研究課題/領域番号 |
22K08489
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
|
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (70077808)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 抗凝固薬 / DOAC / 抗腫瘍効果 / 組織因子 / 第Xa因子 / エドキサバン / PAR2 / アポトーシス / 経口抗凝固薬 / 癌転移 / PAR1 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、直接経口抗凝固薬(DOAC)は脳血栓塞栓症や深部静脈血栓症などの治療や予防に用いられている。 私はこれまでの科研費(基盤研究C)の助成の下、担癌マウスを用いた研究で、凝固Xa因子特異的なDOACのエドキサバン(Edoxaban:EDX) が癌細胞の増殖を抑制するとともに、癌細胞にアポトーシスを誘導して、抗腫瘍作用を示すことを示してきた。さらに、EDXはメラノーマ細胞の臓器転移を強く抑制することを見出した。そこで本研究では、DOACを用いた新しい癌治療法の開発に向けて、EDXを含むDOACによる癌細胞の浸潤・転移阻害機序を分子薬理的手法を用いて明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究は、脳血栓塞栓症や下肢深部静脈血栓症の予防薬として広く用いられている直接経口抗凝固薬(DOACs)には抗凝固作用だけでなく、抗腫瘍作用のあることを示し、その分子薬理学的機序を明らかにする目的で行っている。 これまでの科研費助成研究(16K08633及び19K08850)において、Xa因子特異的DOACの一つedoxaban(EDX)が、マウス下肢筋肉内に接種した非転移性大腸癌細胞Colon26の増殖を著しく抑制し、その分子機序はEDXがマウス体内の癌細胞及び癌周囲細胞のXa因子受容体PAR2の活性化を阻害して癌細胞の増殖系シグナル伝達分子の活性化を抑制するとともに、癌細胞のアポトーシスを促進することを報告してきた(Hiramoto K, Akita N, Nishioka J, Suzuki K. TH Open, 2023; e1-e13.)。この実績に基づき、本研究では転移性B16メラノーマ細胞の浸潤・転移に及ぼすDOACの影響について解析を行った。 初年度は、C57BL/6j雌性マウスに B16細胞を尾静脈から投与し、同日(1日目)から14日間毎日生理食塩水またはDOACを経口投与してB16細胞の生体臓器への転移状態と血中と組織中の腫瘍転移関連因子を解析し、生理食塩水投与群、トロンビン阻害DOACのDabigatran (DABE)投与群、Xa因子阻害DOACのRivaroxaban (RVX)投与群、及びEDX投与群について比較した。その結果、生理食塩水投与群では全身の臓器組織にB16細胞の著しいい転移が認められたが、DOAC投与群の中ではEDX投与群における転移抑制作用が最も強く認められた。 現在、各臓器における転移関連因子と上皮間葉転換(EMT)関連因子の解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のように、我々はこれまでに、経口投与DOACがB16メラノーマ細胞の生体臓器への転移状態と血中・組織中の癌細胞転移関連因子を解析し、生理食塩水投与群では全身の臓器組織にB16細胞の著しい転移がみられたが、3種のDOAC投与群の中ではEDX投与群における転移抑制作用が最も強いことを確認した。 現在、血中と各臓器組織における転移関連因子(PAR2、IL-6、MMP-2、MMP-9、TGF-β、SMAD4など)及び上皮間葉転換関連因子(vimentin、fibronectin、Snailなど)を定量解析する準備を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記載のように、B16 メラノーマ細胞のマウスの各臓器(肺、空腸、結腸、肝臓、卵巣、腸間膜リンパ節、脳の線条体と海馬など)への転移が市販のDOACのうち特にEDX経口投与群で有意に抑制されることを認めた。今後、EDXによるB16細胞転移抑制機序を解析するため、対照とする生理食塩水投与群で転移細胞が最も多く観察された肺組織とEDX投与群の肺組織における転移関連因子(PAR2、IL-6、MMP-2、MMP-9、TGF-β、TGFβ-RI:ALK5、SMAD4など)及び上皮間葉転換(EMT)関連因子 (vimentin、fibronectin、Snailなど)の発現量をタンパク質レベル(Western blotting法、ELISA法など)で定量解析する予定である。 さらに、DOACの一つEDXの抗腫瘍作用がXa因子受容体のPAR2を介するものか、あるいはトロンビン受容体のPAR1の関与もあるかどうかについて、PAR2欠損マウス並びにPAR1欠損マウスを用いてB16メラノーマ細胞の浸潤転移の違いについても解析を行いたいと考えている。
|