研究課題
基盤研究(C)
CD19に対するキメラ抗原受容体遺伝子を導入したT細胞療法 (CAR-T細胞療法)はこれまでの治療と比べて格段に良好な治療成績を示していますが、それでも効果が不十分な患者さんがおられます。そのため、我々は細胞の機能強化を目的としてこの研究を行います。すでにスクリーニングの結果、CUL5という遺伝子をノックアウトすることによりCAR-T細胞がCD19抗原陽性腫瘍細胞と出会ったあと、よく増えるようになることがわかっています。その効果のメカニズムを明らかにし、ヒトTリンパ球におけるCUL5の働きを解明することがこの研究の目的です。
E3 ユビキチンリガーゼであるCullin-5 (CUL5) を、我々独自のGenome wide CRISPR screeningから標的遺伝子として同定した。これまでCUL5のノックアウト (KO) の効果について、CD19CAR-T細胞で機能を検討してきた。CUL5-KO CD19CAR-Tにおいて、CUL5-KOによりインターロイキン-2およびT細胞レセプターの刺激の下流である、JAK-STAT pathwayのタンパクのリン酸化が遷延することを示した。これにより抗原刺激後の細胞増殖が遷延・増強し、T細胞レセプター刺激後のエフェクター細胞分画が増加する。この効果は免疫不全マウスにヒト由来腫瘍細胞を移植したモデルを用いた in vivo実験でも確認された。CUL5-KOを行う場合には、guide RNAとCas9タンパクを遺伝子導入するために一度電気穿孔を行う必要があるが、これにより細胞が一旦かなりの割合で死滅する。その後生き残った細胞で前述のような効果が見られるが、その効率は決してよくない。この課題に対して、short hairpin RNAを用いて電気穿孔を行わずにCUL5の働きを落とすシステム(shCUL5)を作成した。このシステムでは一度のレンチウイルスによる遺伝子導入でCARとshCUL5の両方を発現させることが可能であり、効率よく細胞を作成することできる。細胞作成効率の上昇とともに、CUL5-KOの効果も見られることを確認している。現在、shCUL5-CD19CARやshCUL5-CD37CAR, shCUL5-固形癌特異的CARなどを作成して同様の働きを示すことを確認している。
2: おおむね順調に進展している
Cullin-5 KOによるどのような変化が起こるかについては、現象についてもメカニズムについてもはっきりしてきた。現在、その応用に関する検討を行っており、概ね順調に進展している。
shCUL5-CD19CARやshCUL5-CD37CAR, shCUL5-固形癌特異的CARなどを作成して、in vivoの実験を進めている。同時にshCUL5-CD19CARと同様の働きを示すことをin vitroでも確認を進める。
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