は確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに既知のSiglec-5およびSiglec-14のシスリガンドとして同定されているTLR2、TLR4、PSGL-1発現HEK293細胞へのFc融合可溶性Siglec-5タンパク質への結合を調べたが可溶性Siglec-5の候補リガンドを発現するHEK293細胞への結合を観察できなかった。Siglecはもともとシアル酸受容体として同定され、多くの場合糖鎖末端のシアル酸を介してリガンドに結合すると考えられているが、結合親和性はかなり低いため一般的な固定法を用いた免疫染色による観察では結合を検出できなかった可能性がある。そのためあらかじめ架橋剤を用いてSiglecとリガンドの結合を架橋して安定化した後に、免疫染色を行うためのプロトコールを確立しようとしているが手間取っており、研究の進行はやや遅れている。また、Siglec-5もしくはSiglec-9を発現ベクターのトランスフェクションにより発現させた浮遊系の293細胞(FreeStyle 293)と可溶性Fc融合可溶性リガンド候補タンパク質との結合をフローサイトメトリーによって検出することも検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
血小板と好中球の結合はSiglec以外にも双方の膜表面に発現する受容体-リガンド相互作用を通じてお互いの生理機能を調節していると考えられる。好中球の細胞内タンパク質のおよそ4割を占めるとされるCa結合タンパク質S100 A8/A9は、好中球が活性化もしくはNetosisと呼ばれる細胞死を通じてneutrophil extracellular trap (NET)と呼ばれる網状構造を形成すると、細胞外に放出される。このような状況下では好中球に血小板が結合しており、放出されたS100 A8/A9がalarminとして血小板上のTLR4に結合して血小板にpyropotosisと呼ばれる細胞死を誘導し、その際に放出された酸化ミトコンドリアDNAによりさらに好中球のNETsが促進してS100A8/A9の放出を誘導するポジティブフィードバックループの存在が明らかにされた。我々は血小板膜上のSiglec-5/14リガンドの同定を進めるとともに、S100A8/A9による血小板の凝集を伴わない活性化の機構を調べる実験も同時に行う予定である。
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