研究課題/領域番号 |
22K08506
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土師 正二郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (70883982)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / 薬剤耐性細胞 / シングルセルRNAシークエンス解析 / 薬剤耐性 / single cell RNA-seq解析 / Single cell RNA-seq解析 |
研究開始時の研究の概要 |
多発性骨髄腫(MM)は多くで薬剤耐性を獲得し再発する。薬剤耐性克服のためには、耐性遺伝子の同定と耐性獲得機構の解明が喫緊の課題であるが、腫瘍(患者)間・腫瘍内不均一性が障壁となり耐性遺伝子の同定があまり進んでいない。 この腫瘍不均一性を克服するため、本研究では初発・寛解・再発時の検体に対し一患者毎の経時的なsingle cell RNA-seq解析を行い、寛解時にも少数残存する耐性細胞が持つ耐性遺伝子の同定を試みる。さらにデータベースによる解析とin vitro解析を組み合わせることで、この遺伝子がMMに広く発現し一般化可能であること、発現上昇が予後不良や薬剤耐性と相関することを確認する。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、同一MM患者の初発・寛解・再発時の骨髄検体に対し経時的なscRNA-seq解析を行い、寛解期にも残存する耐性細胞集団を同定していた。今年度は、寛解期に残存しその後増加する細胞集団のうち細胞の分化度を予測できるアルゴリズムを用いて最も未分化な細胞集団(Undifferentiated Residual Cells: URC)を同定した。次にURCで特異的に発現する遺伝子(発現変動遺伝子)に関して、公共データベースに登録されたMM患者データを各遺伝子の多寡により2群化し予後を比較したところ、予後不良と相関する発現変動遺伝子が多く含まれることを確認した。さらに公共データベースに登録されている患者MM細胞を対象とした全scRNA-seqデータを再解析し、URCがMM患者で広く存在する一般化可能な集団であることを確認した。またURCは治療反応性不良の患者で増加する事を見出し、URCは耐性細胞集団の候補になり得ると考えた。その後、解析した全MM患者のURCで共通する発現変動遺伝子を同定した。ついで転写因子結合エンリッチメント解析により、共通する発現変動遺伝子を上流で制御する転写因子を同定した。個々の細胞において、特定の遺伝子を欠損した場合の運命変遷をシミュレーションできるin silico perturbationの技術を用いて、同定した転写因子がURCの形質維持に重要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寛解期に残存しその後増加する細胞集団のうち細胞の分化度を予測できるアルゴリズムを用いて最も未分化な細胞集団を同定した。この集団特異的に発現する遺伝子のうち、多くが予後不良と相関することを見出した。さらに公共データベースに登録されている患者MM細胞を対象とした全scRNA-seqデータを再解析し、URCがMM患者で広く存在する一般化可能な集団であることを確認した。またURCは治療反応性不良の患者で増加する事を見出した。その後、解析した全MM患者のURCで共通する発現変動遺伝子を同定した。ついで転写因子結合エンリッチメント解析により、共通する発現変動遺伝子を上流で制御する転写因子を同定した。個々の細胞において、特定の遺伝子を欠損した場合の運命変遷をシミュレーションできるin silico perturbationの技術を用いて、同定した転写因子がURCの形質維持に重要であることを確認した。以上のように、耐性細胞集団とその維持に重要な転写因子候補を同定できており、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、URCにおける薬剤耐性能の検討、薬剤耐性機構の解明、治療標的の同定を進める。 具体的には患者由来MM細胞やMM細胞株において、同定した転写因子を過剰発現させbulk RNA-seqを行い、URCと同様の遺伝子発現を示すことを確認する。続いて転写因子を過剰発現させ誘導したURCを用いてin vitroでの細胞増殖・薬剤感受性アッセイを行い、耐性細胞としての妥当性を検証する。同時に転写因子のノックダウンにより治療標的としての有用性を検討する。
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