研究課題
基盤研究(C)
従来、血小板は止血機能に特化した細胞であると考えられてきました。しかし最近になり血小板の止血以外の働き、例えば免疫反応に積極的にかかわり、感染症や免疫病態に関与する機能を持っている事が明らかになりつつあります。本研究は、これらの個々の血小板の機能の違いがどのように生じて、血小板の関連する病気においてどのように関与しているのかを研究するものです。
本研究の作業仮説(巨核球は免疫環境や血管内の環境の変化に伴い、血小板産生の場(骨髄と肺)を使い分け、それぞれの場所により産生される血小板の機能や性質は異なる)を検討する為に、下記の検討を行った。前年度までに、巨核球(CD41陽性細胞)とT細胞との関連を見出した。今年度はT細胞のうち特にCD8陽性T細胞との関連を検討した。慢性持続的な抗原刺激下で、T細胞はexhausted CD8陽性T細胞と称される細胞集団を形成する。この集団は慢性ウイルス感染の排除、抗腫瘍免疫(特にチェックポイント阻害剤投与後)、自己免疫に関与することが判明してきている。2023年度はこの細胞集団内のヒエラルキーや増殖状況と、CD41陽性細胞との関連を中心に検討した。その結果①この細胞集団の供給源となるsubsetは通常はリンパ組織に存在しており、末梢血液中にはほとんど存在しない。②しかし特定の病態下で、末梢血液中で一過性に増殖する。③その増殖・分化経路は複数ある(それを制御する因子は今後解析予定)。④この細胞集団は、ITPにおいて特定の治療中に特に変動する。これらより巨核球、ITP、(ITPの)特定の治療薬を、T細胞を中心として説明ができる可能性がある。⑤特定のT細胞集団が、巨核球や血小板との相互作用が低下している場合に、どのように変化するのかを観察した。以上の結果は、臨床的に予後因子やバイオマーカーとしての応用への可能性を認めている。以上を今後、学会発表および論文にて順次公表予定。
2: おおむね順調に進展している
CD41陽性細胞とT細胞の関連について知見が蓄積しつつある。特にヒト検体で特定の疾患や状況のバイオマーカー開発につなげる可能性を見出している。
次年度は、ヒト検体の解析数を増加させる。また保存検体を用いたsingle cell RNA sequence、および培養系の実験を含めた再現とメカニズム解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件)
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