研究課題/領域番号 |
22K08498
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西岡 亮 金沢大学, 附属病院, 助教 (30909651)
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研究分担者 |
伊藤 清亮 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (10467110)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | M蛋白 / 構造的特徴 / 軽鎖沈着症 / バイオインフォマティクス / 酵母内発現系 |
研究開始時の研究の概要 |
M蛋白血症はクローナルに増殖したリンパ形質細胞が産生する免疫グロブリンまたはその成分が血液・尿中に増加した状態である。その多くが病原性を示さない一方、一部の症例ではM蛋白量が少量にも関わらず臓器障害を生じる。この為、病原性の起源となるM蛋白の“質”が注目されている。軽鎖沈着症はM蛋白が生じる臓器沈着症の一つであり、モノクローナル軽鎖の沈着が臓器障害を生じる。 本研究は軽鎖沈着症の発症と重症化に関与するモノクローナル軽鎖の“質”の解明を目指し、バイオインフォマティクス解析と従来の実験系に於ける解析の双方を実施し、互いの解析結果をvalidationすることで“質”の解析方法の発展・普及を目指す。
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研究実績の概要 |
申請者らは自験例及び既存の報告情報より既に15例分のmonoclonal light chains(mLCs)の遺伝子情報を既に収集し(非病原性mLCs 5例、LCDD:Light chain deposition disease 7例、AL-A:AL amyloidosis 3例)、収集したmLCsの各々の生物科学的特性を解析する為、非病原性mLCs、LCDD-mLCs、AL-A-mLCsから各1症例を選択してin silicoにmLCの立体構造をホモロジー・モデリングで解析し、「mLCsの表面荷電がanionic chargeとなることがmLCs凝集の原因」との仮説に基づき表面電荷分布からmLCs凝集に関与する想定されるmotifを推定した。その上で当該motifをgermline配列に変換した改変配列をLCDD-mLCsで1例、AL-A-mLCsで1例作成し、当該motifの病原性への関与を検証する材料とした。 「mLCsの表面荷電がanionic chargeとなることがmLCs凝集の原因」という仮説の検証についてはmLCs遺伝子にgreen fluorescent protein(GFP)遺伝子を付加した合成遺伝子を作成して酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)に導入し、GFP付加mLCsを酵母内で発現させその発光態度が凝集しているか凝集していないかを以て検証することとした。 これまで既に非病原性mLCsであるLEN蛋白、LCDD-mLCsであるGLA蛋白、AL-A-mLCs蛋白であるREC蛋白の酵母内発現に成功し、それらmLCsとリンクしているGFPの発色態度がLENはhomogenous pattern、GLAとRECはmLCs凝集(=仮説上の病原性)を意味するspot patternを呈することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載した通り、既に研究計画のうち、mLCsの遺伝子情報の収集を完了し、またin vitroの検証であるGFP付加蛋白の酵母内発現系観測を実施し、3つのmLCsに於いては仮説通りの実験結果を確認できている。 GFP付加蛋白の酵母内発現系観測は当初のin vitroでの実験予定には含まれていないものである。この検証方法の変更の理由は、当初実施を予定していたFar-Western Blottingや生体分子間相互作用システム (BLItz System®)ではmLCs同士の相互作用は評価できるものの、生体内の様に周囲の環境因子、特に荷電条件の再現が困難と考えられた為である。そこで新たなin vitro検証の方法を模索する中で酵母内に蛍光蛋白質を付加した目的蛋白を発現し、その発色態度により目的蛋白質の相互作用を評価する手法がSickle cell diseaseで報告されている(Nature 2017. 10;548(7666):244-247)ことを知り、この手法を踏襲したものである。 当初の研究計画から異なる手法をとらざるを得なかった点に於いて若干の足踏みはあったものの、概要に記した通り、新たに採用した酵母内発現系観測はworkしており、今後、検証するmLCsの数を増加できる段階に達している点に於いておおむね順調な進展と考えている。 また、in vitroに於ける手法の変更はあったものの、研究目的そのものであるmLCsの病原性に関与する生物科学的特性の検証自体は、in vitroで現在試行中の検証に加えて、研究計画にも挙げたゲノム編集マウスによるin vivoでの検証により達せられるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、同様の検証を残り12症例分の非病原性mLCs、LCDD-mLCs、AL-A-mLCs、及び2症例分の改変(病原性消失)LCDD-mLCs、AL-A-mLCsでも実施し、仮説の再現性・妥当性の検証及び、バイオインフォマティクス解析で推定し得た責任motifの妥当性を検証する。
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